東電福島MOX差止裁判・MOX燃料疑惑

不当判決・実質勝利■03/31報告集会にて(04/26up)

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不当判決・実質勝利

 

1 東電はMOX燃料装荷断念

 3月29日、朝のNHKニュースは、東電が4月からの定期検査でのMOX燃料装荷を断念したと伝えました。翌30日には、経済産業省に定期検査時の取替え燃料に通常のウラン燃料を用いることを申請しています。同じ日の朝日新聞は、福島県知事が、少なくとも来年夏まではMOX燃料の装荷を認めないと明言したことを伝えています。福島第一原発3号機で予定されていたMOX燃料の装荷はこれで大幅に延期されることが確定しました。ここにMOX燃料の使用差止を求めてスタートした私たちの裁判闘争の目的は達せられました。この勝利をみなさんとともに喜びたいと思います。

 

2 原告の請求を棄却

 裁判において原告は不正操作を強く示唆する証拠を示し、東電にはデータを開示してこれを説明するよう再三求めました。裁判所は審理の過程において原告の要請に応え、立証を避ける東電に対し具体的な反論を求めました。原告の証人尋問の要請も聞き入れ、実現させました。さらに、2度にわたる求釈明を東電に突きつけ、立証を放棄する東電に対し裁判所なりの仕方でデータ開示を迫りました。そして東電はこうした要請に一切応じることなく結審を迎えたのです。原告はこうした経緯から、少なくとも、不正操作について疑義は払拭されないことを指摘する決定内容を期待しました。しかしこうした期待は見事に裏切られました。

 福島地裁の決定は3月23日、「本件MOX燃料ペレットの外径寸法に係る抜取検査に不正操作があったとは認めることができない」「本件MOX燃料が安全性に欠けるとする主張は理由がない」と原告の請求を棄却しました。

 

3 東電の言い分だけを認めた不当判決

 決定は東電の証拠のない言い分だけをことごとく採用し、原告の証拠に基づいた立証を無視する全くひどい内容となっています。決定は不当と言うしかないものです。

 例えば東電の立会検査について、小山さんは証人尋問において東電の主張を明確に否定し、東電はこれに一切反論できかかったにもかかわらず、東電の主張を無条件に採用しました。

 データに異常がみられるとの原告の立証については、「各ロット毎の抜取検査データを正規分布と比較することにより異常が判明するという前提自体が誤りである」と判断し、砥石の調節過程のせいで必ずしも正規分布が成り立つ必要がないという東電の主張を無条件に認めています。この点について原告は、砥石の調節が加われば正規分布からずれる可能性は認めつつも、分布の示す2種類の異常パターンが両方とも砥石調節のせいとするのは矛盾すると具体的に指摘し、東電は異常性を資料に基づいて具体的に説明すべきであると主張していましたが、これは完全に無視されました。一方で東電は、砥石の調節なるものが具体的にどのように行われているかの説明を、裁判の中では一切行っていないのです。

 

4 立証責任を原告に負わせている

 さらに裁判所は立証責任を全面的に原告側に負わせています。他の原発裁判と同様に、資料のほとんどを電力会社側が握り、限られた資料しか公開されない中で、住民側が立証できる範囲はきわめて限られており、状況証拠的なものにとどまらざるをえません。立証責任をすべて原告側に負わせる立場が貫徹されるなら、電力会社が情報非開示の態度をとればとるほど彼らに有利になってしまいます。断じて許せない決定文です。

 

5 東電の情報非開示を批判した1ページ

 その決定文中に異質な部分が挿入されています。東電の情報非開示の姿勢を徹底的に批判している部分です。決定文の第49頁、53ベージ中のわずか1ページ分です。裁判所はまず、「原子力の安全性の確保は多数の公衆の生命身体の安全性にかかわるものであるから、原子力発電所で使用される原子燃料の品質が問題とされたような場合には、可能な限り具体的なデータを明らかにして各方面における検証を可能とするように務めることが原子力分野で事業を実施する企業の責務というべきであ」る。とした後、ベルゴ社に対し、「本件抜取検査データを企業秘密に属するとしてその一般公開を拒絶しているのであるが、ペレット外径寸法の検査データが重大な製造ノウハウにかかわるものとはおよそ考えがたく、現に競争相手企業であるBNFL社がこれらのデータを一般公開していることに鑑みれば、ベルゴニュークリア社の上記のような姿勢は非難されてもやむを得ないものがある。」東電に対し「発注者の立場で、ベルゴニュークリア社に対し、重ねて特段の要請を行い、同社の頑なな対応に翻意を促し、本件抜取検査データを公開すべく努めた形跡が窺えないことは、原子力発電所という潜在的に危険な施設を設置稼動する立場にあるものとして、必ずしも充分な対応とはいい難い。」と批判しています。

 データの公開は裁判の大きな論点でした。東電はデータを公開できない理由に企業秘密を挙げていましたが、裁判所はこれを退けたのです。善人の仮面をかぶった反動的な裁判所ですら東電の姿勢を批判せざるを得ませんでした。

 

6 原告はデータ異常を指摘し1ミクロン刻みの抜取検査データの開示を要求

 これは決定文全体と矛盾した内容です。裁判所はこの1ページに続く部分で、決定全体との整合性を保とうとします。

 データ開示の焦点は、1ミクロン刻みの抜取検査データにありました。裁判で原告は、東電が公表した限られたデータにも、不正を示唆する異常があるとして、次のような立証を行ないました。関電が公開した抜取検査データは全数計測データの分布から大きくずれた異常な形をしており(グラフ1)、ここから不正が明らかになりました。このグラフを東電が公開したときに施したのと同じ加工をすると、特に異常は感じられないものとなります。1ミクロン刻みの元データを4ミクロン刻みに粗くするという加工です。東電は不正があってもわからないようにデータを加工して公表したのです。これは異常を隠すためのものでしょう。

 関電高浜原発用BNFL社MOX燃料の不正をデータ解析で摘発した小山さんは、東電の加工された4ミクロン刻みデータから1ミクロン刻みのデータを予測する作業を行ないました。すると、中に山が2つある異常なカーブをもつロットが見出されたのです(グラフ2)。原告はこれを正規分布と比較しながら指し示した上で、東電は1ミクロン刻みの元データを開示した上で異常の原因を説明すべきであり、それがない以上は不正があったと見なされると主張しました。正規分布と比較したのは、全数計測データが公開されないためでした。

 

7 裁判所は抜取検査データの開示の必要性を強引に否定

 これに対し裁判所は、1ページに続く部分でデータ開示の最大の焦点であったこの1ミクロン刻みの抜取検査データを開示することの必要性を以下の強引な理屈で否定します。

@ 決定内容に則し、正規分布との比較を誤りと断じる。

A 全数計測データについてはベルゴ社では保存されていない。

B 以上から、開示しても比較の相手が無いので開示をせまる必要が無い。

 そして、立証責任を原告に負わせて完成させます。東電が不正の無いことを立証しないならば不正があったとみなすべきだ、などと言うことはできい、と。

 

8 この部分の決定的な誤り

 しかし、この部分は明らかに誤っています。1ミクロン刻みの生データがあれば必ずしも正規分布や全数計測データとの比較を前提としなくても、異常は明らかになるのです。裁判においても原告は、必ずしも正規分布との比較を前提としなくても分布に2つの山があるのはそれ自体として異常であると指摘していましたが、無視されています。

 関電用BNFL社製MOXで不正が認められた3つのロットのうち2ロット(P824,P814)は他のロットのデータのコピー、残り1ロット(P789)はそのロット内のデータのコピーですが、いずれも正規分布や全数計測データとの比較なしに、抜取検査データだけから判定できるもので、英国原子力規制当局(NII)はこの手法でBNFL社製MOX燃料の分析を行なっているのです。東電の場合もブレンダーごとの上・中・下部それぞれの1ミクロン刻みの抜取検査データが明らかになれば、不正の判定が可能となります。

 

9 情報非開示を批判した1ページの意義

 この部分の誤りを正確に捉えたときに、情報非開示を徹底的に批判した1ページの意義が浮かび上がってきます。この情報非開示を批判した1ページは裁判所の意図を越え、1ミクロン刻みの抜取検査データの開示をせまる協力な武器となり、棄却の決定そのものを実質的にひっくり返してしまう可能性を秘めています。1ミクロン刻みの元データの開示を徹底して要求していきましょう。この1ページに従っても、1ミクロン刻みの元データが開示され、「各方面における検証」がされることによってはじめて、不正の有無の判断が行なわれることになるのです。福島民友紙三月二五日の社説も「問題なのは『信頼性を推認できる』はずの検査データそのものの公開を、東電側が法廷でも拒み通したことである。疑問は重く残る。」「東電は地裁の決定に際して「今後も(地元の)理解活動に全力を尽くす」とコメントした。注釈すればその「理解活動」の第一歩は、情報の公開でなければならない。」と論調しています。

 

10 MOX燃料の安全性は未確認

 MOX燃料を装荷した場合の危険性について原告は、燃焼が進んだMOX燃料の事故時の挙動についての実験はこれからで、安全性は未確認であることを、最新の原研の実験事実に基づいて立証しました。東電は10年前の知見にしがみつくだけで反論ができませんでした。裁判所は判断を避けました。この問題については今後、安全審査にかかわる原子力安全委員会にも見解を質していきましょう。さらに裁判の中で、「ギャップがなくても安全上は関係ない」との暴論を展開したように、東電が国の審査をないがしろにしている事実を明らかにしていきましょう。原研の資料、ライマンさんの論文といった裁判で提出した証拠資料と、裁判での蓄積が役に立つはずです。

 

11 福島県知事が装荷を拒否

 東電が装荷を断念した直接の理由は、福島県知事がこれを強く拒否したことです。一連の動きは2月8日の東電の発電所凍結方針の発表から始まりました。県知事は「核燃料サイクルを含めたエネルギー政策を根本的に見直すべきだ」「見直しには、当然、プルサーマル計画も含まれる。計画について県民の理解は進んでいない。」「原子力全体について見直す時期で、一年ぐらいは県民の皆様の意見を聞いていきたい。」と発言しました。東電と国は対応に追われますが、彼らは県の姿勢を「プルサーマルを人質にして地域振興策を分捕る条件闘争」としか見ることのできませんでした。県と県知事の姿勢は、翌日に東電が凍結から原発を外しても、取引材料と報じられた広野火力を凍結からはずす可能性を匂わせても、さらには国が職員を送り込み、国の威信でねじ伏せようとしてもでも変化がなく、逆に東電と国に対する不信を強めるだけでした。知事の発言は県議会でも続きました。県の姿勢は根が深く、「東電の凍結方針は引き金にすぎない」(県幹部)ものだったのです。

 

12 いつ装荷されてもおかしくなかった

 私たちが裁判を起こしたのは昨年8月9日ですが、この時、福島のMOX燃料はいつ装荷されてもおかしくない状態にありました。福島県はMOX燃料使用について一旦は事前了解をしています。昨年1月からの定期検査で装荷の予定でした。これに待ったがかかったのは、JCO事故と高浜MOX燃料スキャンダルにより、福島県知事が「喪に服す」よう求めたためでした。しかし「喪」は時間がたてばいつかは明けます。国と東電は半年もすれば明けると思ったのでしょうか、あるいは私たちの提訴を知ってでしょうか、8月から動きはじめます。8月1日に東電は国に調査報告を再提出、これを受けて国が輸入燃料体検査合格証の交付したのは、私たちの提訴の翌日の8月10日でした。これで装荷に至る法的な手続きは完了したことになります。あとは9月に再選される知事の了解を得るだけでした。この時点では、MOX燃料は遅くとも年内に装荷されようかという非常に差し迫った状況にありました。

 

13 裁判を注視する県の姿勢

 ところが、再選された知事の最初の記者会見で「裁判で、東電が丁寧に答弁するよう求める」と発言したのです。さらに10月に私たちが県庁を訪れると、県原子力安全対策課の職員は私たちを暖かく迎え「県は裁判の行方に重大な関心を持っている」とまで。「ベルゴ社はBNFL社とは違う」と東電の側に立ち、けんもほろろだった昨年春との対応の違いは歴然でした。このとき既に県の変化は始まっていたのかもしれません。県が裁判を注視する姿勢を見せたことから、裁判継続中は、装荷ができない事態になり、年内の装荷はなくなりました。11月に入ってからは、東電は2001年4月からの定期検査での装荷を示唆するようになります。

 

14 県民原告数に表れたプルサーマルに対する県民の不安

 この裁判は3次にわたって追加の提訴がされましたが、そのたびに原告数、特に福島県民の原告数は飛躍的に増えていきました。最終的に原告数は全国で1915名、うち福島県民が930名、原発が立地する双葉郡内が48名です。これは大きな組織に頼らずに、原告がこつこつを友人知人を説得しながら集めたことを考えると驚くべき数字で、推進一色の双葉郡の立地町で50名近い数字というのも驚異的です。県内では原告の拡大が一つの運動として取り組まれました。930名という原告の背後に、名前を出せない人が何千、何万といることを思うと県民の相当数の人がプルサーマルに不安を抱いていることになります。知事もそう受け取ったのでしょう。一昨日の報道によると知事はプルサーマルについて「県民の大半は反対している」と発言しています。

 

15 裁判が福島県知事の決断を促した

 私たちは、裁判で審尋が行なわれるたびに県に赴き、証拠や書面を渡しながら説明してきました。その回数はのべ20回にもおよびました。県は再三にわたり、県民の理解を進めることを東電と国に求めていました。ところが裁判での東電の態度は、情報について開示を行なわないどころか、開示の可能性を問い合わせることすらせず、不正のないことを立証することを放棄して逃げ回るばかりです。こうした態度を県は苦々しい思いで見ていたに違いありません。裁判での東電の態度、県民原告数に示される県民の反対意識、こうしたものが知事の決断を促したのです。

知事の真意は何か、知事はどこまでいくのか、私たちはその意義と限界を良く見極めながら、県の見直し作業にさまざまな形で付け入り、影響を及ぼしていきましょう。

 

16 裁判闘争で得た絆

 裁判を終え、私たちの手には「少なくとも1年の凍結」という成果と、情報非開示を批判する1ページが残りました。そればかりではありません。私たちは、裁判を通じて、さらに先に進むための多くの財産を得ることができました。

 裁判で得た最大の財産は、プルサーマルを止めようという意志で結ばれた多くの人との絆です。私たちの裁判闘争は、内容的にも人的にも高浜MOX闘争の成果を引き継いだものでした。このことは私たちの主張の骨格が小山さんによるデータ分析であったことに象徴されます。関電闘争との絆はコジェマ社製MOX燃料に対して協力してこれを止めるための基盤となるでしょう。

 原告1915名福島県内930名の原告の輪、福島と首都圏そして新潟、と言った形で反プルサーマル包囲網は広がっていきました。そして、今回はヨーロッパからグリーンピース・インターナショナルのショーン・バーニーさん、元ストックホルム平和研究所所長のフランク・バーナビーさんを招いての取り組みを通じてその輪が海を越えて広がっていくことを肌で感じることができました。この中で、わたしたちの闘争が、国際的な反プルサーマル、脱プルトニウムの闘争の最前線にいること、国際的にもその動きが注視され見知らぬ多くの仲間が応援していることを知り非常に心強く感じたのです。

 

17 プルサーマルが止まることによるドミノ倒し

 MOX装荷断念により、プルトニウム政策は完全に行き詰まります。すぐに再処理が問題になり、使用済み燃料=核のゴミ問題が噴出するでしょう。プルトニウム政策のドミノ倒しです。これが核のゴミ問題をつうじで通常の原発にも及ぶことは必死です。すでに福島県知事は、検討作業では「(使用済み核燃料を再利用しない)ワンススルーが可能かどうか考える」「(核燃料サイクル路線より)少なくとも県民の不安感が少ない。コストも安い」「(我々の論議で)ワンススルーが良いとの結論になれば、(プルサーマル凍結は)2年にも3年にもなる」などと発言しています。私たちは、再処理、もんじゅを止めさらに原発の増設中止、そして脱原発へと進んでいきたいと思います。この1年を、プルサーマル凍結を中止に追い込み、脱プルトニウム、脱再処理、脱原発へと着実に歩みを進める1年としましょう。

 

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