東電福島MOX差止裁判・MOX燃料疑惑

裁判資料:最終準備書面(03/03up)

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第一 本件MOX燃料のペレット外径寸法抜取検査における不正操作の有無
一 本件MOX燃料ペレット外形寸法の基準と不正操作の意味
二 不正操作の背景
三 不正操作を行いうる抜取検査の状況
四 不正操作を強く示唆する立証
五 本件MOX燃料の抜取検査データにみられる異常
六 不合格ゼロの異常
七 不正事実の不存在の立証を放棄する債務者
八 徹底した情報非開示
第二 不良ペレットを装荷した場合の危険性
一 安全審査は「事故」時の安全評価を要求
二 制御棒落下事故時のPCMI破損
三 PCMI破損についての新しい知見とRIA報告書
四 高燃焼度MOX燃料の安全評価の不存在
五 ペレット外径と安全性
六 重大事故の影響
第三 立証責任
一 本件の争点
二 女川判決の原則
三 本件の立証責任
結論


平成12年(ヨ)第33号外

準備書面(6)

最終準備書面

債権者   林 加奈子外
債務者 東京電力株式会社

2001年2月23日

右債権者代理人 弁護士 海渡 雄一
河合 弘之
斎藤 利幸

福島地方裁判所 第一民事部御中

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第一 本件MOX燃料のペレット外径寸法抜取検査における不正操作の有無

 「本件の中心的な争点」は、債務者も認めるように「本件MOX燃料ペレット抜取検査における不正操作の有無について」(債務者準備書面(一)P4)である。債権者は不正操作が行なわれたことを強く示唆する立証を行なった。

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一 本件MOX燃料ペレット外径寸法の基準と不正操作の意味

1 本件MOX燃料ペレット外径寸法の基準

 本件MOX燃料ペレット外径寸法について、債務者が本件MOX燃料の使用のために、通商産業大臣に提出した福島第一原発3号機の原子炉設置変更許可申請書に、円筒形をしたペレットの円の直径にあたる外径は、「約1.04p」(甲37ノ1P8(3)-26)との記載があり、現実の仕様範囲は「10.330〜10.370o」(甲5P23)である。債務者答弁書に「本件MOX燃料の外径仕様は一〇・三三〇〜一〇・三七〇ミリメートルの範囲にあることが基準とされていること…は認める」(P6)とあるように、債務者はこの仕様範囲を「基準」としている。

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2 ペレット外径寸法を厳格に規定する理由

 ペレットの外径を千分の一ミリメートル単位で規定する理由には、ペレットとそれを被う鞘である被覆管とのすき間(ギャップ)が関係している。原子炉設置変更許可申請書においては、「ペレット−被覆管間隙(ギャップ)」として「約0.2o」(甲37ノ1P8(3)-26)が記されている。また、運転中の燃料のふるまいについて、以下のように記述されている。

「ペレットは、初期段階においてわずかながら体積が減少する。これを焼きしまりと呼んでいる。更に燃焼が進むと核分裂による気体状及び固体状の核分裂生成物がペレット内に蓄積すること等により、ペレット体積が増大する。これを照射スエリングと呼んでいる。

 燃料寿命を通じて、熱膨張と照射スエリングにより被覆管に過大な歪みが生じないよう、ペレット内部空孔及びペレットと被覆管の間隔を決める。」(甲37ノ1)

 関西電力の高浜原発4号機の原子炉設置変更許可申請書では、このギャップを設ける理由をもう少し詳しく、「ペレットから放出される核分裂生成ガス、ペレットと被覆管との熱膨張差、燃焼に伴うペレット密度変化等により被覆管やシール溶接部に過大な応力が加わるのを防止するため、ペレットと被覆管に適当な間げきと燃料棒にプレナム部を設ける。」(甲131)と説明している。

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3 品質管理のための抜取検査

 本件MOX燃料の製造・検査の過程において、ペレット外径寸法の計測は、工程管理のための全数計測、品質管理のための抜取検査、債務者の立会による立会検査、の3回が行なわれていたが、このうち品質管理のための検査として行なわれ、ペレット外径寸法についての品質保証がされるのは、本件MOX燃料を製造したベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という)が行なった抜取検査である。本件で問題となるのはこの検査である。抜取検査は、本件MOX燃料の品質管理が問題となる契機であったBNFL社製MOX燃料の検査の不正事件(以下「BNFL事件」という)において、不正の事実が明らかになった検査である。

 債務者によると、ベルゴ社では、本件MOX燃料ペレット外径の抜取検査に際して、「(ブレンダー)あたり32個以上を抜き取るサンプル方式を採用」(甲5P6)していた。ペレットを「検査員がデジタル式のマイクロメーターに乗せ、足踏みスイッチを踏むことにより、測定値がコンピュータのデータベースに自動的に転送・記録され」た。「通常、ペレットの外径測定は、ペレット1個あたり上部、中央部、下部の3ヵ所について採取されるが、1F3及びKK3用それぞれの生産開始時の3ブレンダーについては、ペレットを90度回転させて、更に3ヵ所(合計6ヵ所)について採取した。」(甲5P20)「仕様をはずれるペレットが1つでもあった場合には、当該のブレンダーを不合格にする(0・1)判定を採用」(甲5P6)していた。

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4 不正操作の意味

 ここで「不正操作」とは、抜取検査において測定値を人為的に操作する行為を指す。本件MOX燃料については、ペレットが1つでも仕様はずれであればブレンダーごと不合格となる(0・1)判定が採用されており、さらに債務者が「本件MOX燃料については抜取検査時に不合格となったブレンダーがなかったことは認める」(答弁書P6)としていることから、検査の対象となったペレットのうち、本来ならば仕様外れであるはずのペレットが1個でも見つかった場合には、不正操作が有ったと見なされる。

 本件MOX燃料について、法的に規定されている安全審査上の種々の手続きは、本件MOX燃料ペレット外径寸法が「基準」の範囲にあることが前提となっている。抜取検査において不正操作があった場合には、本件MOX燃料に、多くの「基準」を外れるペレットが混入していることになる。

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二 不正操作の背景

 ベルゴ社とBNFL社にはMOX燃料製造と検査の困難性という、不正操作の背景となる共通の基盤があり、さらにベルゴ社には、不正を行わざるをえない事情があった。

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1 BNFL事件と本件MOX燃料の品質問題

 本件MOX燃料についての債務者による再調査は、「12/16 BNFL社で新たなデータの不正の発覚 通産省は東京電力に対し、念のため再度品質管理データの確認を指示」(乙8、7枚目)とあるように、BNFL事件を受けて通商産業省(現経済産業省、以下「通産省」という)が指示したものであり、債務者が、「特に関電用MOX燃料に係るBNFL社において行われたような品質管理記録(ペレット外径)の改ざんないし捏造の事実がないこと」(答弁書P17)を調査対象としていることからも明らかなように、そもそもの契機がBNFL事件にある。

 債権者が本件の申立に至ったのは、債務者の再調査によっては、本件MOX燃料においてもBNFL事件と同様の不正の疑義が払拭されず、それどころか限られた公開情報からでも、不正を疑うのに十分な根拠が見出され、にも関わらず債務者が本件MOX燃料の装荷を強行しようとしているためであった。債権者が不正操作の疑いを強めるのは、BNFL事件を単純に機械的にベルゴ社にあてはめてのことではない。

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2 MOX燃料の検査に共通する困難性

 MOX燃料の場合、ウラン燃料と比べても厳重な管理が求められ、それにより検査が難しくなる。このことは、通産省が電気事業審議会に設けた諮問機関であるBNFL社製MOX燃料データ問題検討委員会(以下「BNFL検討委員会」という)が昨年6月22日にまとめた報告の中で次のように指摘している。

「燃料検査の容易性の観点からはウラン燃料とMOX燃料との間には大きな差がある。MOX燃料に関しては、従業員の被曝・健康管理、臨界管理、計量管理及び核物質防護の点で、ウラン燃料とは比較にならない厳重な管理が求められる。このため、製造工程、検査工程全体がグローブボックス等によって周辺環境から隔離されるとともに、焼結・切削加工されたペレットについては速やかに品質管理検査を行い燃料棒に挿入した後、端栓の溶接が行われ、燃料棒の形で厳重な保管管理が行われる。ペレット製造工程での加工量が数十キログラム単位で行われるMOX燃料については、これがトン単位で行われるウラン燃料に比べ、ロット単位の母集団が小さくかつ多種になる結果、検査頻度そのものも高くなる。」(甲16P12)

 MOX燃料では、放射線がウラン燃料より多く発生する。また、プルトニウムが核分裂しやすい物質であることから、臨界に至らないように厳重に管理する必要がある。そこで、製造工程、検査工程全体を環境と隔離して、従業員の被曝を低減しなければならない。検査はグローブボックス内で行われ、少量ずつの検査が頻繁にあり、それぞれの検査には迅速さが要求される。検査員は非常に困難な作業を強いられる。こうした問題は、東京電力原子力企画部長(当時)も、原子力専門誌に書いた文章において指摘している(甲20P31)。

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3 MOX燃料の製造に共通する困難

 製造上の困難について言えば、関西電力11月最終報告書(甲25)に次のような記述がある。

「MOX燃料ペレットの外径研削は、臨界管理等の観点より、国内PWRのウラン燃料ペレットの湿式研削とは異なり、乾式で行われることから外径調整が難しいため、全数自動測定を行い、外径仕様外のペレットを除外し、この工程での歩留まりを向上させるために実施している。」(P3)

 プルトニウムを含むペレットの研削の場合は、プルトニウムが少量でも臨界をおこすことから、ウランだけの場合のように水をかけながら研削を行う湿式にすると、水による中性子減速のために東海村で起きたような臨界事故を起こすおそれがある。それゆえ、水をかけない乾式で行うが、その場合には、研削による熱を水で奪うことができずに、熱でペレットが膨張することによって、外径にばらつきが生じてしまう。との内容である。本件MOX燃料ペレットも研削は乾式である。

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4 ベルゴ社にも共通する製造・検査の困難性

 こうした製造・検査に際しての困難が、BNFL社での不正の基盤にあるが、ここで述べた困難は、MOX燃料の特性に由来するもので、普遍的に存在すると考えるべきである。決してBNFL社だけにある問題ではなく、ベルゴ社にも共通する。

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5 不正操作を行わざるをえない状況で製造された本件MOX燃料

 核物理学者で、ストックホルム国際研究所の所長を務めた経歴をもち、現在オックスフォード・リサーチ・グループに属し、MOXの問題について国際会議を開いた経験を持つフランク・バーナビー博士の昨年12月26日の証言及び甲111・113により、ベルゴ社におけるMOX燃料の製造と品質管理には問題があり、本件MOX燃料は、不正を行わざるをえない状況の下で製造されていたことが明らかにされた。

@ バーナビー証人は「ベルギー最高裁判所は、1996年に、この工場の許可を無効とする判決を下しました。特にこの判決は、ベルギーの法規が守られなかったと述べています。この許可が無効とされた1996年以降、ベルゴ社は、新たな許可を申請していません。それは、新しく申請をしても、また訴訟が起こされ敗訴すると感じているからだろうと思います。」(バーナビー証言13)「P1が建設されていれば、おそらくP0は閉鎖されていたと思います。P1は、P0で使われているのと同じ製造技術に基づいていますが、より近代的な自動化の進んだ施設になっていたと思います。P1がない場合に、ベルゴ社は古いP0でのMOX製造を続ける以外に道はありません。」(バーナビー証言14)と証言し、ベルゴ社が、より近代的な自動化の進んだ施設となる新工場(P1)の建設が、訴訟によりできなくなったために、設備の古いP0工場でMOX燃料の製造を続ける他なかった事情を明らかにした。本件MOX燃料ペレットはP0工場において製造されている。

A バーナビー証人は「ベルゴ社では、この年間35トンという数字を超えて、許可が出ている最大限の数字である年間40トンまで製造を増やしています。P0をこのレベルで能力いっぱいで操業するということは、様々な影響をもたらします。特に従業員に対して、生産目標を達成するようにという圧力が掛かり、データ捏造に至る可能性があります。この圧力は本来不合格品としてはねるべきペレットを、従業員らがそのまま通してしまうということにつながる可能性があります。」(バーナビー証言16)と証言した。本件MOX燃料が製造された時期は、ちょうどこの製造能力いっぱいで生産していた時期にあたる。

B バーナビー証人は「ベルゴ社は、当社のスクラップには不合格品となったペレットが含まれることを認めています。しかし、ベルゴ社のスクラップをリサイクルする能力は限られています。スクラップを最小限にするためには、不合格品としてはねられるペレットの数を厳しく最小限にすることが重要です。これが、不合格品とするペレットの数を最小限にしようという圧力を運転者に更に掛けることになります。これはBNFLにおける関西電力用のMOXの製造において起きたように、データ捏造の要因となる可能性があります。」(バーナビー証言26)「P0で製造されたMOX燃料では、マスターブレンドに含まれるスクラップの量は最大で18%となっています。一方メロックス社のMOX製造工場は近代的な工場であり、コジェマ社が操業するものですが、こちらの工場ではマスターブレンド中のスクラップの量は50%まで上げることができます。これはP0よりも相当多い量であります。したがってP0におけるデータ捏造に向ける圧力、メロックス工場よりも相当大きいと結論づけることができます。」(バーナビー証言26)と証言した。P0のリサイクルの量が最大で18%であることは、甲132のベルゴ社社員による文書から明らかである。

C 工場における放射線防護の性能について、バーナビー証人は「アメリシウム241から来るガンマ線の被曝をMOX工場の運転者が余り受けないように、防護措置を講じなくてはなりません。そのために、工場の一部の運転者を、ガンマ線、また中性子線から遮蔽する必要があります。」(バーナビー証言32)「メロックス社の場合には、アメリシウム241の量は3%に制限されています。ベルゴ社の方は1.7%です。これは、ベルゴ社では、遮蔽と自動化が進んでおらず、労働者がより大きな量の放射線にさらされることになるからです。」(バーナビー証言33)と証言した。このことは、ベルゴ社においては、品質管理検査は極力短時間で行わなければならなかったことを示している。

 債務者は、工場の改善が行なわれたこと、最新の国際放射線防護委員会の基準を満足していることを指摘する(乙33P17)。しかし、より厳しい基準を満足するためには、検査をさらに短時間で行なわなければならないことを意味し、不正の余地を大きくすることになる。また、ペレット外径検査について、具体的にどのような改善が施されたのかは明らかでない。

 以上に加え、ベルゴ社では、抜き取った32個(以上)のペレットのうち1つでも不良品が見つかれば、約7,000個のペレット全てを不合格にするという抜取方式を採っており、ペレットを1つも不合格にできない、というプレッシャーが検査員にかかっていた。これも不正操作の背景にある。

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三 不正操作を行いうる抜取検査の状況

 本件MOX燃料ペレットの抜取検査は、不正が抑止されない状況で検査が行なわれていた。

 

1 BNFL社とベルゴ社における抜取検査の状況

 MOX燃料ペレット外径の品質管理のための抜取検査において、BNFL社では検査員は2名がチームを組み、1人の検査員がグローブボックス内でレーザー計測装置を用いて外径を測定した数値を、すぐ横にいる別の検査員がキーボードでコンピュータに打ち込んでいた。BNFL事件の発端となった高浜原発3号機用MOX燃料データねつ造の手口は、抜取検査において検査員がペレットの測定を行わず、すでに検査を終えている別のロットのデータをコンピュータ上でコピーして検査を済ませてしまった、というものであった。

 ベルゴ社での抜取検査では、検査員はグローブボックス内に手を入れ、手作業でピンセットを使ってペレットの位置決めなどを行い、測定装置が外径を測定して測定値をカウンターに表示しそれを検査員が確認する。そして検査員が足でスイッチを踏むと測定結果が自動的にコンピュータに送られ、結果を別の検査員が別の場所で評価して、合格判定をするというやり方をとっていた。債務者は東京電力2月報告書(甲5)においてベルゴ社の外径検査について「外径データの測定結果がそのままコンピュータへ転送される構成となっており、検査員による手入力は行われない。従って、検査員がデータをねつ造するようなことはありえない」(P22)としている。

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2 不正操作を行いうる状況

 しかしベルゴ社での測定方法は、別の不正の形態を浮上させる。問題は、検査員は表示される測定値を確認した上でデータを送っている点にある(甲8)。検査員がスイッチを踏まなければ、測定値はデータとしては送られず、何の記録も残らない。逆に何度も何度もスイッチを踏めば、コンピュータにアクセスしなくても、いくらでもコピーができてしまう。これは検査員の意思によってデータが変更されうる形態であり、意図的に不正な測定を行いうる形態といえる(甲7P12)。

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3 不正を抑止するものはない

 昨年7月18日付政府答弁書によると「通商産業省においては、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から、ベルギーのベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)においては、ご指摘のようにウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料ペレットの位置をかえるなどしてその外径を不正に計測することを防止するための機械的なシステムは備わっていないと聞いている。」(甲14ノ2)。

 あるいは、昨年8月9日付福島瑞穂参議院議員による質問主意書にある「作業員が人為的にペレットを回転させるなどして、仕様範囲のデータが得られるまでペダルを踏まずにデータを入力しなかった場合、ベルゴ社の品質部門の人間はどのようにしてその事実を把握することができるのか。また、別の人間が外径測定を評価する場合に、測定された数値でなく、その測定が不正に行われたか否かということをどのようにして認識するのか」という質問(甲74ノ1P5)に対し、政府が9月19日付答弁書に「通商産業省においては、東京電力から、ベルゴ社において、MOX燃料ペレットの外径測定は品質部門で行われているところ、測定担当の人間が御指摘のような操作を行った場合、別の人間がその事実を把握することはできないと聞いている。」(甲74ノ2/二の1について)と回答している。

 以上からも、MOX燃料の検査時に不正を防ぐ手段はなかったことは明白である。しかもベルゴ社の場合、検査の状況、あるいは小山英之証人が昨年12月26日の証人尋問において「検査員が個人的にやった可能性、できる可能性はあると思います。」(小山証言68)と証言したことからも明らかなように、不正操作を検査員一人の判断で行なうことが可能である。部門が独立していることや、測定と評価が別の担当者であることはなんら不正の抑止にはならない。

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4 立会検査では不正は抑止できない

 債務者は、不正が抑止される根拠に、債務者らによる立会検査を持ち出し、立会検査の様子を写したとする一枚の写真(乙27)を証拠としている。債務者は小山証人への反対尋問の際に、この写真を示し「手元も、それから出ている表示パネルも、立会人から全部見える状況で計測されているということは、これで確認できますね」(小山証人反対尋問における債務者代理人の発言60)。と不正操作ができないことを認めるよう迫った。しかし小山証人は「手の向こう側、手の陰になっている、ペレットというのは小さいものですから、V字形のところにはめ込んで動かしてやっているわけですけれども、この3人から見えるとはとても思えません。それからもう一つは、表示パネルが随分小さいもので、この3人は1人もここを見てませんよね。だから見てない時期があるというのを、明らかにこれは示しているわけです。」(小山証言61)と証言し、この写真が、債務者の意図とは逆に、立会検査においても不正操作が可能であったことを示すことを明らかにした。

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四 不正操作を強く示唆する立証

 債権者は本件裁判の過程において、債務者がかろうじて公表した抜取検査データと、本件MOX燃料の抜取検査結果である不合格ブレンダーがゼロであったという事実から、本件MOX燃料の品質管理検査において不正操作が行われたことを強く示唆する立証を行った。

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五 本件MOX燃料の抜取検査データにみられる異常

 債権者が行なった立証の一つは、抜取検査データの分析により見出されたデータの異常である。データの分析は大阪府立大学講師で高浜4号機MOX差止裁判原告の代表的存在であった小山英之氏によって行なわれ、その内容を陳述書(甲64)及び昨年12月26日の証言によって明らかにした。

 

1 BNFL事件で有効性が示されたデータ分析の手法

 BNFL事件では、MOX燃料ペレット外径の品質管理のための抜取検査データ及び工程管理のための全数計測データが公開された。小山証人らは、それら公開データから、抜き取りの母集団であるロット(本件MOX燃料ではブレンダーと呼称)ごとに、1ミクロン刻みの分布図を作成し、ロットごとに抜取検査データと全数計測データの分布形状を比較するという手法で、さらには、検定理論を適用することによって、関西電力が「不正はない」とし、通産省もその判断を「妥当である」としていた高浜原発4号機用MOX燃料についても、データ不正があることを突きとめた。ロットP824を始め、小山証人らが不正があると指摘していたロットは、のちに関西電力も不正の事実を認めており、不正の有無の確認にこうした手法が有効であることが示された。

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2 債務者が公開した抜取検査データ

 本件MOX燃料についての債務者の再調査は、前述のように、BNFL事件を受けて通産省が指示したものであり、この事件を教訓とするのであれば、抜取検査データ及び全数計測データについては、これを公開した上で、ブレンダーごとに分布形状を比較して不正操作の有無を確認する作業が行われてしかるべきであった。しかし債務者が公表したのは、抜取検査データについて、複数のブレンダーから構成されるロットごとの、4ミクロン刻みの分布図だけであった。

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3 ブレンダー毎ではなくロット毎のデータ

 債務者が公表した抜取検査結果のヒストグラムは、抜取の単位であるブレンダー毎ではなく、1つないしは複数のブレンダーをまとめてロットと称している。甲45の推定によると、1つのロットは最大で11のブレンダーで構成されている。本件の場合、抜取検査の単位はあくまでブレンダーであり、データをまとめてロット毎としたのは、データの異常もしくは不正を隠すために故意に行なったとの疑いを抱かざるをえない。

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4 不正が隠された抜取検査データ

 債権者は、4ミクロン刻みのデータでは、不正があってもその異常が隠されてしまうことを、高浜原発4号機用MOX燃料のデータを4ミクロン刻みに加工して示すことによって立証した(申立書第二章第三、甲46P2)。小山証人は甲112P6のロットP824についてのグラフを示しながら「824の抜取りの黒いデータを4ミクロンずつ足し合わせますと、右下のようになりまして、ぐちゃぐちゃとした非常に奇妙な、何か異常を感じさせるような、そういう形が完全に消えてしまって、正常なような形になってしまう。」(小山証言29)と証言した。さらに甲114を示した上で「これは、通産省と市民団体との間で行なわれた交渉の経過をまとめたペーパーなんですが、12月13日にこのような交渉があって、そこには証人自身も出ておられたんですね。」との問いに「そうです。」(小山証言30)「これを見ますと「ヒストグラムが1ミクロン単位でなく4ミクロン単位だと問題が隠れて見えなくなってしまうのでは?」という質問に通産省は、理論的にはあり得る。当然形が違うと答えておられますが、この場面は御記憶ありますか。」との問いに「はい。全くこのとおりの答えでした。」(小山証言31)と証言し、通産省もこれを認めていることを明らかにした。債務者の反論は一切なかった。

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5 全数計測データの存否

 全数計測データについて債務者は、昨年3月から、公式には保存されていない旨を述べており、準備書面(二)において、「ベルゴ社から、現在それを所持していないとの報告を受けている」(P16)と述べている。債権者は、BNFL社ではデータはきちんと保存されており、一般にも公開されていること、債務者が昨年3月24日の市民との交渉の席で、全数計測データが打ち出され保存されていることを示唆したこと、から現実には保存されている可能性があると指摘し、再度の確認を求めた。保存していないというのが事実であれば、これは、債務者の主張に反して、ベルゴ社の品質管理能力が低位であることを示すものであり、保存していないと称して、実は、データの異常が発覚しないように故意に隠しているのではないかという疑いを抱かざるをえない。(債権者準備書面(三)第二の四の5)

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6 抜取検査データの分析手法

 債権者の依頼を受けた小山証人は、こうした制約のある条件の下で、抜取検査データの分析を行った。その結果、本件MOX燃料についてもデータの異常が見出された。これは、本件MOX燃料の検査においても不正の事実があったことを強く示唆する証拠となるものである。

 小山証人は以下の手法をもちいた。すなわち「全数データがない場合には、何か基準になるものと比較しないと、グラフの形だけ見ておかしいかどうかという判断ができませんので、それで、ごく自然な場合に起こる正規分布という形と比べてみたらどうかと思ったわけなんですね。ところが、今のような四つずつ集めたのではぐちゃぐちゃが消えてしまうというおそれが非常に強いということで、なんとか4ミクロン刻みから1ミクロン刻みを推定できないかということを考えてやった。」(小山証言32)推定については、「各区間ごとに2次式というものを仮定し…ax2+bx+cという式でありまして…a,b,cをうまく決めてやると、放物線のどの部分をここに持ってくるかということが決まるわけですね。…a,b,cを各区間ごとに(4ミクロン刻みの)平均値と一致するように放物線を決めるというのと、…隣どうしは連続に、しかも滑らかにつながるという要求…から、全部で三つ条件を与えたことになりまして、パラーメーターの間に関係がついてしまって、例えば左端の二つのパラメーターだけが最後に残ります。それを例えば両側でゼロという条件で決めます。」(小山証言33)

 抜取検査分布として、このようにして作成した推定分布を用い、比較の相手としては、全数計測データの分布に代えて、平均値と標準偏差から作成できる正規分布を用いた。正規分布と比較したのは、何か人為的な操作がなされない限り、データのばらつきは正規分布に近づく、という統計学上の知見による。ただし、例えば山が2つあるようなグラフは、必ずしも正規分布と比較しなくても、それ自体が何らかの異常性を示していると考えるべきであることは言うまでない。

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7 推定分布の妥当性を検証

 本件MOX燃料の分布の検討に先立ち、1ミクロン刻みの抜取検査データが公開されているBNFL社を例にとって、この手法の妥当性が検証された。その結果、1ミクロン刻みの推定分布は、元の抜取分布の大まかな傾向をほぼ再現すること、ただし元の抜取分布を完全に再現するものではなく、そのデコボコを均したような、ある種の平均を通ること、が認められた。この検証から、推定分布がほぼ正規分布に近いからと言って、元の抜取分布が正規分布をしているという保証はないこと、他方、逆に推定分布が正規分布から相当にずれた場合、元の抜取分布は、恐らく著しく正規分布からずれていると結論できること、を確認した(甲64P4・5)。小山証人は甲112資料10を示しながら、「正規分布と著しく変わった形が出てきたとすれば、それは最低のずれであって、現実はもっと大きくずれているであろうということは言えるわけです。」(小山証言33)と証言している。

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8 不正操作を強く示唆するデータの異常

 小山証人は、本件MOX燃料については、公開データがブレンダーごとではなく、16ロットにまとめたものであったことから、16のロット全てについて上記の手法を適用した。すると、推定分布が正規分布からある程度ずれたと認められるものが2つあり、確実にずれているものが4つあった。このことは現実の抜取分布は、正規分布からさらに著しくずれていることを示唆する。

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9 第2の山が存在する異常を示す分布図

 4つの異常を示す分布図は、さらに2つのパターンに分かれる。1つは、推定分布に第2の山が見られるもので、ロット1604が例となる。これは10.360mm付近に第2の山があるが、これが実際には、もっと大きいはずである。小山証人は資料11の4つのグラフを示しながら、「一つの典型は二つ目のグラフの1604であります。これは、右側の10.36という辺りに山らしいものがありまして、第二の山を示唆しております。これは先ほどから言ってますように、恐らくもっと大きな山が出てるに違いないと私は確信している」(小山証言38)と証言した。推定分布が正規分布からずれている事実は、検査において何か人為的な操作がなされた、すなわち不正操作が行なわれたことを強く示唆するものである。この証言に対して、反対尋問において債務者は一切反論しなかった。

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10 砥石の調整による可能性

 証言に先立ち、債務者は準備書面(二)において、「本件MOX燃料ペレットの製造に際しては、仕様から外れたものを製造ラインから除外する自動全数選別のプロセス及び仕様値より内側に想定された管理値をもって砥石の幅を調整する人為的プロセスが製造ラインに付加されたため、個別ロット(ないしブレンダー)各々について必ずしも正規分布になるとは限らない」(債務者準備書面(二)P14)と述べ、歪みが起こる原因が、製造工程での砥石の調整によるものである可能性があることを示唆した。小山証人は証人尋問において、このことに触れた上で、第2の山が、砥石の調整によることもあり得るとしながら、「仮にそういうものであった場合にはどういう問題が出てくるかといいますと、右側の10.36というのは4ページの資料7に戻っていただきますと、これはAQLの0.15%というぎりぎりの平均値のずれよりも、はるかに右のほうにずれてしまう。そういう性能を研削工程が持っていたことを強く示唆することになりまして、決して、その研削の過程の性能が万全であるということとは程遠いという結論になります。」(小山証言38)と証言した。

 証言の後になって債務者は、データ異常の事実を認める前提に立った上で、明確にこれが砥石の調整によるものであるとし、第2の山が存在するパターンについては、あたかも小山証人が砥石の調整によるものであることを認めたかのように主張している。しかし小山証人の証言は、データの異常が、人為的な不正操作が行なわれたことを強く示唆するものであることを前提とした上で、仮にデータの異常が砥石の調整によるものとした場合には、それは研削の性能が悪いことを示し、それにより、AQLの0.15%よりも多くの不良ペレットが生じることを意味することを明らかにしただけである。後に述べるように、AQLの0.15%程度の不良ペレットが生じるような場合には、不合格ブレンダーがゼロであったという事実が、不正操作なしにはありえないことが示されるのである。

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11 中心付近に異常にデータが集められた分布図

 もう1つのパターンは中心付近に異常にデータが集められた形をしているもので、ロット1607がその例となる。小山証人は、「1607というグラフがありますが、これは砥石を調節し直したという操作では、こういうパターンは絶対出てきません。真ん中の辺りにデータが異常にたくさん集まっております。ということは、何か異常な、人為的な操作によって、真ん中辺にデータを集めたんではないかということが非常に強く示唆されていることになると思います。」(小山証言38)と証言した。

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12 矛盾する債務者の主張

 これについて債務者は、反対尋問においてはやはり一切反論せず、ようやく準備書面(5)において反論を試みている。債務者は、やはりデータ異常の事実を認める前提に立った上で、砥石による調整を持ち出し、「可能な限り仕様中心値に近付けるように砥石調整による製造努力が行われている結果、外径寸法抜取検査データが中心値により多く集まる形状を示すこととなることには合理性があり、なんら不自然ではない」と主張している(P3)。

 この債務者の主張は、前述の山が2つある分布が砥石の調整であるという主張と矛盾する。山が2つある分布が砥石のせいであるとすると、砥石の調整は、不連続的に行われ、第1の山の分布を作る砥石の状態と、第2の山の分布を作る砥石の状態の2つの状態があったと見なすことができる。ところが、データが中央に寄せられる分布が砥石のせいであるなら、砥石の調整は連続的に、常に中央に値が近づくように調整され続けなければならない。小山証人が、砥石の調整ではこういうパターンが出てこないと指摘したのはこうした理由による。

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13 砥石の調整によるとの立証をしない債務者

 債務者は上記の主張に続けて、「各ロットにおける砥石調整の具体的実情については、債務者は承知していないが、上記のような推定が経験則に照らして合理的なものであることはいうまでもない。」(同P3)と述べることで、債務者の主張が根拠がない推定にすぎないことを吐露している。いったいどのような経験則に照らして、どう合理的に判断したのかも全く示されていない。裁判所は、債務者がデータの異常が砥石調整であると主張する根拠を求めたのだが、債務者はそれに答えなかった。証拠は?と聞かれて経験則に照らして合理的に判断したと答えるのは、証拠がなにも無い者の返答である。「経験則」というのであれば、データの異常から不正の事実が明らかになったBNFL事件の事例も「経験則」の一つである。

 砥石の調整の記録データに基づいて、このような歪みが砥石の調整のためであることを立証することは可能である。現にBNFL事件の過程では、関西電力が、全数自動計測装置の性能を確認するために、1つのロットについて、砥石がどの時間に調整されたのかを残された記録から調査し、これと全数自動計測結果を付き合わせるという作業を行なっている(甲25参考1)。しかし債務者はこうしたことを一切行なっていない。もし記録がないためにできないとすれば、品質管理上重要なデータを簡単に破棄してしまうベルゴ社の品質管理能力が問われることになる。債務者は、裁判所の求めにも応じず、可能な立証を行なわず主張だけを行なっているのである。

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14 1ミクロン刻みの生データで説明すべき

 債務者は、さらに、「甲第64号証8頁の図(1F3−1607)については、正規分布とペレット抜取データ分布とを対比して、その中央値の差をみれば約0.02%=2%であり、これをペレット数に換算すれば、抜取個数60個の約2%に当るペレット1個程度のずれにすぎない」とし「これをもって「中心付近に異常にデータが集められた形」ということには誇張がある」(債務者準備書面(五)P4)と主張する。以下にこの債務者の主張の問題点を指摘する。

@ まずもって、1ミクロン刻みの生データを入手できる立場にある債務者が、データが入手できない債権者側が苦労して作成し、異常部分がなだらかになることに留意するよう求めている推定分布を、あたかもそれが生データであるかのように扱い、そのまま用いてずれの個数を推定し、「1個程度」、「誇張がある」などと述べている姿が異常であることを指摘しておきたい。

A 推定分布に従ったとしても、債務者の評価には誤りがある。債務者は中央値の差だけをとってずれを「1個程度」としているが、甲64P8の図(1F3−1607)を見ると一目瞭然であるように、中央部のずれは、10.350mm〜10.353mmの区間に及んでいる。ペレット外径の測定値は1ミクロン刻みであるので、ずれの評価も1ミクロン刻みで見て合計しなければならない。債務者のように4ミクロン刻みでまとめて1箇所だけで評価してしまえば、わざわざ1ミクロン刻みの推定をおこなった意味が無い。1ミクロン刻みで10.350mm〜10.353mmの4区間分の上にはみ出た部分の全体に占める割合は、このはみ出た部分の面積が全体の面積に占める割合によって与えられる。これが約6%であることから、ずれの個数は、ロット全体個数が60個であるので、60×0.06=3.6個となる。すなわち、推定分布によっても中央に異常に集められたペレットは約3.6個分あり、これはとても少ない数とはいえないことになる。意図的にずれの数を小さく見せようとする債務者の姿勢はゆるされない。

B 「1個程度」のずれを「誇張がある」とする態度も問題である。債務者は「1個」の不正の可能性を軽視している。既に述べたように、本件の抜取検査では、1個でも不良ペレットがあれば、約7,000個のペレットを含んだブレンダーをまるごと不合格とする(0・1)判定が採用されていた。従って、「1個」のペレットを不正に合格させてしまうと、それは、本来は、全てが不合格とされるべきブレンダーに含まれる約7,000個のペレットを不正に合格させてしまうことを意味し、その中に含まれている本来ならば、はじかれるべき多くの不良ペレットを通過させてしまうことを意味する。Aに述べたように「1個」という評価は誤りであるが、債務者は、仮にずれが「1個」であろうと、なぜ「ずれ」が生じたのか、それが不正によるものである可能性があるのかないのか、きちんと説明しなければならない。

C 小山証人がこの推定分布を作成した意図は「いずれにしても、この辺はいろんな予測式の限界もあるわけなので、やはり1ミクロン刻みのデータをはっきり出して、どの程度の異常なのかをみんなに分かるように示して、その上で、これはロットですから、各ブレンダーごとにはっきりそれを示して、なぜそういう異常が起こったのか、世の中に納得のいくように示すべきだと思います。それがもしできないんであれば、これは立証責任の放棄ということになると思います。」(小山証言38)と証言したように、推定分布に異常が見られることを示し、さらに、それによって債務者が1ミクロン刻みのブレンダーごとの生データを示すことの必要性を明らかにすることにあった。債務者が行なうべきことは、生データを明らかにし、ずれの個数を正確にに示した上で、ずれが生じた原因を説明することである。

D 小山証人が甲64に記し、証言でも明らかにしたように、BNFL社のデータを用いて推定分布を作成し、推定分布の妥当性を検証した結果から、推定分布がほぼ正規分布に近いからと言って、元の抜取分布が正規分布をしているという保証はなく、逆に推定分布が正規分布から相当にずれた場合、元の抜取分布は、恐らく著しく正規分布からずれているとみなすべきであることを確認している。1607ロットについても、元の生データによる分布では、より著しくずれていると見なすべきであり、ずれの個数も推定分布を用いる評価より多いと見なすべきであるが、債務者はそうした点を全く無視している。

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六 不合格ゼロの異常

 債権者は、不正が行われたことを強く示唆するもう1つの証拠として、「本件MOX燃料については抜取検査時に不合格となったブレンダーがなかったことは認める」(答弁書P6)とした事実が異常であり、何か不正な操作が行われない限り現実にはありえないことを立証した。

 

1 債権者の立証

 まず、申立書と甲2の小山証人の陳述書により、本件MOX燃料の抜取検査時のペレットの不良率をBNFL社と同等の約1%と仮定した場合、約36%のブレンダーが不合格となることが、統計的な公式から明らかにされ、不合格がゼロである事実が異常であることが示された。さらに甲45の阪上陳述書においては、まず、本件MOX燃料の抜取検査におけるブレンダーごとの抜取数を推定し、次いでその推定表と、小山証人の陳述書で示された公式に従い、抜取検査において、本件MOX燃料全70ブレンダーが全て合格し、不合格がゼロとなる確率が算出された。その結果、検査時のペレットの不良率を本件MOX燃料で設定されたAQLである0.15%と仮定した場合に、不合格ゼロとなる確率が約1.36%となり、統計学上の常識では現実には起こりえない確率であることが示された。このとき用いた抜取数の推定表について、債務者は裁判所の1月18日付求釈明に回答せず、当否を明らかにしていない。

 AQLは、検査後の製品の不良率がこの数値以下であることが期待されるという数値である。債務者は、本件MOX燃料の抜取検査の抜取率、判定方法から「この抜取検査はAQL〇・一五%に相当」する(甲5P9)と述べている。

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2 問題は不良率の想定

 債権者の立証に対し、債務者は、準備書面(一)および祢津陳述書において、ベルゴ社での不良率がBNFL社の200分の1である可能性を示し、債権者の立証を誤りであると決めつけている。しかしベルゴ社の不良率がBNFL社の200分の1である可能性を示しただけでは、債権者の立証の全てを誤りとすることができないのは明らかであり、むしろ、債務者の指摘は、ベルゴ社の不良率がBNFL社の200分の1程度までに、相当低いことを示さなければ、債権者の立証に反論することができないという自らの立場を明らかにしたものと言える。問題は、ベルゴ社の不良率をAQLと同じ0.15%程度、あるいはそれ以上とみなす事が妥当であるのか、あるいは債務者の言うように、BNFL社の200分の1程度であるとみなすことが妥当であるのか否かである。

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3 製造能力・品質管理能力のBNFL社との比較

 不良率をAQLと同等と想定することの妥当性について、債権者は、まずバーナビー証人の証言及び甲111・113により、不良率が約1.25%であったBNFL社と比較し、ベルゴ社の製造能力・品質管理能力が、BNFL社よりも格段にすぐれているとはとても言えないことを示した。

@ バーナビー証人は「BNFLが開発したSBRというのは、ショート・バインダレス・ルートの略になっております。このSBR法というのはヨーロッパで使われているMIMASと呼ばれている方法よりも均一性の高い燃料を造ることができると思われています。BNFLではSBR法で造るペレットの場合、プルトニウムの凝集塊の最大直径は100ミクロンになり、直径20から30で約25ミクロンを越えるプルトニウムの凝集塊は、ほとんどないと主張しています。というのはSBR法はMIMAS法のように2段階のブレンディングを行うのではなくて、ブレンディングが1回だけあるからです。MIMAS法でのMOXペレットは、直径140ミクロンのプルトニウム凝集塊が発見されています。これは先ほどの100ミクロンに比べて140ミクロンというサイズになっています。しかし、これらの主張は、実験用ペレットについての非常に限られた研究に基づくものであります。結論として、ベルゴ社の使用するMIMAS法で作られたMOXペレットでは、大きなプルトニウムのホット・スポットができるといえます。これは、ベルゴ社のMOXペレットがBNFLのSBR法で造るMOXペレットよりも均一度が低いということを意味しています。」(バーナビー証言21)と証言し、プルトニウムスポットの比較からベルゴ社で採用しているMIMAS法というMOX燃料の製造方法は、BNFL社で採用しているSBR法と比べても劣ることを明らかにした。

 この件に関しては、債権者は甲65を提出している。さらに、裁判所による1月18日付求釈明にある「甲65によれば、ベルゴ社の方がBNFL社よりもプルトニュウムスポットの径が大きいとの指摘があるが、この相違は両者の製造能力に関わる問題か、BWR用とPWR用との製造特性に関わる問題か。」との質問に対し、債務者は「粉末混合法の差に起因するものであり、両者の製造能力及びBWR用とPWR用の製造特性に関わる問題ではない。」(債務者準備書面(4)P13)と回答している。これは、債務者がベルゴ社の方がBNFL社よりもプルトニウムスポット径が大きい事実を認め、さらに、これが粉末混合技術によるものであることを認めるものである。粉末混合法にどのやり方を採用するかは製造能力に関わる問題であり、債務者の認める事実によっても、少なくともベルゴ社の製造能力が、BNFL社よりも著しく勝れているようなことはありえないのである。

A ベルゴ社の品質管理能力について、バーナビー証人は「回数を見てみますと、ベルゴ社のほうが、品質管理においてはBNFL社よりも弱いということが言えると思います。その理由として私が考えるのは、BNFL社の生産基準に比べてベルゴ社の方が低くなっている。特に均一性に関しては、その品質管理の精度が弱いということではないかと思います。BNFL社の富化度と比べると、プルトニウム富化度のテストでは、ベルゴ社の頻度はBNFL社のテストの頻度の4%にしか相当しません。不純物のテストでは、BNFL社の22%しかベルゴ社では行なわれておりませんし、目視検査は46%、アルファラジオグラフィーは72%しか行われておりません。」(甲113P8)と証言し、各種検査の頻度の比較から、ベルゴ社の品質管理能力がBNFL社に劣ることを明らかにした。

 さらに債権者は、本件MOX燃料を製造したベルゴ社のP0工場が、BNFL社のMDF工場と比べても古く、機械が旧式であること、ベルゴ社の方が劣ることが示された混合技術以外で、ペレットの性能に関わる焼結技術や研削技術は、ベルゴ社とBNFL社で同じものが採用されていること、全数計測データの保存状況を比較してもBNFL社の方が品質管理能力はすぐれていること、を挙げている。日本のウラン燃料加工工場では、ペレットの全数外径計測記録を保存している(甲119)。

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4 不良率をAQLと同等とみなすことの妥当性

 さらに、小山証人の証言により、ベルゴ社の不良率をAQLと同等であるとみなすことの妥当性が以下の手順で示された。

@ 小山証人は「東京電力の場合は5ミクロンの8倍を取っている」(小山証言22)と証言し、本件MOX燃料のペレット外径の仕様の幅である40ミクロンが、標準偏差を5ミクロンとした場合の8倍の数値をとって定めたとの考え方を示した。債務者はこれについて、「外径寸法の公差の仕様幅は福島第一原子力発電所3号機で使用されるウラン燃料と同様に40μmとされ」た(乙41P3)と主張している。そうであれば、ウラン燃料の仕様の幅が一体どのようにして定められたのかがすぐに問題となるが、債務者はこれを明らかにしていない。

A 小山証人は「東京電力の場合ですけど、仕様の限界からはみ出す部分がでてくるわけですね。大体真ん中から5ミクロン程度山がずれますと、ちょうどAQL0.15パーセント不合格出てくるぐらいのグラフになる」(小山証言22)と証言し、AQLが0.15%で標準偏差5ミクロンの正規分布を仮定した場合、平均値が仕様の中心から約5ミクロン以内であることが要請されることを示した。

B 小山証人は「標準偏差に関する判断ですけれども、公表された実データでは、仕様の幅が5ミクロンと6ミクロンと両方足しますと7ロットになります。つまり16ロット中7ロットですから、44%が、ぎりぎりそういう値をとっているということが分かります。もう一つは、5ミクロン平均がずれたというものがあります。ですから、決して非常に余裕のあるような状況にはないということがそれからも言えます」(小山証言41)と証言した。

C 小山証人は「関西電力の場合はAQL1%でありまして、7ロットで3.5%の不合格率が出た場合は、AQL1%を少し超えた不良率ということになります。東京電力の場合は、仕様の幅が大きく取っている分だけ、不合格は出にくい状況にあるということは確かだと思います。だけども、その出にくい分を関電は1%、東電は0.15%というように、ほとんど1けた低く取っているということに中に、既に反映されている」(小山証言53)と証言し、本件MOX燃料では仕様の幅をBNFL社の1.6倍と大変広く取っているが、このことは、AQLが0.15%と小さく取っている(BNFL社の場合AQLは1%)ことに反映しているはずなので、仕様幅が大きいから不良率がAQLよりずっと小さいとはいえないことを示した。

D BNFL社の場合、AQLは1%であった。これに対して実際の不良率(約1.25%)は1%を超えていたが、不良率はほぼAQL程度となっていると評価できる。小山証人は、「検査の基準とかそういったものは、検査の困難と経済性といったものの兼ね合いでもって、契約上で決まるはずのものでありますから、かなりぎりぎりのところで決まるのが普通だと思うんですね。」(小山証言11)「0.15%のAQLというのは、契約上のいろんな条件からして、最もあり得ると考えて自然であるという数値だと考えております。」(小山証言49)と証言し、AQLは設備能力と経済性とのかねあいから決まるものなので、実際の不良率がAQLよりずっと小さいなどと言うことはありえず、故に不良率はAQL程度と評価するのが現実的であることを示した。

E 債務者は、本件MOX燃料と同じ工場で同時期に製造された、東京電力柏崎刈羽原発3号機用MOX燃料に関しては、不合格ブレンダーが存在したことを明らかにしている。これについて小山証人は「柏崎刈羽では不合格が出たということは、これは同じ施設で作ってるわけですから、やはりその施設というものの能力というのは、不合格を出す程度の能力であるということを示していると思いますので、それからもう少し一般的な考察からいきましても、0.15パーセントぐらいを不良率に取るのが常識だと思います。」(小山証言19)と証言した。

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5 債務者は反論を途中で放棄

 本件MOX燃料の抜取検査において、不合格ブレンダーがゼロであった事実は、不正な操作なしにはありえない、という債権者の立証に対し、債務者は答弁書において明確な反論をしなかったことから、裁判所は、9月18日の第2回審尋において、債務者に具体的に反論するように求めた。これに対し、債務者は、祢津陳述書及び準備書面(一)において、ベルゴ社で製造されたMOX燃料ペレットの不良率が、BNFL社の200分の1となる可能性があることを示した。しかし、これが現実にそうであるとの立証はなされていない。債権者は、債務者の評価が、抜取検査データ全体の平均値と標準偏差に基づいたものでしかないことから、ブレンダーごとの評価が必要であること、その際、抜取検査データが不正によって操作されていないかどうかを1ミクロン刻みのデータで確認する必要があることを、債権者準備書面(三)で指摘し、これを行うよう求めた。ところが、債務者は準備書面(二)において、「200分の1」の立証を行うどころか、「一〇〇パーセント発生すると主張しているのではなく」「十分考えうること…を明らかにしたにすぎない」(債務者準備書面(二)P13、4行目)などと言って、この評価そのものをひっこめてしまう態度に出た。

 裁判所は今年1月18日付の債務者に対する求釈明において、「ベルゴ社の不良率をどの程度と考えているのか。」(求釈明6項目)と質した。ここでも債務者は明確な回答を避け、「AQL0.15%を十分に下回る」(準備書面(4)P5)と述べるに留まった。AQLを十分に下回るとする根拠の中に、「抜取検査におけるペレット外径寸法の標準偏差及び外径寸法の平均値を本件MOX燃料ペレット全数にあてはめ、その分布が正規分布に従うと仮定して評価すれば、仕様を外れるペレットの割合は0.01%程度と推定され」たことを挙げ、不良率が0.01%程度(BNFL社で同じ評価をした数値の約200分の1)の評価を再び持ち出してはいるが、「0.01%程度と推定され」とあるように、やはり仮定に基づいた「推定」にすぎず、一つの可能性を示しただけである。立証は放棄されたままである。

 債務者の評価は、「例えば、ベルゴ社及びBNFL社による抜取検査で確認された平均値及び標準偏差を各社で製造されたペレット全数にあてはめ」てもよい(乙20P11)という仮定に立つもので、これを正当化するために「多数のブレンダー(ペレット全数)を対象にすれば、それぞれの研削の過程において砥石調整を受けているときのものか否かは偶発的要因にすぎない」(債務者準備書面(二)P15・16)と述べている。しかし、債務者のこの指摘は、多数のブレンダー(ペレット全数)を対象にすれば、不正操作による異常があってもそれが隠されてしまうという事実を認めるものに他ならない。こうしたやり方が、不正操作の有無のチェックにはならないのは明らかである。債権者が一貫して要求しているのは、ブレンダーごとのデータ分析である。債務者の評価のもう一つの仮定は「外径寸法データが正規分布に従う」(乙20P11)ことであるが、生データの代わりに正規分布を置き換えることは、やはり不正の不正の痕跡を消してしまうものである。

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6 建前論に終始する債務者

 不良率をAQLと見なすことの妥当性に対しては、ようやく1月29日に提出された祢津氏陳述書によって反論がなされている。ここで債務者は、「設定されたAQLに対して実際にどの程度不合格品が発生するかは製造努力の結果」「ベルゴ社において不合格ペレットを限りなくゼロに近付ける努力をしている」「工程平均はAQLより小さいことが望ましい」「製造にあたってはペレット不合格品を低減するよう努めることが求められており」との一般論、建前論を展開する。こうした建前が現実とは、必ずしも合致しないことは、BNFL社の事例(AQL1%に対し、不良率はそれを上回る約1.25%)が示している。本件についても現実の不良率がいくらであったかが問題なのである。

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7 柏崎刈羽原発3号機用MOX燃料の不合格率

 ペレットの不良率は、一般に検査結果である合格率から推定されるものである。例えばBNFL社の不良率(約1.25%)は不合格率3.5%という数値から推定したものである。債務者も「ペレットの不良率は検査結果(不合格ブレンダーがゼロ)から明らかにされるべきもの」(乙41P3)と述べている。ただし、本件の場合、「不合格ブレンダーがゼロ」であることの当否がまさに争点となっている以上、ここから直接に不良率を推定することはできない。これを行なっても「不合格ゼロだから不良率は低く不合格ゼロは不自然ではない」という意味のない言葉の繰り返しがなされるだけである。本件の場合は、不良率を別の方法で推定するしかない。そこで債権者は、BNFL社の成績との比較及びAQLから、不良率を0.15%とみなす妥当性を示したのである。 

 東京電力の柏崎刈羽原発3号機用MOX燃料については、本件MOX燃料と同様に不正操作があった可能性が否定できないが、本件MOX燃料ペレットの不良率を推察するための一つの事例であり、債務者が、「不良率は検査結果から明らかにされるべきもの」と主張するのであれば、この燃料についても、本件と同様に検査結果、すなわち不合格ブレンダー数を明らかにすべきであろう。しかし、債務者は、債権者や新潟県・柏崎市・刈羽村の地元住民らが再三にわたり要請したにも関わらず、また本件MOX燃料については不合格ブレンダー数(ゼロ)を公表したにもかかわらす、最後まで不合格ブレンダー数を明らかすることはなかった。

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七 不正事実の不存在の立証を放棄する債務者

 債務者は、債権者の立証に対して最後までまともに向き合わず、希望的結論だけを述べて証拠は示さない、というやり方を繰り返した。およそ立証活動とは言えないものであった。

 

1 立証を放棄する債務者の姿勢

 こうした債務者の姿勢を明確に表すのが「そもそも不正事実の不存在などという消極的事実について債務者が立証責任を負わないことは言うまでもない。」(債務者準備書面(二)P3)との記述である。債務者は、この裁判の中心的争点を不正の有無と認めながら、不正の無い事の立証責任を明確に放棄した。

 そればかりではない。「BNFL社とは異なり何ら不正の疑義がない状況において、これ以上のデータ公開を要求しそれを実現しえないことはやむをえないところである。」(債務者準備書面(二)P18、7行目)と述べ、債務者は、ベルゴ社にははじめから不正の疑義はなく、データ公開の要求すらしなくてもよいという姿勢であることを明らかにした。この姿勢は、債務者が、不正のないことの立証そのものを放棄したとみなすべきものである。

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2 不正事実の不存在の立証はデータ分析によるしかない

 検査は不正が防ぎえない状況で行われた。このことは政府答弁書で既に明確になっている。債務者は一般的な品質管理体制の確認はもちろん、製造前確認試験や立会検査によっても、不正事実の不存在を立証することはできない。不正事実の不存在の立証はデータの分析とその正しい評価によるしかなく、そのためにまず、データ公開が不可欠である。

 BNFL事件について言えば、高浜4号機用MOX燃料でも不正があったことが明確になったのは、誰(市民団体、BNFL社の内部調査及び外部委託調査、NII、関西電力及び三菱重工)が行なったにしろ、その方法は唯一、データ分析によるものであり、不正の有無をロット(本件のブレンダーに相当)毎に検証したからであった。

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3 はじめから不正の疑義はないとの姿勢

 はじめから「何ら不正の疑義のない」という姿勢をもって行った再調査によって、不正事実の不存在の立証などできようはずがない。このことは、BNFL事件における関西電力の姿勢からも明らかである。関西電力は、現地調査を行い、検査員からの事情聴取まで行いながらも、BNFL社製高浜4号機用MOX燃料の検査において不正があった事実を発見できずに、「不正はない」と結論する最終報告書(関電11月報告書、甲25)を国に提出した。関西電力は、プルサーマルを推進せんがために、高浜4号機用MOX燃料に関しては、はじめから不正の疑義はないと決めつけ、NIIの不正の疑いの指摘を否定し、不正はないと主張するBNFL社と共に、不正を否定し続けたのである。債務者の姿勢はこのときの関西電力と全く同じであり、同じ過ちを繰り返そうとしている。

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4 BNFL事件で発覚したすべてのパターンについての調査は行なっていない

 本件MOX燃料の品質問題は、BNFL事件を契機としているが、債務者の再調査はBNFL事件で最初に発覚したデータのコピーの形態だけを想定し、データの確認については、不正が隠されてしまうヒストグラムと、ブレンダー間のデータの一致度合いの確認を行っただけである(甲5P23)。後者にについて債務者は、確認内容の詳細を明らかにしていない。政府答弁書によると90度回転前後や、上・中・下部の測定点別データの一致度合いは「確認していない」(甲14ノ2)。

 BNFL事件において、関西電力は、最初に発覚した高浜原発3号機の不正と全く同じパターンの不正しか調査せずに評価を誤った。通産省はBNFL検討委員会に提出した資料において、BNFL事件に際して調査をコピーの形態に絞ったことを問題点に挙げている(甲15F´)。この反省に立つのであれば、債務者は、少なくともBNFL事件でのちに発覚した、90度回転させて値を操作する不正や、上・中・下に同じ値を故意に入力する不正など、他のパターンの不正を想定しての調査も行なうべきであったが、これを行っていない。ここでも債務者は関西電力の誤りを繰り返そうとしている。

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5 焦点は1ミクロン刻みの抜取検査データ

 債務者は、債権者の不正操作を強く示唆する2つの立証に対し、反論を試みるが、データの異常が砥石の調整によるものとの主張にしろ、不良率がBNFLの200分の1であるという評価にしろ、希望的結論を述べるだけで、証拠を挙げての立証を一切行なわず、反論を途中で投げ出している。

 不正操作の有無の確認においては1ミクロン刻みデータのブレンダーごとの分析が決定的である。前債務者の反論自身がこのデータの必要性を示しており、債務者の立証が不十分なのもこのデータの開示を拒否しているためである。債権者は闇雲に情報公開を求めているわけではない。不正の有無を確認するために、最低限必要なものとして、債務者がその存在を確認している抜取検査データを開示して、ブレンダーごとに1ミクロン刻みの分布形状の分析を行うこと、その必要性、その有効性を再三にわたって指摘しているのである。

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6 債務者自身も1ミクロン刻みの分布を確認していない

 不正操作の有無の確認において、有効性がBNFL事件の経過で明らかとなった1ミクロン刻みデータの分布形状の比較検討については、データが一般に開示されないばかりでなく、債務者自身もこれを行っていないことを債務者は、1月30日の第5回審尋において認めた。これが事実であれば債務者自身も不正操作の有無についての確認を行なっていないことになる。データの分布形状について債務者が確認したのは、ベルゴ社と協議の上、債務者の指示により4ミクロン刻みに加工して作成させ、債務者自身が不正があっても隠れてしまうことを認めるデータだけである。これは、「東電が百パーセント確認していることを示す」よう求めていた福島県知事の要請(甲56)にも反する。そもそも本件MOX燃料についての債務者の再調査は、BNFL事件を受けて通産省が指示したものであったが、債務者の姿勢はこの通産省の指示に答えていない。

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7 品質管理保証記録の不備

 裁判所は1月18日付求釈明において「ベルゴ社による品質管理認定書は作成されているか。作成されているとすると、その記載内容はどのようなものか。」と質し、債務者は「品質管理認定書に相当する品質管理保証記録がある。仕様値と検査データ(ペレット外径寸法については、平均値、標準偏差、最大値、最小値等)が記録されている。」(債務者準備書面(4)P4)と返答した。しかし、1月30日の審尋において、品質管理保証記録に生データが添付されているか、これは東芝が入手しているかを裁判所が質したのに対し、債務者は一旦は生データが添付されており、東芝は入手していないと回答したが、明確ではなかったため、再度の求釈明となった。これに対する債務者の回答では、審尋の際の回答と正反対となり、債務者が持ち出すことを拒否されたという品質管理保証記録は、東芝の手には渡っていたが、生データは記載されていない。さらに平均値、標準偏差、最大値、最小値もブレンダー毎ではなく、ロット毎であるという。(債務者準備書面(五)P1・2)。これが事実であれば、品質管理保証記録には、東京電力2月報告書にある情報以上のものはないということになる。

 一方、債務者が、品質管理保証記録が相当するとした、BNFL社が作成し、関西電力が公表した品質管理認定書には、抜取検査の生データが記載されており、ロット毎(本件のブレンダーに相当)のサンプル数、平均値、標準偏差、最大値、最小値及び判定結果が記載されている(甲25)。

 これらのことから、本件MOX燃料の抜取検査でベルゴ社が作成した公式記録には不備があり、顧客に対して、品質管理状況の確認ができないようにしていることは明らかである。これでは品質管理の保証にはならず、これに甘んじている債務者の品質管理能力は劣悪であるとしかいいようがない。

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8 品質保証の第一義的責任は債務者にある。

 通産省諮問機関(BNFL検討委員会)の報告に「電気事業者の調達先に対する調査等は一義的には電気事業者が行なうべき」(甲16P24)「まず電気事業者自身が…しっかりした品質保証体制を確立することがなにより重要」(甲16P22)とあるように、国は、MOX燃料の品質保証について、その第一義的責任を電気事業者に負わせている。国は、本件MOX燃料の輸入燃料体検査に際して、ベルゴ社に調査に赴きながらも、品質管理データの開示を受けていないことからも明らかなように、品質保証の確認を独自では行っておらず、あくまで電気事業者がきちんと確認を行っていることを前提としている。本件MOX燃料においては、債務者はデータの入手も分析もせず、この前提は崩れている。債務者が不正のないことの立証責任を放棄すれば、本件MOX燃料の品質について責任をもってこれを保証できる者は誰もいない。

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9 地元自治体や県民・住民の要求を踏みにじるもの

 債務者の姿勢は、国の説明会でも明らかになった地元住民の不安の声を無視するものである。債権者の要求のみならず、福島県知事、柏崎市長、柏崎市議会の要求(債権者準備書面(二))、さらには刈羽村村議会の要求を踏みにじるものである。本件と同じく、MOX燃料の装荷が予定されている東京電力柏崎刈羽原発3号機の地元自治体である刈羽村議会においては、昨年12月26日に、プルサーマルの是非を問う住民投票条例案が議員提案により一旦は可決成立した(甲123ノ1)。その後この条例案は、村長の再審議の決定を経て廃案となったが、村議会はあくまで、住民投票を行なうべきとの姿勢を決議において示した(甲123ノ2)。現在、村議、村民らが有権者による直接請求によってこれを実現するための手続きが進められている。

 債務者は、2月8日、建設中を含む発電所の新規建設計画を原則として3〜5年凍結することの方針を発表した。電力自由化時代を迎え、電力需要低迷の中、過剰設備が将来の経営を圧迫すると判断したためと説明された。佐藤栄佐久福島県知事は、国外から「当然プルサーマルも(凍結)に含まれるものと考える」とコメントした。(甲135)2月10日、仙台空港での会見で知事は「原子力政策全体について見直す時期で、1年くらいは県民の皆様の意見を聞いていきたい。」(甲135)と語り、報道は「東電は、福島第1原発3号機(大熊町)でのプルサーマル計画を4月の定期検査に合せて実施したい考えだが、佐藤知事のこの日の発言は、同計画を含めた原発についてこれまで以上に強い慎重姿勢を示したもので、同計画の実施が大幅に遅れる見通しなった。」(甲135ノ3)知事は「プルサーマルの実質上無期延期ともとれる発言をした」(甲135ノ6)と、本件プルサーマル計画の大幅な遅れが必至であることを伝えている。14日には福島県の電源地域である相双地方の市町村議会議員研修会で、14市町村の議員・首長ら200人を前に、同主旨の発言を約1時間に亘って続けた(甲135)。

 知事はこれまでも、「(プルサーマル)計画について、県民の理解が進んでいない」「率直に言って、国民の理解は戻っていない」と繰り返し述べていた(甲136ノ3)。こうした県の姿勢は、本件プルサーマル計画に対する県民の不安と不信を反映したものであり、債務者が本件MOX燃料の品質問題に対して、「裁判で丁寧に答弁」するように(甲56)、との県の要求に背を向け、データの公開を拒否し、公開のための努力を全く行わず、不正の疑義を払拭する努力を全く行なわなかったことが原因の一端にある。

 また「佐藤知事は東海村の臨界事故や関西電力のプルサーマル用燃料のデータ改ざん問題を挙げて「東電の問題ではないが、(国民の)理解を超えることがおきた。原子力発電は水平展開することが重要。残念ながら、理解が進んでいるとは思えない」と述べた。」(甲134)これは、本件MOX燃料の品質問題は、はじめからBNFL事件とは全く関係がないとする債務者の主張に対する批判ともとれる。

 地元の福島県がこうした状況にある下で、裁判所が、県民の不安・不信をないがしろにするような判断を下すことはないと期待したい。

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八 徹底した情報非公開

 債務者が立証を放棄する姿勢は、徹底した情報非開示の姿勢に如実に現われている。

 

1 債務者の徹底した情報非開示の姿勢

 債務者は、本件においても、債権者の求めるデータはおろか、東電2月報告書にある情報より踏み込むものを一切出していない。立会検査の写真(乙27)も東電2月報告にあるものであった。

 こうした姿勢は、債務者がBNFL事件から逆の教訓をえての行動、すなわち、関西電力のように、データを公開して不正が明らかになることを恐れてのものとしか考えられない。不正があることを知っていてのことか、あるいは住民の安全をないがしろにしてでもプルサーマルを推進しようと、ベルゴ社を闇雲に信じてのことか、ともかくBNFL事件やJCO事故から何も反省していないことは明確である。

 企業秘密は、データの非開示の正当な理由にはならない。事は原子力に関わる問題であり、住民の安全に直接関わる問題である。なぜ情報開示の要求すらしないのか。なぜベルゴ社に対して顧客としての権利を行使しないのか。なぜ住民の安全よりも企業秘密を優先するのか。こうした姿勢は、原子力学会倫理規定案(甲70・債権者準備書面(三)第二−六)に象徴される昨今の原子力関係者の姿勢とも相容れないし、通産省の諮問委員会での議論内容にも反する。原子力学会倫理規定案には「会員は、組織の守秘義務に係る情報であっても、公衆の信頼感・安心感を失わないために必要な情報である場合には、これを速やかに公開しなければならない。この場合、組織は守秘義務違反を問うてはならない。」との内容が盛りまれている(甲70)。同案は賛助会員の企業または団体も対象としているが、東京電力株式会社は、原子力学会の賛助会員で、学会の理事の一人は常務取締役が務めていることから、率先して規範を示すべき立場にある。ここで言う「組織」に東京電力株式会社をあてはめて読むこともできるはずである。

 ベルゴ社が秘密にすべき競争相手は誰なのか。国が市民の質問に答えたベルゴ社の競争相手とは「例えばBNFL」(甲122)であった。世界でMOX燃料の販売会社はコモックス社とBNFL社の2社しかなく(第5回審尋調書)、コモックスグループに属するベルゴ社の唯一の競争相手であるBNFL社はすでにデータを開示している。

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2 守秘義務の根拠となる契約書を提出せよ

 裁判所は、1月18日付求釈明において、債務者がデータを開示しないに理由について、「ベルゴ社の方針」「ベルゴ社の競争上の地位を害するおそれがある」との債務者の指摘について、具体的な説明を求めた。しかし債務者は「データの一般公開の要請については、専らベルゴ社の権限によって決定される範囲に属するから、ベルゴ社が一般公開に限定的対応を採る理由、特に「競争上の地位を害するおそれ」の具体的詳細については、債務者ら第三者がその当否を論ずる余地はない。」(債務者準備書面(4)P2)と述べ、回答自体を拒否した。「ベルゴ社の権限」というのであれば、債務者は少なくともベルゴ社に、回答の可能性について問い合わせるべきであったがそれも行わなかった。

 債務者は、債務者と東芝(後にニュクリア・フュエル。以下同じ。)、東芝とベルゴ社の間の契約書に守秘義務が定められているから、抜取検査の生データのコピーが入手できないし、公開もできないのだという。即ち、売買契約、請負契約もしくは製造物供給契約の本質論もしくは一般論として守秘義務があるのではなく、契約書に守秘義務が書かれているから、守秘義務があると言っているのである(このことを債務者は1月30日の審尋期日において明らかに認めた。)。そうであるならば、債務者は東芝との契約書及び東芝とベルゴ社の間のMOX燃料供給の契約書を提出すべきである。そうでなければ、単に債務者が「守秘義務がある。守秘義務がある。」と言い張るだけで何の証拠もないことになる。債務者の主張だけあって、証拠は全くない状態である。「論より証拠」である。まずその契約書を提出せよ。

 そして、裁判所はその文言を厳密に検討する必要がある。守秘の対象は何とされているか(商品の品質そのものか、商品の製造方法なのかなど)、秘密を守る方法は何か(凡そ債務者にデータのコピーを渡さないという意味なのか、データのコピーは渡すがそれを公開してはならないという意味なのか。)など検討すべきことは数多くあるはずである。要するに、本当に債務者は東電やベルゴ社に守秘義務を負っているかを契約書の文書にのっとって検討すべきである。その結果、債務者は守秘義務はない、もしくは一部守秘義務はあるが抜取検査の生データについては守秘義務はない、という結論に達する可能性は十分にある。その検討もできないまま、債務者が出さないのだからしょうがないと諦めて裁判書を書くのは裁判所として正しい態度ではない。それでは目隠しをされたまま裁判をするのと同じである。裁判所は債務者に契約書のコピーの提出を強く求める(「命令する」)べきである。

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3 抜取検査生データの債務者への開示と一般公開とは違う

 @抜取検査生データのコピーをベルゴ社が東芝へ、東芝が債務者へ交付することと、Aそれを東芝または債務者が一般公開することとは、当然のことながら別のことである。

 債務者は、Aがベルゴ社によって断られたというが、その引用する乙28の1、2、乙29を読むとベルゴ社が断っているのは@であるということがわかる。債務者は明らかに@とAをすり替え、虚偽の主張をしており、訴訟態度として極めて不誠実である。

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4 ベルゴ社は、抜取検査の生データのコピーを東芝・債務者に交付することを断ることは法的に許されない

 ところで、@を断るというベルゴ社の態度は正しいか、法的に許されるかを検討しなければならない。結論的には、ベルゴ社が@を断ることは法的には許されない。一定の仕様の製造(超危険物)の製造を注文された製造者は、製品が仕様通り製造されたことを検査し、そのデータを提出するのが当然だからである。そうでなければその製品が仕様通りかどうか、安全かどうかを注文主はチェックできないからである。特に、本件では抜取検査の生データは膨大な個数の数字の羅列である。このような場合、コピーをもらって持ち帰り、じっくりと様々な角度から検討、解析しなければ製品が仕様通りできているか、検査はきちんとされたか否かをチェックできるはずはない。分厚い電話帳が正しくできているかを確かめるのに、1、2頁を開けて見せられ、「ほら見せましたよね。」「開示義務は果たしましたよね。」と言われて納得する者がいるだろうか。債務者は立会検査をしたとか、ベルゴ社の工場で見せてもらったとか言うが、その言い分は上記の電話帳の例に等しい。本件において、製品が仕様通り安全にできているかは、関西電力の高浜の仮処分事件において申立人側がしたように抜取検査の生データをじっくりと解析することによってのみ確認できるのである。ベルゴ社の@の拒否は明らかに債務不履行であり、法律上、何の根拠もない。その証拠の乙29においてベルゴ社は生データの開示(コピーの交付)を断る法律上もしくは契約書上の根拠を示していない。契約上の根拠があるなら、「契約書第○条によりお断りします。」等と説明するはずである。債務者と東芝は、ベルゴ社のこのような債務不履行を唯々諾々として承認している。「腰抜け外交」と言われ、「ベルゴ社に舐められている。」と言われているが、それもやむを得まい。唯々諾々として承認するばかりか、「ベルゴ社の専有情報だから仕方がない。」などと弁護している。しかし、専有情報とは何か(その定義は?)、その法的根拠は何か。そのようなものは何もない。債務者は闇雲にベルゴ社の不開示を擁護しているだけである。いや擁護しているだけではなさそうである。むしろ不開示を誘導している。ル・モンド紙によれば、「不開示(1ミクロン刻みの生データの)は東電の指示による。」というのだから。そうだとすれば、債務者のデータ隠しは極めて悪質だと言わなければならない。債務者は、本件抜取検査の生データが企業秘密に属すると主張する(答弁書P33)が、そもそもそのようなことはあり得ない。MOXの製造方法や製造過程などについては企業秘密はあり得るが、できた製品の寸法に関するデータが企業秘密たりうるはずがない。現に、BNFL社はそれを開示した。BNFL社が開示できるものをなぜベルゴ社が開示できないのか。それを開示したらどのような損害が出るのか。製品の不良性、危険性が発覚するという被害の外に考えられる被害はあるのか。「競業他社」とされるBNFL社が開示したものをベルゴ社が開示したら、ベルゴ社はBNFL社との競争上の地位を阻害されるのか(債務者はその具体的意味の釈明を拒否した。自分が使い始めた言葉の意味の釈明を拒否するところに債務者の苦しさが現れている。)。ベルゴ社はそもそもそのような主張をしているのか(乙29には競争上の地位云々の文言はない。)。債務者の作り話ではないかとの疑いさえ生まれる。

 以上のとおり、ベルゴ社の生データコピー引渡拒否は違法であり、その債務不履行は容認すべきではなく、また、債務者のデータ隠し誘導は悪質なので、裁判所としては債務者に対し抜取検査の生データのコピーの提出を強く勧告すべきである。この抜取検査の生データのコピー抜きに本件裁判をすることはベルゴ社の傲慢や、債務者のデータ隠しを容認することになるので、著しく正義に反し、また、住民・国民の安全を著しく危険に陥れるものである。裁判所の毅然たる対応を切望する。福島県民と国民はそれを期待している。

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5 4ミクロン刻みへの加工はベルゴ社ではなく債務者が要請―ル・モンド紙による最新の報道―

 今年1月20日付フランスのル・モンド紙によると、「ベルゴニュークリア社のイヴォン・ヴァンデルボルクMOX部長は…(公開された)ペレットの単位が4ミクロンであることは認めているが「それは顧客側からの指定によるものだ」と語っている。」(甲117)この事実は、不正による異常があってもそれを隠してしまうように加工を要求したのは、ベルゴ社の側ではなく、債務者自身であったことを示しており、データの加工がベルゴ社の都合によるものとする債務者の主張は根本から覆ることになった。債務者は1ミクロンデータが出せないのは、ベルゴ社の要望によるものと説明してきたが、このような説明が偽りだったことになるのである。債権者と裁判所を欺こうとした債務者の不誠実な姿勢は決定的であり、債務者自身がデータの操作を隠蔽しようとしていたことが明らかである。

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6 データ公開の要請すらしない債務者がベルゴ社と素早い反論の連携プレー

今年1月18日の裁判所による求釈明により、債務者はベルゴ社に対しデータ開示の要請を行なうのが当然であったが、それをしなかった。債務者は昨年1月の段階でベルゴ社に抜取検査データの開示を要請していたと言う(乙28ノ1・2)が、これがポーズだけであったことが明確となった。

 前述のル・モンドの記事については、債務者はイヴォン・ヴァンデルボルクMOX部長が債務者にあてた1月26日付の手紙を提出した。しかし、この手紙の証拠評価は厳密になされるべきである。まず、ベルゴ社は会社としてル・モンド社に対して公式な記事の訂正を求める申し入れをしていない。フランスを代表する新聞の一面に掲載された記事に、もし誤りがあるとするなら、公式の記事の訂正を求めるのが筋であるのに、このような申し入れは全くなされていないのである。ル・モンド氏の記者は記事の全文を読めば分かるように、小山証人の主張をよく理解した上で取材しており、MOX部長の発言を誤解するはずがないのである。

 また、この手紙には内容自体に大きな疑問がある。この手紙は債権者がル・モンド記事を証拠に出した次の日の日付であり、債務者とベルゴ社が緊密に連絡を取り合うことができる関係にあることを示している。また、「当社の顧客からは1μm区分とするよう要請がありましたが、議論の後、4μm区分とすることが受け入れられました。いずれにせよ、当社の顧客はすべての個別データを見ております。」という、記載はこの記事だけを見て、書かれた手紙とは到底考えられない。債務者からこのように書いて欲しいという依頼がなければ到底書けない内容である。この手紙も債務者が無理に書かせたものと見なさざるをえない。もし、そうでないというなら、債権者は債務者に対して、ベルゴ社に送付したル・モンド社記事に関する依頼の手紙自体を証拠として提出することを強く求める。

 さらに、このような債務者とベルゴ社との連携による素早い反論に接すると、なぜ今の今まで債務者がベルゴ社に対して1ミクロン刻みの生データの開示の要請を一切しないのか、深刻な疑問がますます強まってくる。ベルゴ社に対し、不正操作の有無を確認するための要請を、裁判所の求めすらも無視して一切行なわない一方で、自らの主張の裏付けのためには、即日に連絡をとって(おそらくは内容まで指示して)ベルゴ社の担当者に手紙を書かせる債務者の行為は信じ難い。

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7 ブレンダー毎の抜取個数について

 1月18日付求釈明において裁判所は、「ベルゴ社の抜取検査に関して、ブレンダー毎の抜取個数、ブレンダー毎に抜取個数が異なる理由を明らかにされたい。」と求めた。

 債務者は、1ブレンダーあたりの抜取り個数を相変わらず「32個以上」としているが、その実は甲45の推定表にあるように、32、60、80が基本数となって、残りはその倍数となるというように、単なる「以上」ではない。明らかに構造をもっている。この点について小山証人は甲42ノ2を示しながら「左側の例3にあるものを図式化したのが右側の図であります。…この例では、80、80、32という抜取数が行なわれております。右側の下側の32個の場合…32個抜き取りまして、そのうちに不良品が何個現れたかと言うのが一番上の段です。0個でありますと一番下に来て無条件合格になると、4個以上なら不合格になる…その間の1個から3個という不良品が出た場合はもう一度32個抜くというふうになっております。それで、また判断するわけなんですけど、この抜取方式を取りますと、32個かあるいは倍の64個になるというのが非常に納得できる。しかし例えば64個の抜取数が出た場合には、必ずその中に不良品が入っているということになりますね。しかし東京電力が出されている資料の中には、不良品は1個もありません、ゼロ個です。ですから、そのような場合にはこのような抜取りが、また別の何かがやられているのか、あるいは何かの、例えばコンピュータの操作でもって、不良品を良品にしてしまったのか、…何か抜取り数がいろいろある、ちょうど倍数があるということは、何か抜取りの仕方に構造があるということを非常に強く示唆していると思います。」(小山証言)と証言している。しかし、債務者は、抜取個数及び抜取個数が異なる理由について全く回答せず、債権者及び裁判所の疑問に一切答えなかった。

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8 債務者の都合で情報操作

 債務者が、ロットごとの抜取数で唯一開示したのが、ロット1607の抜取個数の60個という数値である。この数値は債務者準備書面(5)において、債務者が、データの異常が砥石の調整のためであるという自らの主張を展開するために、初めて明らかにしたものである。この数値は甲5にある情報から一意的に決まるものではない。甲5によると1ペレットあたりの測定点数は3点であるが、最初の3ブレンダーは6点である。それがどのロットに含まれるものであるかは全く明らかにされていない。甲45で債権者が推定した数値も60個であるが、この推定の可否について、債務者が回答を拒否していることは前述のとおりである。

 ロットごとのブレンダー数、ブレンダーごとの抜取個数等については、債権者らが再三開示を要求し、その度に債務者はベルゴ社の企業秘密を理由に拒否してきた。それなのに、債務者はロット1607の情報だけは、本件裁判で自らの主張を行なうためだけに、すんなりと開示するのである。この事実は、債務者が自らの都合で情報操作を行なっていることを示している。情報が開示されないことを、決してベルゴ社だけのせいにはできない。焦点となる本件MOX燃料抜取検査の1ミクロン刻みの生データについても、債務者自らが積極的に開示を拒んでいると見なさざるをえない。

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9 都合の悪い情報を隠蔽する体質

 債権者は、債務者が過去の事故(福島第二原発3号機再循環ポンプ破損事故、福島第一原発2号機緊急炉心冷却装置(ECCS)作動事故)を例に挙げ、都合の悪い情報を隠蔽する、あるいは偽って開示する事例を指し示した(債権者準備書面(三)第四の一・二)。本件の債務者の態度を見ると、こうした体質をいまだに抱えているとしか思えない。

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10 測定精度について

 1月18日付求釈明において裁判所は、「ベルゴ社において製造部門による工程管理に用いているレーザー計測装置と品質部門による抜取検査に用いているデジタル式マイクロメーター(機械ゲージ)とは、測定の精度が異なるか。どの程度異なるか。」と質し、債務者は「精度は同等であると承知している」と返答した。債権者は、レーザー計測装置の測定精度について、再三にわたり回答を求めていたが、債務者は、デジタル式マイクロメーターの測定値が千分の一ミリであることを繰り返すだけであった。もしこれが測定精度であったとすると、一万分の一ミリ単位まで測定していたBNFL社の計測装置よりも性能が劣ることになる。

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11 情報公開の決定的重要性

 BNFL事件において、高浜4号機の不正が明らかになったことは、1ミクロン刻みの生データを含め多くのデータが一般に公開され、市民を含め多くの人が分析にあたったためであった。これが真の「第三者による確認」である。BNFL検討委員会において、委員が、BNFL事件の教訓として透明性を高める措置をとるべきだとして、「多分国内にさまざまな方たちがいらっしゃって、いろいろな分析をされて、おかしいということを言っておられましたよね。それができたということは、いろいろなデータを出したから…透明にしたから(である。)」「こと原子力に関して言うと、そこで何が起きるということが非常に影響力が大きいということを考えたときに、いろいろな意味で国民に対する透明性を上げる。一般的な市民に対する透明性を上げるということを基本方針に(すべきである。)」(甲69P35・36)と発言しているが、債務者の姿勢はこれと対極にある。

 債務者が第三者機関とするAVI社は、ベルゴ社とは独立した関係にはなく、第三者であることに疑問がある(債権者準備書面(一)第二−五)し、それにAVIの調査にしても一般的な品質管理体制の確認に留まっており、データの詳細な検討は行っていないのである。

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12 不正がないことの立証がされない限り装荷は認められない

 不正事実の不存在が立証されない限り、MOX燃料の安全性は保証されない。債務者が立証を放棄した状態で燃料の装荷が認められないのは当然である。

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第二 不良ペレットが装荷された場合の危険性

一 安全審査は「事故」時の安全評価を要求

 まず、不良ペレットを含んだMOX燃料の安全性について、債務者が再三持ち出す通産省の評価(乙10)について言えば、「通常運転」ないし「異常な過渡変化」における燃料の健全性を評価したものであり、制御棒落下事故などの反応度事故の想定はない。「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針に、「原子炉施設の安全設計の基本方針の妥当性を確認する上では、異常状態、すなわち『運転時の異常な過度変化』及び『事故』について解析し、評価を行うことが必要である。」(甲39ノ1)とあるように安全審査は『事故』の解析と評価を要求している。(債権者準備書面(三)第三−三−4)

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二 制御棒落下事故時のPCMI破損

1 燃焼が進んだときの燃料のふるまい

 燃焼が進むにつれてペレットの外径と被覆管の内径がどのように変化していくのかの計算を、関西電力が行った例が甲120である。これは事故などの異常事態を想定したものではなく、通常の運転で、運転を続けるうちにどうなるかを示している。第3.2.6(1)図の実線が通常のウラン燃料であり、第3.2.6(2)図がMOX燃料である。

 被覆管内径グラフは、はじめのうち、運転時間とともに次第に下がっている。これは外側の冷却水の水圧によって被覆管が縮んでいく(これをクリープダウンという)ためである。MOX燃料の方が下がり方が激しいのは、被覆管が縮むのを抑えるためにあらかじめ被覆管内に封入されるヘリウムガスの量が、ウラン燃料よりも少ないためと考えられる。他方、ペレット外径グラフは次第に上昇している。これは、ペレット内部に核分裂生成物(気体状のもの)が増えて膨張するためである。特にMOX燃料の場合、プルトニウムやアメリシウムから出る多くのアルファ線と呼ばれる放射線がヘリウムガスとなってこれに加わる(アルファ線の実体はヘリウムの原子核である)。MOX燃料ペレットの膨張の仕方がウラン燃料よりも激しくなっているのはそのためと思われる。こうして、ペレットは膨張し、被覆管は収縮して、ついにすき間(ギャップ)が消滅し、それ以後はペレットの膨張に押されて被覆管も一緒になって膨張していく。すき間(ギャップ)のなくなる時期はウラン燃料よりMOX燃料のほうが相当に早く、その後の膨張の仕方も大きいので被覆管の痛みが激しいということになる。

 他方、被覆管の方は、燃焼が進むにつれ、水と被覆管の材料との反応によって表面が酸化していく。これにより冷却水は酸素を奪われ、水素が残るが、この水素が被覆管の材料に吸収され、被覆管は水素脆化を起こし、脆くなって壊れやすくなる。

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2 通常運転中でも発生する燃料棒破損

 こうして、ペレットの変形と被覆管の脆化が同時進行し、両者が相まって「燃料の健全性」が著しく損なわれるのである。場合によっては、通常運転中でも燃料棒が破損することがある。

 事実、美浜原発1号機では、燃料棒の上部が破損するという事故を過去に起こしている。当時関西電力は、この事故を1973年春の定期点検で発見していながら、3年以上もひた隠しにしていた。(債権者準備書面(三)P62)

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3 制御棒落下事故時のPCMI破損

 「燃料の健全性」は反応度事故のときに典型的に問題となる。反応度事故とは何らかの原因で炉の中性子が急激に増え、核分裂反応が急激に進むような事故である。このとき、燃料の温度が急上昇するため及び核分裂によるガスが大量発生するために、ペレットが急膨張して燃料と被覆管が破壊される恐れが生じる。BWR原発の場合、このような設計基準事故として「制御棒落下事故」を想定しなければならず、電気事業者は、このような事故においても、安全性に関する判断基準を満たすことを証明しなければ原子炉設置(変更)許可は得られない。

 制御棒が落下すると、それまで制御棒に吸収されていて平衡状態を保っていた分の中性子がウランやプルトニウムと余計な反応を始め、反応度(従って出力)が一挙に高まる。この間に、燃料は一挙に燃え、燃料の温度が高まり、従って燃料の保有している熱量が増大する。燃焼が一気に進むと、核分裂によって多量のガスが燃料ペレット内で発生し、ペレットが一挙に膨張して燃料被覆管を中から急激に押す。そうなると燃料と被覆管がほぼ同時に破裂し、高温の燃料が粉々になって冷却水中に飛び散ることもある。これがPCMI(ペレット−被覆管機械的相互作用)破損である。

 PCMI破損は、原子力安全委員会の報告書「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象における燃焼の進んだ燃料の取扱いについて(平成10年4月13日原子炉安全基準専門部会報告)」(甲44、以下「RIA報告書」という)が「燃料の燃焼が進むと、燃料被覆管は中性子照射、酸化及び水素吸収により、延性が低下するとともに、ペレットは核分裂生成ガスの蓄積等によって膨れ、さらに出力急上昇時には膨れ量が増加する可能性がある。このため、燃焼の進んだ燃料では、反応度投入事象の比較的初期の被覆管温度が有意に上昇する以前において、ペレットの急激な膨張に被覆管が耐えられず、割れが生じて燃料が破損することが考えられる。」(甲44P1・2)と説明するように、燃料ペレットと被覆管のすき間(ギャップ)に関係しており、燃焼の進んだ燃料では、被覆管の劣化並びにガスの蓄積により、より発生し易くなると考えられている。PCMI破損の発生するメカニズムが、甲118P15に概念図により説明されている。

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三 PCMI破損についての新しい知見とRIA報告書

1 RIA報告書とPCMI破損しきい値

 RIA報告書では、事故時に発生する熱量(1gあたりの熱量calを「燃料エンタルピ」と呼ぶ)に対して、燃料がどの程度でPCMI破損を起こすのかという、「PCMI破損しきい値」が定められている。事故評価の過程は、まず制御棒落下事故を想定し、事故によって加わる熱量(燃料エンタルピ)を解析する、次にPCMI破損しきい値を超える熱量(燃料エンタルピ)が加わる燃料棒については、PCMI破損が生じることとし、そこから破損本数を割り出す、さらに、どの位の放射能が放出されるかを評価する、という手順で行なう。PCMI破損しきい値がなければ、こうした安全評価を行なうことは不可能である。

 RIA報告書は、日本原子力研究所(以下「原研」という)で行なわれたNSRR実験と呼ばれる実験(甲118P13)やフランスのカブリ(CABRI)炉での新しい実験事実により、燃焼が進んだ燃料で制御棒落下事故を想定した模擬実験を行なうと、PCMI破損が、RIA報告書より以前からある指針である「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針(昭和59年1月19日原子力安全委員会決定)」(乙9、乙30、乙42、以下「従来の指針」という)で定められていた、反応度事故時の燃料破損しきい値よりも小さい熱量(燃料エンタルピ)で発生することが明らかになったことから、破損しきい値の変更を余儀なくされ、策定されたというのが経緯である。従来の指針は、新品の燃料を用いた実験事実をもとに破損しきい値が定められており、燃焼の進んだ燃料に関しては、アメリカで1960年代に行なわれた唯一の実験結果により想定されていた。

 福島第一原発3号機の場合、平成9年以前の許可申請書の制御棒落下事故についての事故解析では、従来の指針に従い、燃料破損しきい値としては、燃焼の進み具合に関わりなく92cal/gを用いていた(甲125P10-3(3)-21)。これに対し、原研のNSRR実験では、関西電力の大飯原発や高浜原発で実際に燃焼させた、燃焼の進んだウラン燃料を用いた実験において、60 cal/gや77 cal/gという従来の指針の基準よりも小さい熱量(燃料エンタルピ)で、燃料がPCMI破損を起こしている(甲44添付1P1-6〜)。フランスのカブリ炉では、わずか12 cal/gで破損している。燃焼の進み具合は「燃焼度」で測られるが、燃焼が進み、燃焼度がより高いほど、より低い熱量(燃料エンタルピ)でPCMI破損が生じる事実も明らかになった。RIA報告書はこうした知見をとりいれて、燃焼の進み具合(燃焼度)に応じたPCMI破損しきい値を新たに定めたのである。なおカブリ炉の12 cal/g の事例は、余りに低いためか、理由を付けてしきい値を決める参考から外している。

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2 燃料は破裂し粉々に

 それだけではない。燃焼が進んだ燃料でPCMI破損が起こると、燃料も破裂し粉々に飛び散ることも新しくわかった(甲44添付1P1-6〜)。そこで、単に燃料が損傷するというだけでなく、飛び散った燃料が引き起こす圧力による炉内損傷の可能性、放射能放出の評価、炉心の冷却性が損なわれることについて考慮しなければならなくなった(甲44添付資料)。

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3 破損した燃料が炉心の冷却を妨げる問題については検討されていない

 上記の点について、甲44は、「事故にあってはこのしきい値をこえてPCMI破損を生じ、これに起因する機械的エネルギやペレットの微細化が発生しても、原子炉の停止能力及び冷却性並びに原子炉容器の健全性を損なわないことをかくにんすることとした。」(甲44P2)と述べ、微細化燃料により炉心の冷却が損なわれないか、という検討の課題を提示している。しかし、実際の添付資料での検討では、炉心の冷却性は当然のこととして検討外におき、微細化燃料自身が冷却されるかどうかだけの検討に終わっている。微細化燃料による炉心の冷却性への影響についての検討は、甲44では一切なされていない。ところが、後述(本準備書面第二−五−7)のように、ごく最近の実験事例は、この問題が重要な意味をもつことを示している。

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四 高燃焼度MOX燃料の安全評価の不存在

 燃焼が進んだ(高燃焼度)MOX燃料については、実験事実がないもとで、安全評価が不可能な状況にある。たとえ不良ペレットが存在していなくても、安全性は保証されない。

 

1 PCMI破損しきい値は実験事実によって定められる

 PCMI破損しきい値を表す図(甲44P12、乙33別添図)を見ても明らかなように、しきい値は理論的に決まるものではなく、実験事実により、経験的に決まるものである。

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2 燃焼が進んだMOX燃料を用いての実験はこれから

 RIA報告書がPCMI破損しきい値を決めるために参考にした実験は、実際の原発で燃焼させたウラン燃料を用いたものであり、燃焼が進んだMOX燃料についてはほとんど事例がない。

 燃焼の進み具合は燃焼度で表されるが、本件の原子炉設置変更許可申請に記述のある燃焼度は、燃料集合体平均の最高で約40GWd/t(甲126P32)である。ペレット最高でいくらであるかは明らかにされていないが、50GWd/tを大きく超えるものと思われ、明らかに高燃焼度の領域まで燃焼させる。

 RIA報告書において、PCMI破損しきい値を決めるために参考にした、燃焼度40GWd/tを超える燃焼が進んだMOX燃料の実験例は、フランスのカブリ炉で行なわれたわずか2例にすぎない(甲44添付1P1-19)。うち1例は、やはり従来の指針よりも低い熱量(燃料エンタルピ)で破壊が起きており、しかも、破壊して飛び出した燃料により「冷却材流路閉塞」まで生じている(甲44添付1P1-19)。一方で、カブリ炉は高速増殖炉であり、冷却材にナトリウムを使って実験している。本件MOX燃料が装荷されようとしているBWR原発は軽水炉であり、冷却材は水であるが、水中ではナトリウム中よりも、より厳しい条件で破損が生じることが明らかになっており、米国原子力規制委員会(NRC)も水中での実験を行なうよう勧告している。

 BWR原発用MOX燃料については、まったく実験事例がないといってよい。2000年7月に研究報告(甲133)が出された、NSRR実験でのATR用MOX燃料を用いた実験は、燃焼度が低いもの(20GWd/t)であった。NSRR実験での、燃焼が進んだMOX燃料についての実験は、原研において、第V期高燃焼度MOX燃料を使ったシリーズが現在準備中であり、まさにこれから行なわれようとしているのである(甲118P18)。

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3 ガスがPCMI破損に寄与する

 原研の研究報告に「照射済燃料におけるPCMIに寄与するものとしてペレットの熱膨張及びFP(Fission Products:核分裂生成物)ガスの熱膨張が挙げられる。被覆管温度が上昇したNSRR実験においてFPガスの膨張による大きな変形がみられ、照射後測定によりFPガスの効果が明らかになっている。」(甲133P19)との記述がある。制御棒落下事故によるPCMI破損は、事故による出力の急上昇により、急激なガスの放出によるペレットの急膨張が発生することが直接の原因である。さらに燃焼が進んだ燃料では、通常運転時に生成するガスが蓄積することから、PCMI破損が起こり易くなると考えられている(甲118P15)。前述のように、MOX燃料の場合、核分裂生成ガスに加えて、プルトニウムやアメリシウムから出る多くのアルファ線と呼ばれる放射線がヘリウムガスとなってこれに加わる(アルファ線の実体はヘリウムの原子核である)ことから、ガスの放出量はウラン燃料よりも多く、PCMI破損への寄与も大きいとみられる。

 債務者は、「核分裂生成ガス(FPガス)放出率は現時点の知見ではウランペレットよりも若干高めである。」ことを認めた上で、「ヘリウム量を適切に設定すること」「燃料棒内の空間部分の体積を増加させることにより…ウラン燃料と同等となるよう設計し、安全性が確保されている」(債務者準備書面(4)P12)と主張する。しかし、実験事実は、MOX燃料がウラン燃料とはガスの放出が大きく異なることを示す。

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4 ATR用MOX燃料の実験事実が示すMOX燃料とウラン燃料の相違

 「核管理研究所(NCI)」科学ディレクターのライマン博士は、「沸騰水型原子炉におけるMOX燃料の品質管理の重要性」という報告書(甲116)の中で、「燃料のスウェリングや核分裂生成ガスの放出などの点で、MOX燃料のパーフォーマンスは、同じ燃焼度のウラン燃料のそれよりも劣っている。このことは、PWRのMOX燃料に関しては、フランスのカブリ実験炉において、はっきりと実証されている。」(甲116訳P3)と記している。

 原研が昨年7月に報告した低燃焼度ATR用MOX燃料を使った最近のNSRR実験では、破損は起こらなかったが、「PCMIによる燃料棒の変形が生じた」(甲133P10)。ライマン報告では、「破損は観察されなかったが、4つの実験のうちの2つにおいて、P/Cギャップが閉じ、PCMIが起きており、その結果、被覆管に相当の残留ひずみが生じ、被覆管の変形が起きている。」一方で、「ATRのMOX燃料と同じようなP/Cギャップと被覆材とを持つBWRウラン燃料は、45GWD/t(ATRのMOX燃料の2倍)でも、P/Cギャップの閉塞や被覆管の大きなひずみを示していない。」(甲116訳P3)と記述している。MOX燃料とウラン燃料のこのような違いの原因の一つに、ガス放出の違いが挙げられるが、この点について原研の研究報告は、ガスの放出を、やはり低燃焼度BWRウラン燃料の実験(FK-1〜3)と比較し、実験をおこなった熱量(燃料エンタルピ)の条件では、「ATR燃料の結果は、FK燃料の2〜4倍であ」った(甲133P10)ことを指摘している。さらに「CABRI実験ではMOX燃料のパルス照射時挙動の特徴として高いFPガス放出率が報告されており」(甲133P10)と、フランスのカブリ炉での実験でもMOX燃料でガスの放出率が高い事実が得られたことを指摘しながら「今回の結果も、高エンタルピ条件において、FPガス放出率がウラン燃料より高いという結果であった。」(甲133P10)としている。

 こうした事実を踏まえてライマン報告は「これは、非常に高い燃焼度のウラン燃料(たとえば50GWD/t以上)で見られる影響が、MOX燃料ではずっと低い燃焼度においてでも生じることを示しており、FK−6やFK−7のBWR用ウラン燃料棒で見られたようなタイプの燃料破損が、MOX燃料では、61GWD/tよりずっと低い燃焼度で生じるかもしれないということを示唆している。しかし、この問題に答えを出す実験的データはいまのところ存在しない。」(甲116訳P3・4)と述べ、MOX燃料では、さらに低い燃焼度で破損がおそれがあることを指摘している。FK-6,FK-7はごく最近のBWR高燃焼度ウラン燃料を用いて破損した実験事例である。(本準備書面第二−四−4)

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5 プルトニウムスポットがPCMI破損に与える影響

 この実験に関連して、MOX燃料特有のプルトニウムスポットがPCMI破損に与える影響について、原研の研究報告は、「燃料ペレット全域にわたり直径10〜40μm程度のPuスポットが見られる。Puスポット位置では、FPガスが蓄積されていたと思われる数十ミクロンの大きな空洞(ボア)が見られる。またPuスポットを起点としたクラックの生成や、直径約100μmに膨張したボアの存在が観察される。さらにペレット外周部ではPuスポット周辺に、リム組織が観察されるが、この気孔内にはFPガスがたまっているものと考えられる。…このように、…プルトニウムやPu中の空洞及び…ペレットミクロ組織の変化がペレットのスエリングに寄与したと考えられる。すなわち、高いエンタルピ条件でパルス照射した場合には、燃料棒の大きな変形を引き起こし、結果的に高率のFPガス放出を生じさせた原因になったと考えられる。」(甲133P11)と述べており、直径10〜40μm程度のPuスポットでもPCMI破損に寄与することが指摘されている。ベルゴ社製MOX燃料では最大で直径140μmのプルトニウムスポットが見つかっていることは、債権者が既に指摘し、債務者も認める(乙33P6・7)通りである。

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6 MOX燃料とウラン燃料の同等性の根拠は失われた

 債務者は、MOX燃料とウラン燃料が安全上同等であると主張する根拠に、原子力安全委員会の「発電用軽水型原子炉施設に用いられる混合酸化物燃料について」(乙6)という1995年6月の報告書を持ち出す。しかしこの報告書は、RIA報告書の3年も前のものであり、ここには、燃焼が進んだ燃料において、PCMI破損が従来指針よりも低い熱量(燃料エンタルピ)で発生し、燃料が粉々に破壊される、という実験事実は全く反映されていない。乙6では、「「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象に関する評価指針」に示される判断基準等を適用することは妥当と判断する。」(乙6P10)と結論しているように、従来指針に照らして、MOX燃料とウラン燃料の同等性が問題にされているだけである。この結論の根拠となっているのは、「NSRRでは、2回のシリーズに亘ってMOX燃料実験が実施されており、これらの結果に基づき、MOX燃料での破損しきい値への影響について検討されている。」(乙6P39・40)とある2回の実験であるが、PhaseT、PhaseUとよばれるこれらの実験は、いずれも新品燃料を用いたものである。新しい実験事実は、燃焼が進んだ燃料における同等性の確認を要求するが、燃焼が進んだMOX燃料についての実験はまだこれからである。乙6のMOX燃料とウラン燃料の同等性の根拠は失われたと見るべきである。

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7 原研も知見が不十分であると指摘

 原研の研究報告書(昨年7月)の、「燃料の高燃焼度化とプルサーマルの本格化に際しては、燃料の健全性と安全性を十分に検討・確認する必要があるが、現状ではこのための知見は必ずしも十分ではない。例えば、プルサーマル計画に対しては、これに早期に着手する必要性から、装荷量及び燃焼度に対して強い制限を設けることを条件として、原子力安全委員会は一応安全性の問題は無いとの結論を下している。しかしながら、特に燃焼の進んだ混合酸化物(MOX)燃料の事故時の挙動に関する知見に関しては、フランスCABRI炉で得られた少数の実験結果と最近NSRRにおいて実施している低燃焼度ATR−MOX燃料を対象とする実験から得られつつあるものを除き、具体的なものが無い。」(甲133P1)との記述は注目に値する。この記述にある「原子力委員会は一応安全性の問題は無いとの結論」というのは乙6を指している。(装荷量として炉心の1/3まで、燃焼度として当時のウランと同等までという制限を設けているのは乙6である。)原研報告は、この原子力安全委員会の結論が、「早期に着手する必要性」による「一応」のものであるとみなしており、現時点に立って、明らかにこの結論に疑問を呈している。そして、「燃料の高燃焼度化とプルサーマルの本格化に際しては燃料の健全性と安全性を十分に検討・確認する必要がある」ことを訴え、実験事実が乏しいことから「現状ではこのための知見は必ずしも十分ではない。」と指摘しているのである。本件MOX燃料は、高焼度MOX燃料であり、これを装荷する本件プルサーマル計画は、まさに「燃料の高燃焼度化」と「プルサーマルの本格化」を同時に行なうものである。この計画が、国の研究機関である日本原子力研究所によっても、安全性の検討・確認が不十分なものであることが指摘されているのである。

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8 プルサーマル燃料の安全性は確認されていない

 以上のように、MOX燃料については、特に燃焼が進んだ高燃焼度領域での燃料の健全性と安全性について、確認・検討することの必要性が、最近のウラン燃料の実験による知見によって明らかにされながら、これが行なわれていない状態にある。ウラン燃料との「同等性」の根拠は完全に失われており、MOX燃料についての安全性は、不正操作の有無にかかわりなく、確認されていないというべきである。ましてや、検査において不正操作がなされ、燃料中に不良ペレットを含む場合には、さらに危険性が増すことになる。

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五 ペレット外径と安全性の問題

1 不良ペレットを用いた実験事実はない

 燃焼が進んだMOX燃料についての実験事実はほとんどないに等しく、ましてや、はじめから燃料ペレットと被覆管のすき間(ギャップ)のない不良ペレットを用いての実験事実は全くない。実験事実がなくては、PCMI破損しきい値を決めることができず、となれば、制御棒落下事故の事故評価などはできない。 

 債務者は通産省、原子力安全委員会の安全性評価結果が「MOX燃料ペレットと被覆管ギャップの有無に関係なく」(債務者準備書面(二)P23)出されているように言うが、これらの評価にギャップについての記述がないのは、ギャップが仕様値を外れるような不良ペレットを使用した場合の評価などやりようがなく、はじめからそのような想定をしていないという理由からである。

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2 ペレット外径とPCMI破損

 右考察した燃料のふるまいと、PCMI破損の発生メカニズムからみて、燃焼が進むにつれて、PCMI破損しきい値が下がる事実は、破損の発生条件が、燃焼が進むにつれてギャップが埋まり、燃料の健全性が損なわれていくことが大いに関係があることを示している。

 ライマン報告によると、「ペレット−燃料被覆(P/C)間のギャップは、最初、増大した後減少する。ギャップが最終的に閉じてしまうと、ペレットと燃料被覆管が強く接触し、化学的結合が生じる可能性がある。ペレットがさらに膨張すると、燃料被覆管に引っ張り応力がかかる(一方、燃料被覆管は、ペレットに、圧縮応力をかける)。PCMIは、燃料と被覆管の両方に亀裂を生じさせる可能性があり、その深刻度が増すと、最終的に被覆管の破損をもたらすことになる。」(甲116訳P1・2)

 原研の研究報告にも、「燃焼が進むとPWR型、BWR型などの燃料型式の相違に拘わらず、被覆管のクリープダウンにより燃料ペレットと被覆間の間のギャップが小さくなりPCMI破損の発生が容易になる。」との記述がある(甲133P19)。

 ギャップが狭いほどペレットと被覆管が受ける応力が大きくなる傾向は、不良ペレットを含んだMOX燃料の安全性について、債務者が持ち出す通産省の評価(乙10)からも見て取ることができる。この評価によれば、ペレットと被覆管のギャップが狭いほど、「異常な過渡変化時」の歪応力は大きくなる傾向にあることがわかる。ここから、制御棒落下事故時にも、ギャップの違いが応力の違いをもたらし、破損条件を変えることが推察されるのである。

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3 ギャップはなくても関係ないという債務者の暴論

 債務者は「制御棒落下事故の影響については…ペレットの外径寸法の不具合によって破損が発生しやすくなるというものではない」(債務者準備書面P24)と述べ、ペレット外径は破損の発生条件には影響しないと決めつけている。さらに債務者は、今年1月30日の第5回審尋で、PCMI破損とギャップの問題についての議論で、燃焼が進むと2サイクルぐらいでギャップが埋まる、高燃焼度の領域では既にギャップは埋まっている、だから初期状態のギャップは影響しない、旨の主張をおこなった。これは、初期のギャップの大きさはどうでもよく、なくても燃料の安全性に関係しないという意味となる。

 本件の原子炉設置変更許可申請書では、ギャップは約0.2oと規定され、ギャップをおく理由を「燃料寿命を通じて、熱膨張と照射スエリングにより被覆管に過大な歪が生じないよう、ペレット内部空孔及びペレット−被覆管の間隙を決める」と明確に規定している。これから、ギャップを置くのは、被覆管に過大な圧力をかけないようにするためであることは明らかである。

 債務者の主張は、燃料の安全性がよって立つはずの技術的基礎を自ら踏みにじる暴論であり、本件の原子炉設置変更許可申請の規定を自ら否定し、それにより許可を出した通産省、原子力安全委員会の審査を否定するものである。こうした主張が東京電力の燃料についての責任者からなされるのは信じ難いことである。

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4 BWR燃料についての最新の知見

 ギャップが埋まる速度が、ウラン燃料よりも速いMOX燃料や、はじめからギャップのない不良ペレットでは、通常のウラン燃料よりもさらに、PCMI破損が発生しやすいとみなされるべきである。これを明確に否定するような実験事実はない。逆にBWR原発用燃料を用いた最新の実験事実は、ギャップがPCMI破損の発生条件に関わることを示している。この実験は、2000年2〜3月にかけて行なわれ昨年10月、本件申立以降に発表されたものである。

 RIA報告書が参考にした実際に破損を起こした実験事実は、すべてPWR原発用燃料についてのものであった。しかし、燃焼が進んだ燃料において、燃料の破損あるいは破壊が、従来の指針よりも小さい熱量で発生することが、BWR原発用燃料でも起こることがごく最近明らかにされた。甲124は実験の行なった原件の研究員が米国原子力規制委員会(NRC)の会議に報告した実験についての速報である。実験は、福島第一及び第二原発の燃料を用いたもので、結果は以下のようなものであった。

「NSRRにおける最近の2つのBWR燃料の実験、FK-6とFK-7では、著しい被覆管の破損と燃料の飛散が起こった。これらの2つの燃料棒はいずれも8×8のジルコニウムライナー被覆管を採用したステップU型燃料棒で、福島第二原発2号炉で5サイクル使用し、燃焼度61MWd/kgU(注:61MWd/kgU=61GWd/t)まで照射されたものである。これらの燃料棒にパルス照射を行ったところ、FK-6では293J/g(70cal/g)、FK-7では260J/g(62cal/g)で破損した。…2つの実験において、被覆管がいずれも3つの破片に壊れ、すべての燃料ペレットが細かい破片粒子に砕けて、冷却水中に飛散した。(実験の)カプセル水中から回収された燃料の粒子はふるい分けられ、約半数のペレットが0.1mm以下になっていることが確認された。」(甲124)燃料棒が3つに割れ、燃料が粉々に砕けて100%が飛散するという激しい破壊であった。

 BWRについてのこの最新の知見は、現在公表されている暫定値を見る限りでは、RIA報告書にある新しい破損しきい値を変えるものではない。しかしこの実験は、BWR原発でもPCMI破損により燃料が粉々に破壊されうることを示し、さらにPCMI破損しきい値にギャップが関係していることを示唆している。というのは、破損を起こしたのはステップU型の高燃焼度燃料であるが、「ステップU型燃料はステップI型燃料に比べて、ペレット-被覆管ギャップが狭く、燃料の密度も高くなっている。」(甲124)のである。ステップT型を用いた同様の実験(FK-1〜3)では破損は生じていない。なお、暫定値はしきい値の上にあるとはいえ、これに非常に近く、今後確定される値がしきい値を下回る可能性がある。現にPWRの実験では確定値が暫定値を下方修正した事例が存在する。

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5 破損した実験事例を無視する債務者

 これに対し、債務者は、「FK-4及びFK-5において燃焼の破損は生じていないのですから、製造時にペレット−被覆管燃料ギャップは、必ずしも反応度投入事象時に高燃焼度燃料が破損するかしないかを左右するものではないといえるのです。」(乙41P11)などと述べ、破損したFK-6,7ではなく、破損しなかったFK-4,5に注視し、これとFK-1〜3を比較することによって、ギャップは関係しないとの結論を引き出すよう求める。これも、安全上では最も保守的に判断を下すべき立場にある、東京電力の燃料についての責任者の主張としては、とても信じ難いものである。

 ライマン氏が指摘するように「最近までは、PCMIは、BWRの場合、PWRとは異なり、大きな問題ではないと考えられていた。なぜなら、燃料被覆管のクリープダウンが少なく、したがって、それだけP/Cギャップが広いからである。」(甲116訳P2)しかし、FK-6,7はそのPCMI破損がまさにBWRでも発生することを示した事例であり、しかも3つに割れて粉々になる激しいものであった。この原因を専門家たちは今、必死になって探っている最中であろう。そして、速報(甲124)にギャップの条件が記入されているのは、初期ギャップがどのように影響したのかも考察されていることを示している。

 ところが、債務者は自分が提供した燃料が破壊するという重大な事実に目をそむけ、破損しなかった事例だけをとりあげ、基準を投げ捨ててまで、ギャップがなくても安全だと言い切るのである。このような債務者にとても命を預けることはできない。

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6 被覆管の脆化の影響

 FK-6,7についての速報(甲124)において、破損が発生した原因として考察されているのが被覆管の脆化である。研究員による考察は、債務者の都合のいい暴論を吹き飛ばしてしまう。

 ライマン博士が、「PCMIが高燃焼度の燃料に関して特に大きな懸念材料になっているのは、照射の際に生じる化学的・力学的変化が燃料被覆管を脆弱化させる傾向があるからである。」(甲116訳P2)と指摘するように、燃焼が進むと被覆管が脆化することも、高燃焼度燃料でPCMI破損が容易に起こる一因とされている。原研の研究報告にも「燃焼の進んだ燃料では、被覆管が酸化・水素吸収、中性子照射等により脆化しているため、反応度事故時のペレットの急激な膨張によって被覆管が脆性破壊するPCMI破損が低い燃料エンタルピで発生しうることが明らかになっている。」(甲133P18)との記述がある。

 FK-6,7について甲124では以下ように考察されている。

「FK-1からFK-5におけるパルス照射の間、被覆管はPCMI(ペレット−被覆管機械的相互作用)による負荷に耐える十分な延性を保っていた。BWRにおいてはクリープダウンが(PWRに比べて)小さく、ペレット−被覆管ギャップが大きいため、PCMIによる負荷が、50MWd/kgUのPWRでの実験に比べて穏やかなものとなった。

 一方、FK-6とFK-7では、ジルコニウムライナーと燃料ペレットの間で広範囲に化学結合が生じ、ペレット−被覆管ギャップが、パルス照射前に、完全に埋まってしまった状態であった。FK-6とFK-7に対する照射後の燃料検査と分析は現在進行中である。データとしては予備段階のものではあるが、この実験結果は化学結合による激しいPCMI負荷の発生を示している。」

 ここから読み取れるのは以下の点である

@ FK1〜5で破損が発生しなかった原因に、BWRでは被覆管の収縮(クリープダウン)が小さく、ペレット−被覆管ギャップが大きいため、ペレットと被覆管の機械的相互作用(PCMI)による負荷が小さかったことを挙げ、被覆管が延びる性質(延性)がその負荷に耐えることができたと考察している。

A FK-1〜5では破損が起こらず、FK-6とFK-7で破損が起こった原因として、被覆管のジルコニウムライナーと呼ばれる内張りと燃料ペレットの間で広範囲に化学結合が生じたことを問題にしており、破損した実験結果から、化学結合が激しいPCMI負荷を発生させたと考察している。ライマン報告にあるように、化学的変化は高燃焼度燃料における被覆管脆化の一種である。

B その化学結合は、FK-6とFK-7では、ペレット−被覆管ギャップが、反応度事故を模擬する実験を行なう前に既に完全に埋まってしまった状態であったことに関係している。ライマン報告も「このような燃料破損の原因は、P/Cギャップが完全に閉じてしまい、燃料と燃料被覆管との間の広範な化学的結合が生じたことにあると見られている。」(甲116訳P2)と述べている。

C FK-6とFK-7に対する照射後の燃料検査と分析は現在進行中である。

 債務者は、2サイクル程度でギャップは埋まるので、あとは同じだとの主張をしている。もしそうであれば、4サイクル照射したFK-4,5と5サイクル照射したFK-1〜3・FK-6,7の全てで、ギャップが埋まり、同じ結果が得られたはずである。ところが現実は全く違うのである。

 甲124の考察のように、FK-6,7だけがペレットと被覆管のギャップが完全に埋まった状態にあり、広範囲に化学結合が生じたとすると、ギャップが埋まったタイミングや化学結合を広範囲に生じる条件が当然問題となる。初期ギャップの条件が考察の対象に入るのは全く当たり前の事なのである。

 以上により、はじめからギャップのないような不良ペレットでは、より早くギャップが埋まり、広範囲に化学結合が生じることによって、より燃焼度の低い状態で、低い燃料エンタルピでのPCMI破損が起こる可能性は十分に考えられる。RIA報告書にあるPCMI破損しきい値は、燃焼度が低いほど、しきい値は高くなっており、場合によってはこれを下回る条件でPCMI破損が発生するおそれが十分にある。

 Cにあるように本格的な分析はこれからである。このような状態で、ギャップがPCMI破損の条件には影響しないなどとは決して言えないのである。

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7 破損した燃料棒による流路閉塞

 本件MOX燃料導入に際しての、債務者による原子炉設置変更許可申請書によると、制御棒落下事故では、RIA報告書の新基準が厳しくなったために、破損する燃料棒の数が5%(甲126P10-3(3)-26))(約1860本に相当)と、以前の解析結果(約1530本(甲125P10(3)-3-63))より増えた。そればかりでなく、新たな実験からの知見によれば、燃料棒が単に破損するのではなく、燃料が粉々になって冷却水中に飛び出すと評価しなければならない。ところが、RIA報告書ではその場合に、粉々燃料が冷却水の流れを妨げて炉心の冷却を損なうという問題は一応立てられてはいるものの、具体的な検討がいっさい行われていないことは前述の通りである。

 ところが、右の福島第二原発の燃料を用いた新たな実験によれば、「被覆管がいずれも3つの破片に壊れ」(甲124)燃料棒が3つに分断されている。その場合、真ん中の部分は冷却水中に漂うことになるが、燃料棒間は狭いのでひっかかり、そこにさらに粉々燃料が貯まって流路を閉塞することになる。また分断した上下部分も振動を起こす。このような流路閉塞の影響は全く考慮されていない。流路閉塞により、原子炉の冷却を妨げ、炉の健全性を損なう恐れがある。

 まして、MOX燃料となると、このような燃料の粉々破裂、燃料棒の分断がいっそう激しくなると予想されるが、そのような実験も考察もまったく皆無の状況である。この点でも、MOX燃料を用いた場合の安全性は確かめられていないのである。

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8 BWR原子炉におけるMOX燃料の品質管理の重要性(ライマン報告書の重大な指摘)

 ライマン博士は、制御棒落下事故だけでなく、「出力発振」と呼ばれる、BWR原発特有の「異常な過渡変化」においてもPCMI破損について考慮すべきであることを指摘した上で、以下のように結論している。

「発振型の過渡変化の際のPCMIに対するBWR燃料の脆弱性が、燃料の初期P/Cギャップに大きく左右されるという点を考慮すれば、過渡変化の際の高燃焼度BWR燃料の安全性について高度の保証を提供するうえで、燃料製造時のP/Cギャップの非常に厳密な管理、それに、燃料の照射の際のギャップの変化についての十分な理解が、極めて重要である。

 この勧告は、反応度事故の際のMOXの安全余裕がより小さいことを考慮すれば、MOX燃料についてはさらに緊急のものである。ペレットの外径の20ミクロンの不確実性――福島向けMOX燃料の現在の寸法公差――は、P/Cギャップの変化との関連でいえば非常に重大な意味を持つものであり、したがって、大きすぎて受け入れられるものではないと思われる。根底にある現象についての完全な理解が、とりわけMOX燃料に関しては、得られていないから、製造過程における厳密な品質管理と安全余裕の維持は、燃料が深刻な事故に耐えられるとの確信を維持する上で極めて重要な措置と思われる。

 MOX燃料のパーフォーマンスの不確実性は、反応度事故の際の高燃焼度MOX燃料の反応についての実験データの不十分さから来る根本的な帰結である。データベースのギャップは、許可された最大の燃焼度を持つMOX燃料棒に関して行う厳密な実験プログラムによってのみ埋めることができる。制御棒落下と出力発振の両方の条件を研究しなければならない。また、初期P/Cギャップ寸法の影響も評価する必要がある。したがって、日本のMOX利用計画は、本格的照射の際に経験されるのと同じ条件の下で行う徹底的な先行試験照射計画を行うまで、実施を許可すべきでない。このようなテストなしにMOX使用を許すのは、極めて無責任だと私は考える。」(甲116訳P5)

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9 福島が「実験場」に

 もし、このままMOX燃料の装荷を許すことになれば、債務者は、燃焼の進んだMOX燃料の挙動がどうなるのか、PCMI破損がどの程度の熱量で発生するのか、しかもはじめから燃料ペレットと被覆管のすき間がなくなっているような不良ペレットを多く含んでいる場合にはどうなるのか、という「実験」をいきなり実機で、福島を「実験場」に行うことになる。こんなことが許されるわけがない。通常の実験であれば、実験装置内でわざと「事故」を起こすのだが、債務者が目論む福島での「実験」では、「事故」が発生してしまったらもう手遅れなのである。

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六 重大事故の影響

 適正な検査を経ない規格外の不良ペレットが混入した状態で原子炉を稼動すれば、重大事故が発生し、重大な被害を生ずる可能性がある。(甲55)

 

1 不良ペレットを装荷した場合の事故の影響

 不正な大きさのMOX燃料ペレットが使用されていれば、炉心に挿入されていた制御棒が落下する事故が起きたときに、破損してしまう燃料棒の数や損傷の程度が安全審査の想定を超える事態が起こりうる。このことはさらに、破損した燃料によって冷却材や再挿入しようとした制御棒の進路までふさぎ、高圧力下での炉心溶融事故を引き起こす可能性も否定できない。その場合には、溶融した炉心によって圧力容器が破壊されるだけでなく、格納容器や一部の工学的安全装置の機能喪失を招き、環境中に大量の放射能を放出・拡散させることになる。福島第一原発3号機でこのような苛酷事故(シビアアクシデント)が起きた場合の災害評価について考えてみる。

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2 災害評価の条件

 原子力資料情報室の高木仁三郎氏と上澤千尋氏は、国際MOX燃料評価プロジェクトの最終報告書「MOX総合評価(七つ森書館、1998年)」(甲3)において、電気出力110万キロワットの沸騰水型炉におけるMOX燃料使用における被曝災害の評価を行っている。同じ手法で行った出力78.4万キロワットの福島第一原発3号機に対する結果をここに示す。

 アメリカ合衆国の原子力委員会のWASH−1400(ラスムッセン報告、1975年)とよばれる事故災害評価報告の手法に基づいて、原子力発電所の巨大事故時に原子炉からエアロゾル化した放射性核種が環境中に放出され広がり、それにより近隣住民に引き起こされる被曝線量の計算を行った。

 MOX燃料を使用したの炉心には、プルトニウムをはじめ、アメリシウムやキュリウムの同位体など人体に多大な内部被曝をもたらすアクチノイドが、ウラン燃料だけの炉心に比べて、10倍程度多く含まれており、このため健康への影響が桁違いに大きなものになる。

 この事故評価に際して,採用した事故のシナリオは次のようなものである。BWR−1の事故をベースに、MOX燃料使用時の事故規模の拡大を考慮して、チェルノブイリ級のランタノイドの放出を想定すべきと考えるので、ランタノイド元素の放出量を炉心内蔵量の4%とした。

 BWR−1タイプ事故(WASH−1400)とは以下のようなものである。すなわち、ECCS(緊急炉心冷却系)を含む炉心冷却系が故障し、炉心が溶融する。溶融した炉心は原子炉の底に落下し、底に残っていた水分と反応して水素爆発を起こす。格納容器が破壊され、溶融した燃料のかなりの量が大気中に放出される。

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3 MOX燃料はウラン燃料の2倍の被曝線量

 計算の結果、この事故想定により、単純に原子炉から同距離同方位にいる人の被曝線量はMOX燃料を使用する原子炉の方がウラン燃料だけの時に比べて、2倍以上にも達することがわかった。

 同じ被害を与える距離で両者を比べると、BWR−1タイプ事故では、ウラン燃料だけの原子炉でも全員死亡の範囲は原子炉から15.3キロメートル(6シーベルト)、半数死亡は29.0キロメートル(3シーベルト)、顕著な急性障害が現れる範囲も67.0キロメートル(1シーベルト)とすでに大きな災害であるが、MOX燃料を使用した場合にはさらに大きなものとなる。MOX燃料を使用した原子炉では,全員死亡の範囲は原子炉から32.9キロメートル、半数死亡は56.4キロメートル、顕著な急性障害が現れる範囲は126.3キロメートルにも拡大する。MOX燃料を使用した原子炉では、同じ災害規模の範囲の距離がウラン燃料だけの原子炉に比べ、2倍に拡大しており、これは被害を受ける面積で比べると実に4倍にも拡大していることを意味する。居住地や農地を放棄せざるを得ないことなど、社会的な影響を考慮に入れた被害規模はさらに大きなものとなるであろう。

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4 福島第一原発3号機で事故が起きた場合の災害評価結果

 また、より具体的な人体への健康影響をみるために、福島第一原発3号機で巨大事故が起き、首都圏に向かって、一定の気象条件の下(風速毎秒4メートル、天候は晴れ、大気安定度D)で放射能が広がった場合を考える。

 原子炉から風下約300キロまでに放射能が広がって住民が被曝した結果、MOX燃料を使用した原子炉では将来的に100万人以上の人々がガンによって死に至る健康被害が出てくることが予想される。これはウラン燃料だけの原子炉の場合に比べ、2倍以上の深刻な被害が首都圏にまで及ぶことを意味している。

 ここに示したのは必ずしも最大の被害を与える事故ではない(甲4P116)。炉心の損傷が引き起こされるような事故の一例についての考察結果であって,気象条件や人口の分布,また事故の想定規模次第ではもっと大きな被害結果がでるであろうことは想像に難くない。

 炉心の損傷が起きたときには、東京電力や国の事故解析では、現実的な事故にはとても対応できない。このことは、安全審査指針(発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針など)にいう格納機能がいつでも保持されるという条件、すなわち放射能の大量放出はあり得ないとされていることがいかに安全審査上の不備であるかを示すものである。

 MOX燃料を使うことだけでも危険性が増すのに、不正につくられた疑いのある燃料ペレットが燃料棒中含まれるとなれば、そのときの事故の危険性は膨らむばかりである。

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第三 立証責任

一 本件の争点

 本件は、債務者が所有する原子力発電所において使用する燃料の健全性を問題とし、健全性に欠ける燃料を使用した場合の危険性を争点にするものである。具体的に本件MOX燃料ペレットに関する資料はすべて債務者が保持している。また、原子力発電所の安全性に関する全資料も債務者が保持している。以上の状況を考えれば、具体的な立証の分配、負担は次のとおりになされるべきである。

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二 女川判決の原則

 債権者らは、平成6年1月31日仙台地方裁判所においてなされた東北電力女川原発訴訟第一審判決が明言した以下の原則に立つべきであると主張する。

 同判決は立証責任について、原告側に

「原告らは、@原子力発電所の運転による放射性物質の発生、A原子力発電所の平常運転時及び事故時における右放射性物質の外部への排出の可能性、B右放射性物質の拡散の可能性、C右放射性物質の原告らの身体への到達の可能性D右放射性物質に起因する放射線による被害発生の可能性について、立証責任を負うべきことになる」

とし、被告側に対して、

「右のとおり、原告らは、既に前記@ないしDの点について原告らの必要な立証を行っていること、本件原子力発電所の安全性に関する資料をすべて被告の側が保持していることなどの点を考慮すると、本件原子力発電所の安全性については、被告の側において、まず、その安全性に欠ける点のないことについて、相当の根拠を示し、かつ、非公開の資料を含む必要な資料を提出したうえで立証する必要があり、被告が右立証を尽くさない場合には、本件原子力発電所に安全性に欠ける点があることが事実上推定(推認)されるものというべきである」とした。「そして、被告において、本件原子力発電所の安全性について必要とされる立証を尽くした場合には、安全性に欠ける点があることについての右の事実上の推定は破れ、原告らにおいて、安全性に欠ける点があることについて更なる立証を行わなければならないものと解すべきである」と述べる(判例時報1482号P23)。

 右判断は極めて妥当であり、同判決に対する評釈においても

「本判決では、被告に対し『非公開の資料を含む必要な資料の提出』を要求している部分も注目される。判決は、原発の安全性の立証について電力会社側の積極的な協力を要求しているものと思われる。判決理由中の本件一号機で生じた不具合等を論じた箇所において、被告による具体的データ開示の不十分さが批判されている。さらに、判決理由第九章(本件原子力発電所の必要性)の末尾の箇所でも、被告側の情報提供の不十分さに言及されている。本判決の立証責任論は、主張・立証について事実上被告の責務を加重したに留まるが、安全性の主張・立証について被告電力会社の側に要請される部分は大きいと言えよう」と高く評価されている(ジュリスト重要判例行政法5)(甲36ノ1)。

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三 本件の立証責任

 これを、本件の争点について考えると、まず検査データが適正であるか否かについては、債権者らは具体的な根拠を示してデータが適正でなく規格外ペレットが混入していることを強く推認させる証拠を既に提出した。これに反証することは債務者側の責任である。債務者において、本件検査が適正になされたことを証明する確かな証拠を入手して提出されないかぎり、データに不正があったとの事実が確定されるべきである。

 第二に債権者らにおいて、規格外ペレットが混入する燃料を装荷して運転すれば、安全評価基準による安全評価はなされておらず、安全評価において事故が生じた場合にも放射能を閉じこめることができるという防護機能の保証がない可能性を立証すれば、債務者において、放射能が外部に排出されないこと、安全性は保証されていることを、相当の根拠を示し、かつ、非公開の資料を含む必要な資料を提出したうえで立証する必要があり、債務者において右立証を尽くさない場合には、放射能排出の危険性があることが事実上推定されるというべきである。

 第三に、債権者らにおいて科学的知見に基づく文献を基礎に被害の可能性までを立証すれば、債務者において、右可能性を否定する立証をなさないならば債権者らの被害の可能性の主張が認められなければならない。

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結論

 この仮処分事件の結審に当たって、裁判所に留意していただきたいことを簡単にまとめておきたい。

 

1 本件の第一の争点である本件MOX燃料のペレット外径寸法抜取検査における不正操作の有無について、債権者は十分な立証ができたと確信する。これに対して債務者は裁判所による釈明にも誠実に答えず、自ら可能な情報公開のための努力も怠っている。このような態度は大企業が裁判で負けるわけがないという傲慢な過信に基づくものであり、裁判所の権威にかけても許すべきではない。債務者は不正事実のないことの立証を放棄し、ベルゴ社の品質管理能力がBNFLよりも高度であること、不合格率が200分の1であること、砥石の調整によって正規分布から離れたことも、結局は何も立証できなかった。当裁判所で展開された論争の経過を端的に総括すれば、データの操作が行われていたことは完全に立証されている。

 

2 本件の第二の争点である不良ペレットを装荷した場合の危険性については、燃焼の進んだMOX燃料のPCMI破損の危険性について、決定的に実験データが不足していることは明らかである。日本原子力研究所自らがそのレポートの中でこのことをはっきりと認めている。不良ペレットが装荷された場合の安全性には深刻な疑問が提起されている。

 

3 このように、裁判の争点を事実に即して判断すれば債権者の勝訴は必然であると考える。とはいえ、これまで、我が国で行われた原子力裁判で住民が勝訴した例はなく、このような決定をはじめて行うことに裁判所が大きなプレッシャーを感じておられることは債権者らとしても、十分に理解できる。しかし、本件で、MOX燃料を差し止める決定を下すことをためらう必要はない理由を整理しておきたい。

 

4 まず、第一に本件で債権者が勝訴しても、MOX燃料の装荷が差し止められるだけであって、原発の運転が停止するわけではない。エネルギーの供給には何の支障も生じないのである。

 

5 また、本件の債権者は1900人に及んでいるが、日増しに福島県内の債権者が増加し、既に900人を超えている。これらの債権者の背後にはプルトニウム燃料による巨大な実験を不安な思いで見つめている福島県民をはじめとする国民の多くの声があるのである。債権者らはこの仮処分事件の期日ごとに審理の経過を県に正確に報告してきた。また、この裁判の途上で、新潟県刈羽村では、プルサーマル実施の是非を問う住民投票条例案が議会で可決される事態も起こっていた。高浜原発については、全くプルサーマル計画実施のめどが立たない状況である。

 

6 福島県民の不安は最近の佐藤栄佐久知事の発言に端的に示されている。県知事はプルサーマル計画について「原発は100年、1000年の問題。腰を落ち着けて判断させていただきたい。」と述べ、プルサーマル計画について無期限延期を示唆している。その背景には債務者東京電力が県民の理解が進むような努力をしていないと知事自らも判断していると考えられるのである。この知事発言によってプルサーマル計画は政治的に停止した状態にある。万一、裁判所がMOX燃料の差し止めを否定すれば、停止しているプルサーマル計画を裁判所が再開させたこととなる。

 

7 MOX燃料のPCMI破損の危険性について実験を継続している日本原子力研究所はかなりはっきりした言い方で、プルサーマル計画の拙速な実施に疑問を呈し、着実に実験を重ねて行くべきだと主張している。特殊法人である日本原子力研究所のこのような指摘は裁判所としても、重く受け止める必要があるのではないか。

 

8 また、原子力裁判において、被告が施設を自発的に撤去して終了した例として、旭化成のウラン濃縮研究所の例があるし、最近には高浜4号のMOX燃料差し止めの事件も決定前日に関西電力が自ら燃料の使用を放棄して、終了している。原告の実質的な勝訴事例はあるのである。原子力に対する国民の深刻な不安を指摘する判決も相次いでいる。

 

9 事実と良心に基づき、裁判所が確信を持って本件のMOX燃料の装荷を差し止める決定を下せば、知事をはじめとする福島県民、そして多くの日本国民は歓呼の声で決定を支持するであろう。データの開示とこれに基づくデータ改ざんのないことの確認とPCMI破損に関する実験事実の積み重ねを条件として、これらが満たされていないからとして差し止めを認めたとしても、誰も判決を批判することはできないであろう。そして、市民から乖離していると批判されてきた裁判所の権威を高め、司法に対する市民の信頼を回復することとなろう。

 

 最後に、債権者らは債務者に対する二度にわたる釈明にも示された貴裁判所の本件の審理に傾けた熱意と努力に心から敬意を表し、裁判所の英断を期待して、この最終準備書面のまとめとしたい。

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