浜岡原発ひび割れ物語

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2003年4月14日 アップロード






<レポート1>

■再循環系配管のひび割れをめぐっては,超音波探傷試験の精度が大きな問題となっています。健全性評価小委員会が,再循環系配管については,3月10日の「中間とりまとめ」(保安院作成)の段階で,ひび割れ放置運転を容認することができなかったのは,この超音波探傷試験の精度の問題が浮上したからでしょう。

■問題が発覚したのは,今年2月3日に,東北電力が今定期検査中の昨年9月に行った女川原発1号機の再循環系配管の超音波探傷試験の値を発表したことによります。東北電力は,このときまでに,昨年11月に実測した値については発表していたので,これで,同時期に,同じひび割れの超音波探傷試験の測定値と実測値との比較が可能となり,精度に問題があることが明確になったのです。超音波探傷試験では1.0oのひび割れの実測値が8.5mm,同様に3.0oが12.2mmといった具合でした。

■2月4日の地元紙河北新報は1面トップでこれを報じました。東北電力が発表したのは,地元の「石巻市民の会」が,過去の超音波探傷試験のデータと,今定期検査時の実測値に大きな開きがあることに疑念を持ち,今定期検査時の超音波探傷試験のデータの公表を拒む東北電力に対し,粘り強く公開を要求してきたからです。

■ところが,健全性評価小委員会に提出されたデータ及び「中間とりまとめ」によると,中部電力は,東北電力の問題が発覚する遥か以前に,超音波探傷試験の信頼性に問題があることを確認していました。

■1995年の浜岡原発3号機の第6回定期検査において,中部電力は再循環系配管において,国が行う定期検査とは別に行った自主点検においてひび割れ指示を発見しました。その後,中部電力,東京電力,東北電力は類似配管の調査を行っていますが,これは,SUS316L系材(応力腐食割れ対策材料)の再循環系配管におけるひび割れ指示であったことを重要視してのことと思われます。その結果,女川原発,福島第二原発,柏崎刈羽原発でもSUS316L系材の再循環系配管において,ひび割れ指示を発見します。電力事業者はこれらの事実を国へは報告しませんでした。これが,昨年9月20日に,「ひび割れ隠し,東北電力,中部電力でも」と報じられた内容です。

■この話にはまだ続きがありました。ひび割れ指示の発見に際して,3つの電力がとった対応は,@配管の交換,Aひび割れを放置しての運転継続,Bひび割れを研削する修理を施して運転再開,の3つでした。このうち,Bのひび割れを研削する修理を施していたのは,東電不正事件以前では,中部電力の浜岡原発3号機の4つの溶接部継手の5箇所だけでした。配管の内面の研削にあたって,中部電力は,ひび割れの長さと深さの実測を行っていました。研削範囲を特定するためにひび割れの長さの実測が必要であるし,研削後の健全性を確認するために,研削後の厚みを確認する必要があり,そこからひび割れの深さが実測されます。中部電力が研削を行ったのは,1997年の第7回定期検査時,1999年の第9回定期検査時,2000年の第10回定期検査時でした。よって,中部電力はこうした時期には,同時に同じひび割れについて調べた,超音波探傷試験の値と実測値を比較することが可能でした。

■結果は,東北電力のケースと同様で,差は歴然としていました。深さの実測結果はいずれも超音波探傷試験結果を上回り,中には超音波探傷試験では2.9mmとされたひび割れの深さが実測では8.5oであったというものもあります。その誤差は5.6mmあり,実証試験データによる3o以内,4.4o以内という誤差範囲を逸脱しています。中部電力は,超音波探傷試験の信頼性に問題があることを明確に把握できたことになります。しかし,電力らは,これを公にすることも,国に報告することもしませんでした。電力は,ひび割れの発見を隠しただけでなく,超音波探傷試験の信頼性に問題があるとの事実も隠したことになります。

■ところで,電力がとった対応のうちAひび割れを放置しての運転継続,に際しては,電力会社は独自にひび割れの進展評価と安全評価を行っていました。
東北電力が1998年に行った評価では,ひび割れは40年間に4o程度となっていました。ところが,今回明らかになった実測値により,ひび割れは,運転開始以来20年で最大12.2oまで進んでいました。東北電力が行っていた進展評価は誤っていたのです。
(つづく)




<レポート2>

■再循環系配管は,国の定期検査の検査対象であり,中部電力らが自主点検において,ひび割れ指示を発見しながらこれを隠蔽していた原子炉についても,国の定期検査が行われていました。両者は同時期に行われます。国は,事業者らがひび割れ指示を発見した全く同じ箇所の検査も行っていました。しかし,国の定期検査によっては,ひび割れが発見されることはありませんでした。

■保安院が2002年10月1日に公表した「原子力発電所における自主点検作業記録の不正等の問題についての中間報告」には,「同一部位を定期検査と自主検査において試験されたケースがあり,国の定期検査で「異常なし」と判定される場合であっても,電力会社の自主点検ではインディケーションを検出する場合があった。これは自主点検で採用されている方法がより感度の高い検査方法に起因するものである。」とあります。浜岡原発3号機では,このような事例が2箇所存在したことを示す表があります。東京電力の原発にも同様な事例があります。

■中部電力や東京電力らは,自らがより感度の高い検査方法で行った自主点検においてひび割れ指示を検出する一方で,国の定期検査において,従来の検査方法で同じ箇所を検査した場合には「異常なし」という結果となる事例あることを知っていました。その時点で,従来の検査法には限界があり,信頼性に問題があることを知ったことになります。それでも国には報告しなかったというのです。中部電力や東京電力らは,このことをよくよく承知しており,だからこそ,自主点検でひび割れを発見していた同じ箇所が国の定期検査に供されたとしても,発見されることはないと高をくくり,隠蔽し続けることを決めたのではないでしょうか。

■また,上記の事実は,定期検査で従来用いられていた方法では,ひび割れの有無すら判定を誤る可能性があることを示しています。現在東京電力は,再循環系配管について,ひび割れが発見された箇所だけを切ってつぎはぎの溶接をして,事態を乗り切ろうとしています。これを超音波探傷試験の実証作業とは切り離して進めようとしています。また,現在行っている再循環系の検査範囲から,過去5年間に検査した箇所を除外しています。上記の事実は,このような措置に問題があることを示しているように思います。従来の検査方法では,ひび割れの有無さえ誤ることがあり,その結果は信用できないのだから,検査の信頼性を確立した上で,はじめから検査をやり直すというのが順序ではないでしょうか。

■ところで,ひび割れの隠蔽には東芝などのメーカーも加わっていました。「中間とりまとめ」によると,電力とメーカーは1998年から2000年にかけて,発見したひび割れの原因解明のための試験を行っています。実機を模擬した配管を用いての試験まで行っていました。電気事業者らとメーカーがこぞってこそこそと実験を行っている光景を想像すると,ちょっと変な気がします。そこまでしながら,電力とメーカーは,原因が応力腐食割れであると突き止めることはできませんでした。「中間とりまとめ」によると,SUS316L系材の再循環系配管にも応力腐食割れが起こる事実を確認したのは,昨年11月〜12月に,女川原発と柏崎刈羽原発のひび割れのサンプル調査を行った時がはじめてだといいます。ほんの数ヶ月前の話です。サンプル調査を行っていれば,原因はもっと早くにわかっていたでしょう。1998年の段階で,サンプル調査を行わなかったのは,国に発覚することを恐れてのことでしょうか。それともまだ何か隠していることがあるのでしょうか。
(つづく)




<レポート3>

■BWR原発では,シュラウドに続いて,応力腐食割れが起こらないはずの,対策材料であるSUS316L系材の再循環系配管において,多数のひび割れが見つかっています。これまでに東北電力女川原発1号機において10箇所,東京電力福島第二原発2号機において1箇所,3号機において9箇所,4号機において3箇所,柏崎刈羽原発1号機において26箇所,2号機において3箇所,3号機において2箇所,4号機において2箇所,中部電力浜岡原発1号機において2箇所,3号機において7箇所(内5箇所は過去に認められたもの)4号機において2箇所のひび割れが確認されています。なお,現存するひび割れだけであり,過去に電力事業者らが発見しながらこれを隠蔽し,交換してしまったものは含まれていません。浜岡原発に関して,今問題なのは,従来の検査を従来の頻度でしか行っておらず,唯一稼動している浜岡原発2号機に本当にひび割れはないのか,ということでしょう。

■浜岡原発1〜4号機のうち,現在2号機だけが運転中です。<1><2>で述べたように,従来の超音波探傷試験には信頼性がなく,ひび割れが存在してもこれを検知できない可能性が高いことが明らかになりました。浜岡原発2号機については,これまで,再循環系配管にひび割れは発見されていないことになっていますが,ひび割れが見逃されている可能性が大いにあります。浜岡原発2号機は直ちに停止し,超音波探傷試験の信頼性が確立したのち,再度点検を行うべきです。

■浜岡原発2号機を直ちに止める理由はもう一つあります。保安院は「中間とりまとめ」で,再循環系配管の検査頻度を「10年で25%」から「5年で100%」にするよう要求しています。「10年で25%」=「5年で12.5%」であるので,これを「5年で100%」にするということは,単純に比較しても8倍の頻度で検査することを意味します。

■なぜ「5年」で100%なのか。「中間とりまとめ」はその根拠に,「SUS316(LC)の場合,運転開始後6年程度経過した以降に発生し始めていること」や「進展を解析により予測」すると「技術基準に規程する強度を満足する期間は,母管で10年以上,ヘッダー管及びライザー管で約8年という結果が得られた」こと等を挙げています。このように,「5年」は,ひび割れの発生年限や進展の解析に基づくものであり,逆にそれ以上の期間では安全性が保証されないと受け止めるべき要求です。

■東京電力は,再循環系配管をもつ全ての原子炉について,過去5年間に検査をした箇所を除いた全箇所について,検査を行うとしています。そして,当の中部電力も,浜岡原発1・3・4号機については,東京電力と同様な検査を行う予定でいます。これは,「5年で100%」を既に適用していることを意味します。

■もちろん,これまでの検査結果に信頼性がないことや,浜岡原発1号機などは配管交換後5.8年でひび割れが見つかっており,それより短い年限では発生しないと断言するには事例がまだ少ないこと,検査方法の信頼性や,低炭素系ステンレス鋼の応力腐食割れの発生メカニズムについての知見や経験の蓄積が少ない今の段階で,進展予測を行うことに問題があること等から,過去5年間に検査した箇所を除く措置には同意できません。

■ただ,少なくとも国の要求には直ちに従うべきでしょう。浜岡原発2号機だけが例外的に,従来の検査頻度である「10年で25%」だけで定期検査を済ませ,運転を継続するようなことが許される理由はありません。
(つづく)




<レポート4>

◎シュラウド下部リング部(H6a)のひび割れについて

■中部電力は3月10日,定期検査中の浜岡原発3号機のシュラウド下部リング溶接部においてひび割れが見つかったことを公表しました。シュラウド下部リング部では,昨年9月の浜岡原発4号機に続くものです。24日にはホームページで,「H6a下側の目視可能な範囲全体(全周に対し約70%)にひび割れが断続的に存在していた」と述べています。報道によると,計63カ所のひび割れが見つかり,最長のものは85pであったといいます。
 ■今回ひび割れが見つかった箇所は,平成13年の前回定期検査時にも水中カメラで目視点検し,「筋状の模様」を確認していたといいます。報道によると,中部電力は「開口が見られなかったため,当時はひび割れではないと判断した」と説明しています。この点も,浜岡原発4号機の時とまったく同じです。3号機のひび割れについても,「インディケーション」を確認しながら,国の通達に違反して虚偽の報告を行い,さらに,点検手順に反する行為を行っていたのではないでしょうか。


◎シュラウドサポートリング部(H7a)のひび割れについて

■3月7日,中部電力は浜岡原発4号機シュラウドサポートリング部(H7a)内側の点検を3
月末に行うことをホームページで明らかにしました。

■中部電力は浜岡原発4号機について,昨年9月に,本来予定のなかったシュラウド下部リング(H6a)外側の点検を,柏崎刈羽原発3号機で全周に及ぶひび割れが見つかったことを理由に行いました。その結果,全周に及ぶひび割れの存在が明らかになったのです。一方で,ひび割れの進展がより速く,より危険な箇所であるシュラウドサポートリング部(H7a)内側については,柏崎刈羽原発3号機でやはり全周に及ぶひび割れが発見されながら,点検しないという矛盾した対応をとっていました。

■私たちは,このサポートリング部(H7a)についても点検を今定期検査中に行うよう再三要求しましたが,中部電力は聞き入れませんでした。市民団体が,国の健全性評価小委員会に,点検を要求する要請書を出すと,保安院は,「早急に点検するのが適当」との見解を示し,ようやく点検することになったのです。

■そして3月26日,中部電力は,この浜岡原発4号機のH7aにもひび割れが見つかったことを明らかにしました。中部電力のホームページの記載によると,「現在までに確認した範囲は約60pであり,その範囲内に2箇所のひび割れが認められました。今後、全周にわたり目視点検を行ってまいります。」といいます。さらに,4月3日には,計67箇所にひび割れが見つかったことを明らかにしています。H7aのひび割れは,東京電力の評価によっても,停留することなく成長し,やがては貫通に至ります。

■中部電力は当然のことながら,浜岡原発3号機についても,H7aの点検を行わなければならないし,1・2号機についても改めての点検が必要です。その場合には,当初の点検範囲を30%に限定し,この範囲でひび割れのインディケーションを発見した場合にはじめて全周の点検を行うというやり方ではなく,福島第一原発4号機等で東京電力が行ったように,はじめから全周の点検を行うべきでしょう。

■シュラウドのひび割れについては,内部で「放射状」及び「蜘蛛の巣状」となっているものも発見されており,超音波探傷試験によっては,ひび割れの性格な把握がされない可能性があります。シュラウドのひび割れにおける超音波探傷試験についても,信頼性の確認の作業が必要です。

■さらに,シュラウドの検査については,H1内側,H2内側やH6a内側のように,障害物の影響で目視検査の検査率がほぼ0%という箇所について,どのように検査・評価を行うのかという問題がありますが,これの目途は立っていません。この場合には,障害物により点検が行えない箇所があっても,その近傍を点検することによりシュラウドの健全性を評価することもできません。
(つづく)




<レポート5>

■今,ひび割れが続出しているのは,応力腐食割れ問題を根本的に解決してくれるはずだった「SUS316L系材」等の低炭素系ステンレス鋼ですが,これが従来の材料(SUS304)とも異なる特徴を有することが保安院による「中間とりまとめ」にも記載されています。ひび割れが内部で複雑な挙動をとることや,検査において把握しにくい点は,従来の材料よりもむしろ困難な問題を抱えているといえます。

■「中間とりまとめ」には,「炉心シュラウドのひび割れは,溶接部に斜めに発生したり,放射状に発生することが確認された。また,溶接部から離れた位置でも放射状のひび割れが確認された。」とあります。福島第一原発4号機シュラウドH4では蜘蛛の巣状のひび割れが,柏崎刈羽原発1号機シュラウドH4では内部で放射状に枝分かれしたひび割れが確認されています。ひび割れは3次元的なもので,内部で花びら状になって複雑に進行しています。このようなひび割れの形状は,従来の材料には見られなかったものです。そして,この複雑な形状が,超音波探傷試験における測定を困難にしています。

■「中間とりまとめ」には,低炭素系ステンレス鋼のこのようなひび割れが,残留応力に依存したものと評価しており,「割れの多くは,従来,高炭素含有のSUS304材で認められた溶接熱鋭敏化域に沿った割れではなく,溶接や機械加工による残留応力に強く依存した割れ形態を示している。」とあります。

■さらに「中間とりまとめ」には,「母材中を進展した粒界型応力腐食割れは,316L系溶接金属中へと進展する場合もあることが確認された」とあります。これは,昨年11〜12月にかけて実施された女川原発1号機及び柏崎刈羽原発1号機の再循環系配管のサンプル調査で,はじめて明らかにされた事実です。ほんの数ヶ月前の話です。サンプルは上記の2例だけであり,まだこれから調査が必要です。これも,溶接金属に平行して母材中を進む従来の材料における応力腐食割れの性状とは異なるものです。また,この点も超音波探傷試験における測定を困難にします。

■「中間とりまとめ」によると,低炭素系ステンレス鋼の応力腐食割れは,表面の硬化層で粒内型応力腐食割れが発生し,その後は粒界型応力腐食割れとして進展するという特徴が確認されています。この点も,表面から粒界型応力腐食割れとして発生し,鋭敏化した粒界に沿って進む従来の材料とは異なります。健全性評価小委員会では,ひび割れの表面が閉じている特徴も指摘されています。これは目視点検において発見しにくいことを意味します。

■「中間とりまとめ」の「低炭素系ステンレス鋼の応力腐食割れについて」のまとめには,低炭素系ステンレス鋼の応力腐食割れに対して今後さらなる対応が必要なこととして,

@ 材料表面の硬化による初期応力腐食割れ発生のメカニズムA 粒内型応力腐食割れにより発生したひび割れが,その後,粒界割れを示す応力腐食割れ進展のメカニズムB 溶接金属における応力腐食割れの発生・進展挙動

の3点の解明が挙げられています。「今回の調査において,SUS316L系材のひび割れは従来の知見とは異なるものであることが判明した。しかし,前述したとおり,初期応力腐食割れ発生メカニズム,粒界割れを示す応力腐食割れ進展メカニズム,溶接金属における応力腐食割れ発生・進展挙動については,必ずしも明確には解明されていない。」との記述もあります。

■これらは,低炭素系ステンレス鋼の応力腐食割れのメカニズムの解明がまだまだこれからであることを示しています。このような状態で,ひび割れの進展評価を精度よく行うことはできないはずです。例えば,「SUS316L系材の応力腐食割れの発生・進展には残留応力等力学的因子の影響が大きい」とありますが,これを定量的に評価するためには,金属内部の残留応力を評価しなければなりません。また,溶接金属における応力腐食割れの進展挙動は,母材中とは異なること明らかであり,評価をやり直す必要があるでしょう。
(おわり)


ご清聴ありがとうございましたさか@ふくろうの会

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