東電福島MOX差止裁判・MOX燃料疑惑

裁判資料:準備書面(一)■09/18提出(10/06up)

HOME | プルサーマルMENU


第一 はじめに
第二 本件MOX燃料ペレットの抜取検査において不正な操作がなされたとの推認について
第三 不正ペレットを含んだ燃料の使用が重大事故を引き起こす可能性
第四 BNFL事件における通産省の対応の問題点
第五 通産省の合格証によって燃料の安全性は確認されるか


 

平成一二年(ヨ)第三三号
準備書面(一)

債権者  林加奈子外

債務者 東京電力株式会社

二〇〇〇年九月一八日

右債権者代理人 弁護士 海渡雄一 河合弘之 斉藤利幸

福島地方裁判所 第一民事部御中

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU

第一 はじめに

 本件における債務者の答弁書を債権者らは九月一四日の午後になって受領した。債権者の申立から一ヶ月以上の十分な準備期間があったこととなる。この答弁書の著しい特徴は、十分な準備時間があったにもかかわらず、債権者の申立理由についてはほとんど認否らしい認否を行わず、また、債権者の主張の中核となる不合格率がゼロとなる抜き取り検査結果は統計学的にあり得ないという主張に関しては、反論すら放棄していることである。

 少なくとも、関西電力は高浜MOX差止仮処分において、債務者と比較してより厳密な認否を行っていた。確かに関西電力も当初からデータ改ざんの点について反論を放棄していたのであるが、その主張と立証の態度ははるかにまじめであったと評価できる(甲第四七・四八号証)。

 債務者答弁書はその居丈高な語調とは裏腹に、認否と反論を避けていること自体で債務者の主張の弱さを端的に示している。裁判所は毅然と債務者に対して重要な争点にかんして認否と反論を求め、独立した判断を示すべきである。

 まず、本件における争点が何なのかについて債権者の考え方を示しておこう。債権者らの考える本件の争点は

@ 本件MOX燃料ペレットの抜取検査において不正な操作がなされたことが推認されるか否か

A 不正ペレットを含む燃料を使用することによる危険性

B 国の検査に合格したことによりMOX燃料の安全性は保証されたか

の三点に集約されるものと考える。以下、この争点に則して債務者の主張に対して反論を行うこととする。

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU

第二 本件MOX燃料ペレットの抜取検査において不正な操作がなされたとの推認について

一 不明確な債務者の反論内容

 東京電力の申立の理由に対する答弁は、何を争うのかが非常に分かりにくいものであるが、後半に「債権者らの主張は、要するに、関電用BNFL社製MOX燃料の検査データに不正があったことを論拠として、加工事業者を異にする債務者の本件MOX燃料にも同様の不正があると推定されるというものであるが…」(答弁書P6)と述べている。

我々の主張は、後述するように、BNFL社製MOX燃料の検査データに不正があったことを論拠としているわけではなく、またBNFL事件と全く同様の不正を問題にしているわけでもない。債権者の主張を故意にねじ曲げた上で反論するようなことは許されない。

本件MOX燃料の外径抜取検査において、不正な操作がなされたと推定されるのか否か、という点が本件の重要な争点であることは、我々も認めるところであり、以下この点について債務者の主張と立証の欠落した点を指摘し、反論を加えることとする。

 

二 不合格ゼロ問題について債権者は認否と反論を行え

1 債務者は答弁書において、本件MOX燃料の抜取検査において不合格ブレンダーがなかった事実を認めた。我々は、この事実は不正な操作なしにはありえないことを、一般的な統計理論でもって論証したが、債務者は答弁書において具体的な反論を避けている。これはむしろ反論できないことを取り繕っているとみなさざるを得ない。そうでないというのであれば、「逐一反論するまでもなく、誤りであることは明白」など居丈高な虚勢を張って逃げることなく、具体的に反論すべきである。「逐一反論」できなければ、不正があることを認めたと言える。

 

2 債務者は、我々の論証が「およそ「推認」の域を越えた憶測にすぎないことは多言を要しない」(答弁書P35)と決めつけ、「BNFL事件が本件と関連しないものであることは既にくり返し指摘したとおりであって、かかる憶測に依拠した債権者らの主張が、逐一反論するまでもなく、誤りであることは明白である。」(答弁書P35)と具体的に反論することなく切り捨てている。

 

3 まずもって申し述べておきたいことは、本件MOX燃料の品質管理の問題が、BNFL事件と密接に関連しており、この事件に照らしながら検討されるべきことは、事の経緯からしても全く当然であることである。そもそも本件MOX燃料についての債務者の再調査は、「関西電力高浜発電所四号機用の英国BNFL社製燃料にも、三号機用MOX燃料と同様に品質記録(ペレット外径)に改ざんの可能性があることが判明したため、通産省資源エネルギー庁は、債務者に対し、再度、念のため本件MOX燃料のデータに同様の問題がないかにつき確認するよう指示し…」(答弁書P16)とあるようにBNFL事件を受けてのものであるし、「本件MOX燃料の品質管理状況、特に関電用MOX燃料に係るBNFL社において行われたような品質管理記録(ペレット外径)の改ざんないし捏造の事実がないことを確認し…」(答弁書P17)とあるように、何より債務者自身がBNFL社で行われていたのと同様な不正があったかどうかを調査対象としている。「BNFL事件が本件と関連しないものである」との主張は、債務者の答弁書の中ですでに矛盾している。

 

4 次に、我々が不合格ゼロは不正なしにはありえないことを論証したことについて、債務者はこれが、BNFL事件と比較した憶測と決めつけ、まるで我々が、BNFL事件を機械的にベルゴ社に当てはめ、憶測だけで不正があったことを主張しているかのように歪曲して述べている。しかし、これは明らかな歪曲であり債権者の主張の曲解である。我々は論証にあたって、BNFL社で不正があったことを論拠にしているわけではない。債権者が論証に用いたのは、BNFL事件を契機に債務者や通産省、関西電力から知りえた、BNFL社とベルゴ社での抜取検査方法、BNFL社とベルゴ社での抜取検査の成績、といったBNFL事件そのものとは独立した客観的事実と、一般的な統計理論だけである。こうしたものから、論理の飛躍なしに、独断や偏見や「特異な発想」なしに科学的な論証を行ったのである。債務者も事実と論理だけに基づいて反論を行うべきであるし、これを放棄することは債権者の主張を認めたことを意味する。

 

5 まず我々は、申立書並びに甲第二号証において、本件MOX燃料の抜取検査において、ブレンダーが不合格となる確率が36%にも上ることを示した。この論証に用いたのは、東京電力から知りえたベルゴ社における抜取方法(1ブレンダー当たりのペレット数、1ブレンダー当たりの平均抜取個数、判定方法)と、BNFL社における抜取検査の成績(199ロット中7ロットが不合格)と一般的な統計理論である。ベルゴ社の質的な製造能力をBNFL社と同等とみなすと、ベルゴ社における検査で不合格となる確率が36%と算出されたのである。

 

6 次に、甲四五号証において、本件MOX燃料の抜取検査において全てのブレンダーが合格した、という事実が起こる確率を計算した。ここで論証に用いたのは、やはり東京電力から知りえたベルゴ社における抜取方法と、それに基づいて作成したブレンダーごとの抜取ペレット数の推定表、BNFL社での抜取検査の成績、そして一般的な統計理論である。結果は、ベルゴ社の質的な製造能力をBNFL社と同等とみなすと、70ブレンダーすべてが合格する確率はおよそ10兆分の1、仮に東京電力が設定したAQLと同等の不良率を想定し、ベルゴ社の質的な製造能力がBNFL社よりも優れており、不良率がBNFL社の約10分の1程度であるとみなしても、全てのブレンダーが合格する確率は約1%程度にすぎず、これが統計の常識では、何か不正な操作が行われない限り、起こりえないものであることを明らかした(甲第四五号証)。ベルゴ社の質的な製造能力が、BNFL社よりも桁違いに優れ、不良率が桁違いに少ない根拠は、全く示されていない。むしろ、申立書において述べたように、ベルゴ社の製造能力の方が劣っていることを示す指摘しかないのである。

 

7 債務者は、本件における立証責任について、「本件においては、債務者がその答弁書において積極的に反対事実を明確に主張し、これを立証している」と述べている。しかし、債務者はむしろこの主張も立証も放棄している。「不合格ゼロが不正なしには起こりえない」との我々の論証に対し、具体的な反論を一切行っていない。立証責任論だけからも債権者の主張が認められるべきことは明らかである。

 

三 不正計測の具体的形態について

1 我々は、具体的に起こりえた不正の形態として、不正計測の可能性を申立書に指摘した。債務者はこれについて、具体的根拠を欠く憶測である、と決めつけている(答弁書P28)が、そうではないことは、国会への答弁書(甲第一四号証ノ二)における次のような通産省自らの答弁によって裏付けられる。

 

2 すなわち、「通商産業省においては、東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)から、ベルギーのベルゴニュークリア社(以下「ベルゴ社」という。)においては、ご指摘のようにウラン・プルトニウム混合酸化物(以下「MOX」という。)燃料ペレットの位置をかえるなどしてその外径を不正に計測することを防止するための機械的なシステムは備わっていないと聞いている。」との記述を指摘するだけで十分であろう。この事実だけからでも、不正計測の可能性の指摘は、単なる憶測では決してない。

 

3 債務者は、「債権者らは、関西電力用MOX燃料燃料に係るBNFL社で、品質検査時に不正計測が行われたことをとりあげ、本件MOX燃料に係るベルゴ社においても「無理に合格させるために、測定そのもので不正が行われていたのではないかとの疑問を強く抱かざるを得ない」などという」とし、「本件MOX燃料とはなんら関係のないBNFL社における事情が、本件MOX燃料に係るペレット外径測定の「不正」を推認する合理的根拠となりえない」あるいは「債権者らの主張が、具体的根拠を欠く一方的な憶測にすぎない」などという。

 

4 既に述べたように、本件MOX燃料についての検討が、BNFL事件に照らしながら行われることは、事の経緯からして当然至極である。そもそも債務者の再調査は、BNFL事件を受けて通産省の指示によって行われたものであり、何よりも債務者自身が、BNFL事件で起こったのと同様の不正が、ベルゴ社でも起こっていたのかどうかを調査の対象とし、これを実施している。

 

5 具体的には、コンピュータに登録されたデータが、不正に変更される余地が無いかどうか(甲第五号証P20〜24・債務者答弁書P23)、データ上では、「コンピュータ検索により、いわゆるコピーアンドペースト(データの複製及び貼付)によるデータの複製のような不自然なデータがないこと」の確認を行っている。これは昨年12月の段階で、BNFL社製MOX燃料において発覚していた不正の形態に対応した調査である。しかし今年1月以降、NII・BNFL社の調査の過程で別の形態での不正が発覚しているが、それに対応した調査を債務者は行っていない。抜取検査に関するものに限っても、ペレットの上・中・下部に全く同じデータが不自然に多く見つかり、不正が認められたロットP783に対応してNIIが行った、上・中・下部の3点の一致度合いを確認する作業、今年3月に発覚した、BNFL社において、仕様範囲よりわずかに大きいペレットを合格させるために90度回転して再度測定をしていた不正、については、これに対応した調査がなされていない。我々は、債務者の再調査が、当初の趣旨に鑑みても不徹底であることを問題にしているのである。

 

6 我々は、以上の事実に加えて

@ 抜取検査では検査員が一人で測定し、測定値を確認した上で、足のスイッチを押して、データを送るシステムとなっていた

A 債務者が設定した抜取方法では、ペレットが1つでも基準外であれば、ブレンダー全部を不合格とするものであった

B 本件MOX燃料は、抜取検査で不合格となったブレンダーはひとつもなかったが、これは一般的統計理論からみて、不正な操作なしには起こりえないことである

C 上・中・下部の3点の測定位置を規定するものはない

D 不正な計測を防止する機械的なシステムはない

E 東京電力の立会検査での測定点は1点であり、立会の詳細な状況は明らかにされていない

 といった、債務者並びに通産省から示された事実を根拠として、不正計測の可能性を指摘しているのである。

 

四 データの開示の仕方について

1 我々は、申立書ならびに甲第四六号証において、公開されたデータには加工がされていることを指摘し、こうした加工がいかに不正を覆い隠すものであるかを、関西電力が公開したデータに、ベルゴ社と東京電力が行った同じ加工を施すことによって、明らかにした。その上で、ベルゴ社と東京電力が、データを開示せず、開示する際にはわざわざ手間暇かけて、不正があっても分からないように加工しているのは、元のデータを出せばBNFL事件での高浜原発4号機の二の舞になることをおそれてのこととしか考えられず、我々は、データに異常が実際にあって、それを隠すためにやっていると確信する。と主張した。

 

2 債務者はデータの開示ができない理由をベルゴ社の企業秘密であると説明している。しかし、製品の品質管理・安全性に関する情報が企業秘密になることは考えられない。仮に秘密性があるとしても、公衆の安全性に関わる情報であるから秘密であっても開示が認められるべき情報である。現に高浜四号機の場合は同様のデータが開示されていた。債務者・通産省はこのデータの開示のために全く努力していない。このような事実は前記のような推測をますます強めるものである。

 

3 ベルゴ社の品質保証(乙第七号証P36)は外注先の品質保証記録についても収集、保管するとなっている。自社はそのように情報提供を外注先に求めておきながら、日本の顧客である東京電力の品質保証記録の収集に応じないというのは、どう考えてもおかしい。ベルゴ社の企業秘密という説明は、データの開示をしないために債務者、通産省とベルゴ社が示し合わせて行っているものと見る以外にない。

 

五 AVI社は第三者機関ではない

 債務者が第三者機関として検証を依頼したAVI社は、そもそもはベルギー国立研究所(SCK/CEN)が発生母体である。ベルギー国立研究所は認証会社CORAPROを設立し、CORAPROは後に別の認証会社AVN社と合併するが、そのAVN社はAVI社の原子力部門である。一方でベルギー国立研究所(SCK/CEN)はベルゴニュークリア社に50%の出資をしており、債務者のMOX燃料の品質管理検査においても、プルトニウム富化度の検査に関わる検査(同位体組成の検査)の依頼を受けていた組織である。AVIはベルゴ社と関係があり、「第三者機関」とはとてもいえない。債務者はこうした事実を明らかにしていない。AVIがベルゴ社にとって「第三者機関」であるとはとても言えず、AVIによる認証をもって客観的なチェックを受けたとはとてもいえない。

 

六 製造部門における工程管理について

1 債務者はベルゴ社における本件MOX燃料ペレットの製造工程において、ペレットの研削後に、「全数についてレーザー計測装置によりモニタリング測定し、外径寸法の公差よりもさらに微小な製造管理値を設定して、それを超えた場合には、その分を微調整した研削機により研削するとともに、仕様値から逸脱した燃料ペレットをラインから自動的に除外する」ことをもって、「外径寸法仕様値に適合した高品質の燃料ペレットが製造されていた…」(答弁書P26)とし、あたかも製造工程の全数測定により、仕様値を逸脱した燃料は全てラインから除外されるかの主張を行っている。しかしこれが全く信用できないものであることを、いくつかの事実から指摘することができる。

 

2 BNFL社における関西電力高浜原発4号機用MOX燃料ペレットの抜取検査において、199ロット中7ロットが不合格であった事実が、公開された資料から明らかになった。この場合、検査における不合格率は約3・5%ということになる。これはBNFL事件が契機となって明らかになったことだが、BNFL社の抜取検査において、この程度の割合で不合格ロットが発生していたということは、不正の有無にはかかわりない事実と認められる。これとBNFL社が行っていた抜取方法から、抜取検査時、すなわち全数測定を終えたあとのペレット全体に、どのくらいの割合の不良ペレットを含んでいたかを示す不良率は、一般的な統計理論から約1・25%であることが求まる。(甲第二号証)これは次のことを意味する。すなわちBNFL社においてもベルゴ社と同様に製造工程の最後にレーザー計測装置(レーザーマイクロメーター)による全数計測がされ、ここで不良ペレットはすべてはねられることになっていたが、現実には、ここですべての不良ペレットを取り除くことはできず、約1・25%もの不良ペレットが、これをすり抜けて抜取検査に回されていたということである。

 

3 BNFL社のレーザー計測装置は約1・25%の不良ペレットを通過させていた、という事実がある中では、ベルゴ社のレーザー計測装置は、全ての不良ペレットを除外することができると、根拠も詳細な説明もなしに言われても、これをとうてい受け入れることはできない。

 それどころか、検査データのばらつき度合いを示す標準偏差を比較すると、逆にベルゴ社の方が、精度がよくない傾向にあることが指摘できる。甲第四六号証に示されているように、高浜原発4号機用MOX燃料のデータでは標準偏差4・2ミクロンに対し、本件MOX燃料のデータでは5ミクロンと、高浜4号機用よりも大きい、すなわちデータばらつき度合いが大きい。

 さらに、レーザー計測装置がどの桁まで測定していたのか、という意味での精度においても、ベルゴ社はBNFL社よりも劣っていた可能性がある。関西電力の中間報告によると、BNFL社のレーザー計測装置は、10000分の1ミリ単位まで測定することができ、それを四捨五入して1000分の1ミリ単位のデータとしていた。これに対し、ベルゴ社のレーザー計測装置がどの桁まで測定していたのかを東京電力は明らかにしないが、東京電力2月報告書で示されている値は、10・35mm±0・02mmと、わずか100分の1ミリ単位である。

 

4 また「外径寸法の公差よりもさらに微小な製造管理値を設定して、それを超えた場合には、その分を微調整した研削機により研削する」ことについて、これが完全に機能していないことは、本件ならびに柏崎刈羽3号機用MOX燃料の外径データに、仕様範囲ぎりぎりのペレットが含まれていることからも明らかである。

 

七 抜取検査におけるAQLの設定について

1 東京電力の答弁書には、本件MOX燃料で行われた抜取検査について、「…(〇、一判定)を採用しているのであり、これは合格品質水準…〇・一五パーセント以下に相当する高精度のものである」(答弁書P28)とあり、国会への答弁書には「通商産業省においては、東京電力から、MOX燃料ペレットの抜取検査については、ベルゴ社との間で、…いわゆるゼロイチ判定を行うことを協議の上決めているところ、MIL規格の水準Tのゆるい検査の一回抜取方式においては、三十二個を抜き取ってゼロイチ判定を行った場合に対応するAQL(合格品質水準)が〇・一五%とされていることから、東電報告書において、「この抜取検査はAQL〇・一五%に相当」すると記載していると聞いている。」とある。ここから、東京電力がベルゴ社と協議をして決めているのは、いわゆるゼロイチ判定を行うことだけで、AQL0・15%というのは、これを規格に照らした場合に「相当する」というだけであることがわかる。

 

2 さらに東京電力2月報告書には「当社では、仕様をはずれるペレットが1つでもあった場合には、当該のブレンダーを不合格にする(0,1)判定を採用している。この抜取検査はAQL(合格品質水準)0・15%に相当し、ベルゴニュークリア社に関する製造・検査の経験を考慮し、妥当な水準として設定した」(甲第五号証P6)とある。債務者はAQLが0・15%であることをもって、本件MOX燃料が高精度のものであると主張する。しかし、ただAQLが低いだけでは高精度ということにはならない。問題は、このAQL0・15%を債務者が、ベルゴニュークリア社に関するどのような「製造・検査の経験」すなわち、製造と検査の実績値と管理能力を考慮して、これを妥当な水準とみなしたかを具体的な根拠に基づいて示すことである。すなわち現実の不良率のデータを示すべきである。

 

3 BNFL事件においては、この、AQLの設定と現実の不良率の関係がまさに大問題となった。BNFL社における関西電力高浜原発4号機用MOX燃料ペレットの抜取検査において、前述のように、検査における不合格率は約3・5%、ここからペレット全体の不良率は約1・25%であった。一方でBNFL社での抜取検査において関西電力が設定していたAQLは、債務者答弁書にもあるように1・0%であった。全数計測ですべての不良ペレットを取り除くことはできず、それどころか、関西電力が設定したAQLの1.0%を超える約1・25%もの不良ペレットが、全数計測をすり抜けて抜取検査に回されていた。このことは、BNFL事件の経過で、高浜原発4号機用MOX燃料の抜取検査における不正が明確になってからも、全数計測により品質は保証されるとして、あくまでもMOX燃料の使用を追及しようとした関西電力と通産省がいかに誤っていたかを示す事実である。高浜原発MOX燃料使用差止仮処分の過程において、抜取検査における不合格率がどのような意味を持ったかについては、甲第二号証に展開されている。

 

4 この事実に照らして本件MOX燃料の抜取検査を検討する。東京電力によると、抜取検査はAQL0・15%に相当するレベルのものがなされ、その結果、仕様範囲を外れるペレットがひとつもなく、不合格ブレンダーはゼロであった。もし東京電力の言うようにこの検査が、なんらの不正が無く行われたのであれば、製造工程を終えた段階でのペレット全体の不良率は、AQLをさらに大きく下回るレベルであったことになる。そうでないと不合格ブレンダーゼロにはなりえない。この場合には、ベルゴ社の不良率はBNFL社の100分の1以下ということになり、ベルゴ社の製造能力が、BNFL社に比べて桁違いに優秀であることになる。債務者は答弁書のここかしこで、本件MOX燃料が「高品質」であると、くり返し述べている。しかしこれをBNFL社の製造能力と比較して論じているのは、1箇所だけで、しかも、1973年に操業開始したベルゴ社に対し「関電用MOX燃料を加工したBNFL社は、1993年に操業を開始し、しかもその年間製造能力はベルゴ社の四分の一以下で、製造実績に至っては桁違いの差があり、両者の実績の差異は顕著である。」(債務者答弁書P20)というように、製品を作った量が多い、という意味の製造能力しか問題にしていない。むしろこれらの事実はベルゴ社のラインの方が経過年数が長く技術的にも陳腐化していることを示している。製造時の不良率に現れるような質的な意味での製造能力が優れていることの根拠は全く示されていないのである。

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU

第三 不正ペレットを含んだ燃料の使用が重大事故を引き起こす可能性

一 はじめに

 債務者はペレット径が過大でも危険性がないとして乙第九、乙第一〇号証を提出してこれに基づく主張を展開している。この乙九号証の解析は債務者が提出している乙第一〇号証の評価指針の基礎となっている。しかしこれらの解析は実験ではなく、単なる計算に過ぎない。また、新しい燃料が前提となっており、照射済の実際の燃料の状態に基づく解析にすらなっていない。債権者が提出した甲四四号証は照射済の燃料を前提として解析を行ったものであり、乙第一〇号証に比べて厳しい内容となっている。

 

二 乙第一〇号証の内容

 債務者は、「ペレット外径が過大であることにつき右のような危険を生ずる可能性がないことは、一パーセント塑性歪相当出力(破損の目安として保守的に用いられている値)が公差を大きく想定してもほとんど変化しないことによって確認されて」いるとし、東京電力柏崎刈羽原発3号炉でのMOX燃料使用に伴う安全審査を行った原子力安全委員会第97専門部会に通産省が提出した資料を証拠としている(乙第一〇号証)。この資料では、ペレットの外径が仕様値の範囲である10・35mm±0・02mmのうち、±0・02mmのところ(公差という)が仕様を超えた場合、具体的には公差が仕様の2倍である10・35mm±0・04mmの場合と、約10倍大きい10・35mm±0・19mmの場合で1%塑性歪が計算され、これが直ちに燃料破損につながるものではないと結論している。

 

三 乙第一〇号証はBNFL事件を受けて不正燃料を使うために作られた

 この資料は通産省が外部機関(原子力発電技術機構)にわざわざ委託して作らせたものであるが、まずもって通産省がこのような資料を作成した意図に大きな問題があることを指摘しておきたい。この資料は、日付が平成一二年一月であり、福島第一原発3号炉の安全審査ではこの計算がされていないことからも明らかなように、BNFL事件を受けて作成されたものである。高浜原発についても、同様な計算がされ、今年6月14日にBNFL検討委員会の資料として、通産省が配布している(甲第五二号証もこれを認めている)。

通産省はBNFL事件において、昨年9月の段階で既にNIIが高浜4号機用MOX燃料データについて、不正の疑いを持っていることを知り、昨年10月には原子力発電技術顧問より、高浜4号機用データに、統計的に不正の疑義があるとの指摘を受けていた。しかし、あくまでプルサーマルの推進を優先させるために、こうした疑義を伏せる一方で、不正があっても燃料を使えるようにするために、不正のある抜取検査データにかわって全数計測データでもって、国の検査が継続できるように手はずを整えていた。そして「不正があっても安全性には問題はない」と主張するためにこの資料を作らせたのである。不正を容認し、不正が明確となった燃料を使うための道筋を自ら整えるという行為はとても信じがたい。

 

四 電気事業審議会でも取り上げられなかったレポート

通産省は、原子力規制当局として、基準を遵守させ、国民の安全を守るべき立場にある。その通産省がこの資料の作成で行っていることは、自ら定め、電気事業者に遵守することを迫らなければならないはずの基準をあっさりと捨て、許容範囲を広げ、不正を容認し、安全余裕を切り縮めるものである。

 通産省は、BNFL事件の再発防止策を議論するために、電気事業審議会にもうけたBNFL検討委員会の第3回(今年6月18日)の委員会に同じ資料を提出し、説明を行ったが、「ルール違反はアウト」にすべき、という意見で固まっていた委員会の中では、議論の対象にすらならなかった。

 

五 新しい燃料であることが前提

 第97部会に提出した資料(乙第一〇号証)の結論は、「ペレット直径のわずかな増加が直ちに燃料損傷につながるものではない」というものである。しかしこれは計算上の話にすぎず、しかも新品の燃料であることが前提となっている。ところが、いままさに問題になっているのは、燃焼の進んだ燃料(とりわけMOX燃料)の健全性についてである。

 近年の反応度事故模擬実験の結果によって、燃焼の進んだ燃料の場合、従来想定されていた燃料エンタルピのレベルよりもずっと低いレベルで、燃料がコナゴナになって破損するという事実が明らかになってきた(注:燃料エンタルピとは燃料の保有熱量のことで、1エンタルピとは燃料1g当たり1calの熱量をいう)。そこで原子力安全委員会の原子炉安全基準専門部会は平成10年2月に「発電用軽水型原子炉施設の反応度投入事象における燃焼の進んだ燃料の取扱いについて」(案)という報告書案を公表し、それは同年四月に報告書として確定された(以下でRIE報告書として引用:甲第四四号証)。その中の第1図(P12)で近年の新たな傾向をもつ実験結果が総括され、それに基づいて新たな事実上の基準が設定されている。

 

六 燃焼が進んだときのPCMI破損の危険性

 そのRIE報告書のP1〜2(甲第四四号証P962)でPCMI破損という型の破損の重要性が次のように記述されている。「燃料の燃焼が進むと、燃料被覆管(以下「被覆管」という。)は中性子照射、酸化及び水素吸収により、延性が低下するとともに、ペレットは核分裂生成ガスの蓄積等によって膨れ、さらに出力急上昇時には膨れ量が増加する可能性がある。このため、燃焼の進んだ燃料では、反応度投入事象の比較的初期の被覆管温度が有意に上昇する以前において、ペレットの急激な膨張に被覆管が耐えられず、割れが生じて燃料が破損することが考えられる。事実、燃焼の進んだ燃料を用いた米国のSPERT−CDC実験及びPBF実験、我が国のNSRR実験並びに仏国のCABRI実験においてこの型の燃料破損が観察されており、これは一種のペレット/被覆管機械的相互作用(Pellet/Cladding Mechanical Interaction)を原因とする破損(以下「PCMI破損」という。)と認められる」。

 

七 PCMI破損を考慮した新基準

 この後、事実上の新たな基準の内容が次のように定式化されている。「このためPCMI破損を生ずる燃料エンタルピのしきい値(以下、PCMI破損しきい値という。)を考慮し、運転の異常な過度変化にあっては燃料エンタルピがこのしきい値を超えないこと、事故にあってはこのしきい値を超えてPCMI破損を生じ、これに起因する機械的エネルギやペレットの微細化が発生しても、原子炉の停止能力及び冷却性並びに原子炉圧力容器の健全性を損なわないことを確認することとした」。ここで導入されたPCMI破損しきい値は、第1図(甲第四四号証P970)に総括的に記入されている。結局、燃焼の進んだ燃料は意外とたやすくコナゴナに破損するという新たな実験結果を総括して、事実上の新たな判断基準が平成10年4月に発効したのである。

 

八 燃料外径と密接に関係するPCMI破損

 このように、いま新たに最も問題になっているのはPCMI破損というタイプの破損であり、この破損は通常運転中のペレットと被覆管の存在条件に依存することは明らかであり、とりわけ被覆管が通常運転中に酸化、水素脆化を起こして弱っているためにたやすく破壊されるのである。そしてこの酸化、水素脆化は被覆管の温度に強く関係し、その温度は隙間の状態に関係している。フランスのカブリ炉で行われた実験に使われた燃料は、原子炉で通常運転した燃料を取り出したものであったからこそ、上記の引用文にあるようにPCMI破損のタイプに入るのである。

 

九 乙第一〇号証はPCMI破損を考慮していない

 ところが、乙第一〇号証の前提は新品の燃料(未照射燃料)でありしかも計算値にすぎない。この場合は被覆管も新品であり容易には破壊されにくい。パルス出力によって燃料内で瞬間的に発生するエネルギー(エンタルピ)によって燃料が瞬時に膨張するが、どこまでの発生エネルギーに被覆管が耐えられるかどうかというその瞬間だけが問題になる。結局この計算では、PCMI破損がペレット外径ひいては隙間(ギャップ)に関係しないという証明にはまったくならない。PCMI破損は、この実験のように瞬時の条件で決まるのではなく、長期にわたる通常運転中の燃料と被覆管の劣化を反映して決まるのであり、そこに隙間の状態も、したがってペレット外径も強く関与するのである。

 

一〇 「浸水燃料」について

 RIE報告書では、浸水燃料の破裂に対する評価を、炉内の全装荷燃料棒中に1%存在するという条件で行っている(甲第四四号証P4−4)。すなわち、これを超える割合で浸水燃料が生じる場合は、安全審査の想定を超える事態となる。関西電力は、こうした損傷燃料1%以下という安全審査上の要求も考慮に入れて、抜取検査においてAQL1%を設定している(甲第四七号証P83〜85)。本件MOX燃料の場合、検査における不正により多くのペレットに欠陥がある恐れがあり、安全審査で想定されている割合以上に浸水燃料が生じる可能性を否定できない。

 

一一 燃料外径の基準違反は重大事故の原因となりうる

 もし、燃料ペレットの外径データが不確かな場合、ペレット−被覆管機械的相互作用(PCMI)が想定より異なったものとなりさらに燃料も被覆管も劣化するおそれが生じる。そうなると、燃料棒の破損率1%を相当に超えて燃料ペレットと燃料棒の破壊が進むおそれが生じる。その場合でも、炉心の冷却性が確保されるのか、何も確認作業がなされていないのである。

 もし冷却水の流路閉塞が起これば、炉心の冷却性が損なわれ、炉心溶融に至る可能性が生じる。その場合、放射能が大量に施設外に放出されることは免れない。

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU

第四 BNFL事件における通産省の対応の問題点

一 通産省はNIIに「不正なし」のお墨付きを要請

1 通産省は9月14日に関西電力から高浜3号機での不正についての連絡を受け、高浜4号機用燃料について前日に関西電力からの申請を受理していた輸入燃料体検査の手続きを止める措置をとる一方で、9月20日から23日にかけて英国に職員を派遣して、関西電力の調査状況の確認にあたった。通産省は原子力規制当局として、不正に対しては毅然たる態度で臨み、高浜4号機用燃料についても不正の疑義をもって徹底した調査にあたってしかるべきであった。ところが通産省は、関西電力と同じく高浜4号機用MOX燃料データにははじめから「不正はない」と決めつけ、燃料装荷のスケジュールを優先し、英原子力施設検査局(NII)に対し、不正はないことを早急に認めるように要請していた。

 

2 9月20日と21日に通産省とNIIとの間で交わされていた書簡が今年1月17日なってようやく公開されている。9月20日付けの日本からNII担当官に向けての書簡には、日本に向かっている燃料には改ざんの影響はないとの情報が欲しいこと、そして回答を9月23日までに欲しいことが記されている。高浜4号機用MOX燃料の受け入れを予定通り行うために、高浜4号機については不正がないという英規制当局の「お墨付」を至急にとろうとしていた。返答の期限の23日には2日間しかなく、こんな短期間にNIIが不正の有無について調査するのは不可能である。通産省がNIIに対し、調査もなしに、政治的に「不正はない」との判断を表明するようせまるものであった。

 

3 これに対しNIIは9月21日に日本政府に当てた書簡で、9月20日に通産省職員2名と面会し、そこでNIIの調査の背景について説明していること、調査には数週間かかること、そして「"通常ではない(unusual)"結果を示した一つのMOX燃料ペレットのロットが福井県に現在向かっている燃料集合体2体の製造に使用された」と記し、高浜4号機用MOX燃料について不正の疑義を持っていることを伝えている。「お墨付き」を得ようとした通産省は逆にNIIが不正の疑義を抱いていることを知らされた。

 しかし通産省はこのことをひた隠しにし、関西電力の9月24日付中間報告については、公表された当日にそれを妥当なものとするとの見解を示した。不正はないと決めつけていた通産省は、NIIの疑義に接しても関西電力やBNFL社の判断を優先した。

不正の疑義について、それを徹底して調査する気はなかったことはNIIに対し、不正の疑義を抱いているロットの番号を問い合わせることすらしていないことに表われている。後に通産省は、関西電力が、NIIが疑義を抱いているロット番号についての情報を、通産省に伝えなかったことを厳重注意しているが、通産省にその気があれば、NIIに不正の疑義があるロット番号を問い合わせる機会はいくらでもあった。NIIの疑義については関西電力に知らせることもなかった。

 

二 通産省は不正を容認し全数測定に逃げようとした

1 通産省は、10月20日に関西電力が得たロットP783についての疑義の情報を通産省に報告しなかったことについて後に厳重注意をしている。しかしこうした情報がなくとも、高浜4号機用MOX燃料のデータ不正の疑義を確信する材料は通産省の側にも十分にあった。

 BNFL検討委員会報告には「通商産業省が原子力発電技術顧問の意見を聴取したところ、ロットP824の品質管理データについては統計的に不正を疑うべきであること、また、全数測定データを検査の判断に用いるのであれば不良ペレットの選別機能の信頼性等について確認が必要であること等の指摘がなされた。」とある。意見を聴取したのは昨年10月下旬で、ここに登場する原子力発電技術顧問というのは、BNFL検討委員会の委員の一人でもある。この委員はBNFL検討委員会の席で、不正を疑うべきことがはっきりした時点で、許可をしないように助言すべきであり、全数測定データで安全確認ができればよいという判断は間違っていた旨の反省の弁を述べている。

 

2 通産省は、専門家の助言と両市民団体の分析の検討からこの時点で、少なくともロットP824については、不正の疑義を確信していたと推測される。本来ならばこの時点で、輸入燃料体検査を不合格とすべきであった。ところがそれをせずに、疑義のある品質管理データを使う代わりに全数測定データを用いて、輸入燃料体検査を継続するという、安全審査の手続きを全く無視した無謀なやり方を追求した。

 

3 通産省は、11月1日の関西電力最終報告を即日に妥当なものである、とし、翌日には福井県に説明に出向いている。関西電力が最終報告を出すにあたって、通産省は全数測定についての信頼性に関する資料をつけるよう注文を出していた。これで通産省は「全数測定データをもちいて安全性の保証をする」との立場に立ち、不正が確定した場合の逃げ道を作ろうとしたわけだが、この立場は「不正はない」という最終報告書の結論と完全に矛盾していた。

 こののち11月8日に通産省は書簡により、NIIの統計分析結果の通知を受け、そこで高浜4号機用のMOX燃料についてはやはり疑義のあるデータのペレットを含む燃料体が2体あるとの指摘を受けていた。

 

4 通産省は相反する二面的な対応をとっていたことになる。表向きは、関西電力の最終報告を妥当なものと認め、高浜4号機用MOX燃料には「データの不正はない」としていた。しかし裏では、データの不正の疑義について、専門家やNIIの統計的分析結果からこれを確信し、専門家やNIIの指摘についてはそれをひた隠しにする一方で「抜取検査に不正があっても全数測定データによって安全性は保証される」との論を打ちたて、最終報告書に全数測定についてのデータを添付させ、不正が明らかになった際には全数測定データを用いて輸入燃料体検査を行えるよう手はずを整えていた。通産省は、年内には装荷できるスケジュールで輸入燃料体検査を再開し、12月2日〜8日には高浜発電所での現地調査に入っている。

 

三 以上の二点をもってしても通産省の合格処分が燃料の安全性を保証するものではないことは、明らかである。

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU

第五 通産省の合格証によって燃料の安全性は確認されるか

一 通産省は何を根拠に合格証を出したか

1 債務者は、安全審査の手続き上問題はなく、通産省による合格証も受けたことを強調する。しかしすべては検査に不正が無いことが前提となっており、一方、通産省の検査は、債務者の再調査の枠内でおこなわれており、不正の有無をデータにさかのぼって分析、確認する作業を行っていない。よって、債務者は、合格証を受けたからといって、不正がなく、安全上全く問題が無いと主張することはできない。

 

2 通産省は、本件MOX燃料の品質について独自でのデータ確認・分析を行っていない。通産省が輸入燃料体検査の合格証を出すにあたって、確認・調査したものは、すべて債務者の再調査の枠内であり、品質管理は電気事業者まかせの実態は変わっておらず、通産省による検査の合格証により、品質が保証されるというものではない。

 

3 まず、輸入燃料体検査申請書類と添付資料であるが、国会への答弁書に「福島三号機用の輸入燃料体検査申請書には、燃料の種類、初期濃縮度等が記載されており、その添付書類には、燃料体の耐熱性、耐放射線性、耐腐しょく性その他の性能に関する説明書等があるが、これらの中には御指摘のようなMOX燃料ペレットの抜取検査の結果の元データは含まれていない。」(甲第一四号証ノ二P19)とあるように、検査データは含まれていない。

 

4 次に東京電力2月報告書(甲第五号証)であるが、これで品質が保証されないことは、申立書で指摘している通りである。

 

5 次に通産省は、現地調査3月14日から17日にかけて、専門家を含めて3名でベルギーに現地調査に赴いている。しかし、ここでもデータの調査、確認は行っていない。これは、この調査の後に出された国会への答弁書(甲第一四号証)の返答が東京電力からの伝聞であり、さらに「通商産業省においては、御指摘のブレンダーごとの抜取データは、調査、確認していない」(甲第一四号証ノ二P17)という記述があることからも明らかである。

 

6 さらに、東京電力が8月1日に通産省に提出した説明書(乙第七号証)は、東京電力2月報告書の書式を変えただけで、特に新しいものはない。

債務者が株主総会で明らかにしたところによると、ベルゴ社は通産省に対してはデータの開示に応じると述べている。しかし、通産省は要求していないし現実の元データに基づく解析ができるにもかかわらず、これを行っていない。

 

二 輸入燃料体検査は新体制でもデータ分析せず

1 BNFL事件をうけて、通産省は電気事業審議会にBNFL検討委員会を設け、委員会は6月22日に、不正の再発防止策を含めた報告をとりまとめている。この報告を受けた通産省は今年7月14日に通産省令を改定し、輸入燃料体検査体制を改めた。BNFL事件を反省し、その上で制度変更を行うのであれば、通産省はまず、BNFL事件において不正があったことを見逃し、さらに不正が明らかになってもその燃料を強引に使おうとした態度を反省した上で、今後は、電気事業者並びに製造者に対し情報公開を促した上で、検査結果のデータを分析することにより不正の有無を確認すること、そしてこれを製造者、電気事業者にまかせるのではなく、規制当局として独自に行うこと、が要求されたはずである。しかし新制度においても、電気事業者まかせの状態に変化はなく、不正の有無をデータ上で確認することも盛り込まれなかった。

 

2 不正に対する対応では、BNFL検討委員会は、報告書に「不正の疑い発生後の規制当局の対応」(甲第一六号証P24)に「万一、不正の疑い(以下「疑義」という)が発生した場合における適切な対応をあらかじめ検討しておくべき」(同右)と、不正の「疑い」の段階で対応すべきだとしている。報告書の原案は「不正発生後」であったが、これが委員会の議論によって「不正の疑い発生後」となった経緯がある。本件MOX燃料はまさにこの不正の疑いが発生しているものとみなすべきである。その際には、「電気事業者が徹底した調査を行うべき」であり、通産省は「電気事業者が十分な調査能力をもって、適切かつ厳正に調査を行っているかについて、毅然とした姿勢で確認すべきであり、また電気事業者から情報提供が確実に行われるよう適切な措置を講じるべき」とある。

 

3 通産省は、本件MOX燃料の品質保証について、本来ならば新制度の対象外であるが、改定の趣旨をふまえた確認をする、としている。しかし、右記のような「不正の疑いが発生した場合」の対応を取らず、債務者が追加で提出した品質保証に関する説明書も東京電力2月報告書の書式を変えた程度のものに過ぎない。

 

三 結論

 結論として、通産省による合格処分は本件MOX燃料の安全性を保証するものとはいえない。このことは通産省の高浜四号機における安全審査の実績、通産省が行った手続、確認した資料と確認方法から裏付けられる。債務者は自ら燃料の安全性について、債権者の提起した問題点に答える主張を立証を行うしかないのである。そしてこれができなければ裁判所は、債権者の主張を真実と認めた判決を下すべきなのである。

PAGETOP | HOME | プルサーマルMENU