プルサーマル・MOX燃料疑惑

東電2月報告書の問題点(04/06up)

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●製造されたペレットの形状の健全性に対する疑問

 3月になってBNFL社で、ペレット製造と品質管理における新たな2つの不正が発覚した。一つは品質管理検査において、外径の計測時に仕様値をわずかに超えるものがある場合に、これを90度回転させて計測し直していたこと、。もう一つは、「植木鉢型」の形状をしたペレットを合格させるために、全数計測の測定点を操作し、中央部付近だけで計測するよう、測定装置を操作していたことである。これは、正常なペレットが製造できずにそれを無理に合格させていたというもので、これまで発覚していた不正とは質的に異なる。前者はペレットの断面が真円ではなく楕円であることを示し、後者と合わせてペレットの形状に問題があることを示すものである。

 東電は3月24日に行われた市民との交渉の席で、ベルゴ社で行われていた東電柏崎刈羽原発向けのペレットについて、品質管理検査における外径検査で、不合格となったブレンダーが存在したことを明らかにした。東電によれば、このペレットは製造工程の全数計測の際には合格していた。なぜ全数計測を通過したペレットが不合格となったか、については全数計測装置に問題があったこと以外に、ペレットの形状に問題があった可能性を示唆する。関電用ペレットにあったように、断面が楕円であったり、全体の形状が「植木鉢型」であったりすると、測定点の取り方によって異なる測定値が得られる。

 東電の今回の再確認作業では、この問題についての調査はなされていない。製造工程については一般的な工程の流れを確認しただけで、全数計測記録に基づいて作成される「レーザー計測装置認定報告書」も、東電は、確認ができる立場にありながらこれを行っていない。東電の今回の再確認作業が、関電用ペレットを製造したBNFL社での不正を受けてのものである以上、こうした問題についても調査すべきである。ペレットの形状異常は安全上の問題である。「レーザー計測装置認定報告書」を含め、製造時の記録を確認し、公開しなければ、この疑問を晴らすことはできない。

 

●東電の立会い検査では計測時の不正の疑惑は晴れない

 BNFL社での新たな2つの不正の発覚は、ベルゴ社でも、品質管理検査の計測時に起こりうる不正の疑惑を浮上させある。東電交渉での証言によれば、ベルゴ社では品質管理の外径計測は手動で、検査員はペレットをピンセットで測定装置に運び、測定値を確認した上で足のスイッチでデータを送っていた。そこに検査員の意思が介入する余地があることは東電も認め、ペレットを回転させ、移動させながら、合格するまで測る、あるいは「植木鉢型」のペレットを合格させるために、中央付近だけで3点を測定する、といった不正が行われた可能性は否定できない。

 東電は、この疑惑の調査については「必要なし」としており、その根拠として、ベルゴ社全体の品質管理の体制に問題がないことと、東電の立会い検査での再抜き取り検査のデータと、同じブレンダーのベルゴニュークリア社のデータがほぼ一致することを挙げた。しかし、前者は一般的な話であるし、後者についても、

・東電によると、東電の立会い検査時の測定点は1点以上、となっており、1点の場合、例えば中央部で3点計測といった不正が行われていたとき、確認ができない。

・東電の再抜取検査がベルゴ社の検査官にとって抜き打ちであったかどうかの保証がない。

といった問題がある。

 測定時の疑惑についてもきちんと調査すべきである。測定方法をどのように行っていたのか、90度回転時や、上中下3点の測定値の比較検討を含めたデータの詳細な分析と、その公表がなければ、疑問を払拭することはできない。

 

●ペレット外径ヒストグラムの「虚」

 東電2月報告書には、ロットごとの外径測定データの「ヒストグラム」が付録にあり、東電の再確認結果には「ヒストグラムの確認をした」旨がある。しかしこれは、本来の、統計的分析し、分布の形状を検討する際に作成されるはずのものとしてのヒストグラムではない。東電2月報告書ないし3月24日の交渉時の証言から以下のことが明確になっている。

・付録のデータは、ロットごとのものだが、外径検査の抜取の単位はブレンダーである。ロットはいくつかのブレンダーを含み、ロットごとのデータではそれが足し合わされている。

・外径の測定精度は1000分の1ミリメートルである。しかし、付録の「ヒストグラム」は1000分の4ミリメートル単位にまとめてあり、分布形状の分析が困難になるように作成されている。

・ロットごとに足し合わされたデータでは、統計的な分析、分布の形状の分析などはできず、これが計測データが仕様値内に収まっていることを確認できるだけのものであることは、交渉時に東電自身が認めている。

・東電が、今回の再確認結果において確認したとしている「ヒストグラム」は、東電2月報告書の付録にある「ヒストグラム」と同じものである。

 なぜデータをロットごとにまとめ、統計的な分析が困難になるようにしたのか、という問に対して、東電は「全体のデータだけでは満足してもらえないと考え、ベルゴニュークリア社と協議して、もう少し細かいデータをということで出した」と述べている。しかし統計的な分析ができなければ出す意味がない。

 問題はそれだけではない。統計的分析ができないと知りながら、これを「ヒストグラム」の形態にし、「ヒストグラムを確認した」と振舞っていることの問題である。東電の証言によれば、これは本来の意味でのヒストグラムではない。しかし東電は「ヒストグラムっぽいもの」を出せば「満足してもらえる」と考えている。この発想は、国民ならびに通産省を、愚弄し、騙そうとするものである。さらに、ベルゴ社が作成したこの「ヒストグラム」だけでデータの確認を済ませている東電の調査の姿勢も大問題である。

 抜取の単位であるブレンダーごとの、測定精度の1000分の1ミリメートル単位での測定データならびに統計的諸値のデータを公開し、不正がなかったかどうかを統計的分析によっても確認するよう求める。

 

●規格に従わない抜取率

 品質管理検査における抜取率については、東電2月報告書には、「MIL−STD−105D(JISZ9015に相当)に基づいて設定した」との記述がある。しかし、実際にはこの規格とは異なる抜取率で検査が行われていたことが明らかになっている。

 一つは、規格では32個となる抜取数を実際には、各号機の最初の3ブレンダーについては80個以上、その他は32個以上とし、ブレンダーによって、何種類かの抜取数を用いていたことである。東電は「多い分には問題ない」としているが、なぜ抜取数をブレンダーによって変えるのか、誰が何を基準にそれぞれのブレンダーについての抜取数を決めていたのかについては一切明らかになっていない。抜取数が変動することによって生じる不正の余地についても検討されていない。ロットごとのブレンダー数、ブレンダーごとの抜取ペレット数を明らかにするとともに、抜取数についての記載のある「検査指示書」が公開されるべきである。

 もう一つは、始めから「ゆるい検査」が適用されていることである。規格に従えば、検査のはじめは「なみ検査」で、これの合格が続くとはじめて「ゆるい検査」に移行できる。東電用ペレットの検査のやり方では、「なみ検査」では80個の抜き取り、「ゆるい検査」では32個の抜取である。JISによると、「ゆるい検査」に移行するためには、少なくとも15ブレンダーが連続して合格する必要があり、多めの抜き取りを最初の3ブレンダーでのみ行ったベルゴ社の場合、明らかにこれに従っていない。これは明らかに、規格よりも甘い基準である。東電2月報告書には、ベルゴ社での抜取率と判定方法がAQL0.15%に相当するとあるが、これは規格に従った場合の数値であり、誤りである。なぜ規格に従わなかったのか、契約時にどのような議論をしてこれを決めたのか、契約そのものはどうなっていたのか、確認し公表されるべきである。

 またこの件について東電は、ベルゴ社の製造実績から「ゆるい検査」でよいと判断した、と述べている。しかしその実績というのは、25年の経験があって、7年前に公表された論文に掲載された漏えい件数が少ないというだけのものであり、製造能力についての分析は一切ない。

 

●不合格ブレンダーの扱い

 3月24日の東電交渉では、柏崎刈羽原発用ブレンダーで不合格があったことが明らかになった上にその不合格ブレンダーの行方も明らかになった。不合格ブレンダーに含まれていたペレットは再び全数計測にかけられた後、再検査が許され、見事合格していた。

 不合格ブレンダーは、全数計測を逃れた不良ペレットが品質管理検査で発見されたことを意味し、全数計測に問題があったことを示す。にもかかわらずその全数計測にかけ直しただけで再検査を許すことに問題はないのか。

 またBNFL社では不合格となったペレットは全数計測のあと、再検査される際には、通常の「なみ検査」ではなく「きつい検査」にしている。ベルゴ社の場合、通常が「ゆるい検査」で、再検査に際しては「なみ検査」の抜取数にした可能性はあるが、規格に従ってこれを少なくとも連続15回繰り返した形跡はない。

 さらに、契約がどうなっていたのかも問題である。というのは、東電が、製造工程の最後に全数計測が行われていたことを知るのは今年になってからであり、契約時には明らかに製造工程での計測は抜き取りであることが前提だったからである。抜き取り検査を繰り返せばどんなに不良品が多くともいつかは合格するのは自明である。

 

●全数計測記録は上書きして消去の「虚」

 東電交渉で東電は、全数記録は社内文書の基礎資料となっていることを明言は避けながらも証言した。通産省はこれを認識していなかったのか。あるいは知っていて「虚」をいったのか。

 

●「第三者機関」AVIとベルゴ社の密接な関係

 東電が第三者機関として検証を依頼したAVI社はその発生母体が、ベルゴニュークリア社に50%の出資をし、東電のMOX燃料の品質管理検査においても、プルトニウム富化度の検査に関わる検査(同位体組成の検査)を依頼しているベルギー国立研究所(SCK/CEN)であった。AVIはベルゴ社と関係があり、「第三者機関」とはとてもいえないのではないか。東電はこのことをなぜ報告書で明らかにせずに隠すのか。

 

●測定数があまりにすくないプルトニウムに関する検査

 プルトニウム富化度については、1F3が10データ、KK3が12データとなっている。これは、BNFL社(1ロットあたり1件、合計約200件、1件は2ペレット)と比べてもあまりにもサンプル数が少ない。4種類ある富化度、で2〜3データずつでしかない。

 また、燃料損傷につながる、安全上重要なプルトニウムスポットについても、1F3で32ペレット、32データ、KK3で36ペレット、36データというのはあまりに少ない。これではペレットの健全性を保証できない。

 

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