健全性評価小委員会への要請書

要請書に対する保安院の見解 HOME

BWR現地及び首都圏・名古屋の16市民団体
2003年2月5日



 総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会委員長はじめ委員のみなさま及び事務方のみなさまへ
 貴委員会が評価の対象としている東北電力女川原発,東京電力福島第一原発,福島第二原発,柏崎刈羽原発,中部電力浜岡原発及びBWR原発である日本原電東海第二原発,中国電力島根原発の地元である宮城,福島,新潟,静岡,茨城,島根各県及び,消費地である愛知県及び首都圏の市民団体より,ひび割れの発生メカニズムには未解明な部分があり,超音波探傷検査及び目視検査の精度や方法についても一から見直しが必要であることから,ひび割れを放置しての原発の運転を容認する結論を拙速に下すことのないよう,また,いわゆる「維持基準」については,地元住民へはこれまで「新品同様」だから安心せよとの宣伝がなされてきた経緯や,「維持基準」の中身についての説明が何もなされていない現状からも,貴委員会においてこれの「先取り導入」が行われるようなことのないよう要請します。また,以下の疑問点について詳細に検討され,少なくともこうした疑問点が晴れない限りは,ひび割れを放置しての運転を貴委員会が容認することのないよう,重ねてお願い致します。



1.健全性評価小委員会における「承認」について

 貴委員会の第4回において,原子力安全・保安院は,柏崎刈羽原発3号機と浜岡原発4号機のシュラウドのひび割れについて,これを放置しての運転を容認する報告案(資料4−2−1,資料4−3−1)を提出し,会合の後,「委員会は保安院の判断を承認した」旨の報道が流れた。ところが,実際の委員会を傍聴した限りでは,そのような事実はなく,逆に,佐藤委員長が承認を求めた際には,委員からは,その場で承認することに対して異論が発せられ,結局承認は見送られるという場面が見られた。いったい報道に「承認した」と流したのは,委員長の判断であったのか。それとも保安院の事務方の対応によるものだったのか。異論を唱えた委員はこのような措置に納得しているのか。いったい貴委員会による「承認」の手続きはどうなっているのか。このような仕方によって行われた「承認」にどれほどの意味があるのか,甚だ疑問である。



2.再循環系配管の超音波探傷検査の信頼性等について

 昨年9月20日,東北電力は女川原発1号機の過去の定期検査時のUT(超音波探傷検査)による自主点検の結果,再循環系配管(SUS316L)の溶接継手部に「傷の兆候」が見つかっていたと国や自治体に報告するとともに,マスコミを通して公表した。第12回定期検査(1998年9月〜12月)時に継手@Bで最大深さ5.5ミリの,第14回定期検査(2001年4月〜8月)時に継手ACで最大深さ3.0ミリの「傷の兆候」を発見していたという。
 昨年9月8日から女川原発1号機の第15回の定期検査が行われているが,東北電力はこの期間中に,この溶接継手部@〜Cのひび割れの深さと長さをUTで測定し(10月中に終了した),その後「液体浸透探傷検査(PT)+内面研削」でも測定している(11月中旬までに終了した)。11月28日,東北電力はこのうち後者の「PT+内面研削」での実測値だけを県や地元市町に報告し,公表した。「PT+研削」で見つかった最大深さは「12.2ミリ以下」であった。残りの肉厚は「必要厚さ」ぎりぎりとなる深い亀裂であった。国内の原発の再循環系配管でこれまでに見つかっている最も深いひび割れは,材料がSUS304Lの福島第一原発4号機の13ミリと12ミリであったが,これに匹敵する深さのひび割れが,SUS316Lの再循環系配管で見つかったことになる。9.0ミリや8.5ミリの深さのひび割れも見つかっている。これらは,それまでに公表されていたUTの値とは大きく異なるものであった。
 東北電力は,地元の市民団体の公開質問に対し,継手@〜Cのひび割れの今回のUTによる測定結果について,今年1月8日に本店で,「内面研削で測る前に外側から超音波探傷検査で確認した。結果はこれまで(の超音波探傷検査の結果)とほぼ同じだった。」と口頭回答した。つまり,継手@〜Cのひび割れの深さの今回のUTでの測定結果と,より精度の高い検査方法である「PT+内面研削」での実測値とが大きく食い違ったことをようやく認めたのである。今年1月8日の東北電力の回答によって,再循環系配管のUTの精度に赤信号が灯ったと言わざるをえない。しかし,東北電力は,報道機関6社の記者が同席したこの場で,継手@〜Cのひび割れの深さ等の今回のUTによる測定結果の具体的な数値の発表を拒絶(原子力安全・保安院には1月10日に報告)した。この重大なデータを,東北電力も国も隠し続けた。

追記:東北電力は,市民団体の要求にようやく応じ,2月3日,検査結果をようやく公表した。今回(第15回)のUTの結果は,同時期に行われた「PT+内面研削」の値と比べ大きく異なり,過小評価されていることが明らかとなったが,それだけでなく,前回の結果を下回ったり,前回は検出されたが,検出限界以下となるものが多数あり,当要請書に記した懸念がますます深刻なものであることが明らかになった。以下に一例を記す。

第15回定期検査時の結果…深さ
超音波探傷試験による 内面研削・実測による
継手A 検出できず 最大7.2ミリ
継手B330°付近 3.0/2.0/2.0/2.0ミリ 最大12.2ミリ
継手C150°付近 2.0ミリ 最大9.0ミリ
継手C0°付近 1.0ミリ 最大8.5ミリ

第15回定期検査時の結果…長さ
超音波探傷試験による 浸透探傷試験による
継手A 25ミリ 11/23.5ミリ
継手B330°付近 5/9/16/17ミリ 158/203ミリ
継手C150°付近 13ミリ 39ミリ
継手C0°付近 34ミリ 38/6ミリ

 今回のUTによる測定結果と「PT+内面研削」等による実測値との食い違いは,例えばUTによる点検で深さが1.0ミリと推定された継手Cのひび割れについてみると,8倍以上に達する。また,継手Bの今回「PT+内面研削」で深さが「12.2ミリ以下」と測定されたひび割れについては,UTの結果は最大でも3.0ミリであり,「PT+内面研削」との食い違いは4倍以上になる。
 また,過去の検査結果との比較では,第12回,第13回定期検査時にはUTで深さ3.0〜4.0ミリと測定されていた継手@のひび割れが,今回(第15回)のUTでは測定不可能となっている。また,継手Bの330°付近では,第12回定期検査時には,UTで長さが合わせて200ミリを超えていたが,今回(第15回)のUTでは,合わせて50ミリを下回っている。このように,前回に比べて,浅く測定されていたり,短く測定されている事例が多く存在する。


(1)超音波探傷検査の信頼性が失われた以上維持基準の先取り導入をすべきではない

 「軽微」なひび割れ等は,交換や補修をしないで運転継続を認める「維持基準(健全性評価)」を導入するのであれば,確立されていなければならないのは,まずは,ひび割れの検査(結果)の信頼性・信憑性であり,また,ひび割れの進展予測の公明性である。検査データの完全な情報公開等も必要である。
 現状では,UTが再循環系配管等のひび割れの深さを測る唯一の非破壊検査であり,その測定結果はひび割れの進展予測の土台となるものである。そのUTの精度に赤信号が灯った以上,このまま維持基準の先取り実施を認めるべきではないのではないか。
 1988年発行の米国原子力規制委員会の「BWR冷却材圧力バウンダリ配管に関する材料選択・及び措置のガイドラインについて」(最終報告:貴委員会第2回資料)には,次のようにある。
  「完全に資格検定された従業員により寸法測定されたのではない,あるいは検査に限界がある(溶接クラウンが広い,障害物がある,あるいはその他不具合な幾何学的構成がある)ような場合には,割れの深さは少なくとも深さが壁厚の75%あると想定すべきであり,欠陥をそのように評価すべきである」
 例えば,女川原発1号機の今回の定期検査時にUTで新たに見つかった継手D〜Gのひび割れ(最大深さ4.5ミリ?)も,少なくとも深さが壁厚の75%あると想定すべきであり,欠陥をそのように評価すべきではないか。


(2)超音波探傷試験の信頼性を徹底的に検証すべき

 貴委員会は第4回から個別炉のシュラウドの健全性の確認を行っている。しかし,貴委員会はこれを行う前に,まず東北電力の実例等を基に,再循環系配管のこれまでの点検結果の信頼性と点検方法の妥当性,信頼性を徹底的に検討するべきではないか。
 貴委員会第1回の資料1−9「当面の検討課題」の「1.炉心シュラウド等の点検方法の適切性の確認」には,「再循環系配管の内面のひび割れ又はその兆候を発見し,また大きさ(長さ及び深さ)を測定するための超音波探傷試験(UT)について,その手法及び手順を含めた実施方法の妥当性について確認する」とある。これについては,各電力会社が検査要領書等を提出し,貴委員会で「ほぼ共通の点検方法をとっている」ことは確認された。しかしそれだけでは,「信頼できる検査結果だということを了解」(小林委員の第1回での発言)できる訳でははない。女川原発で再循環系配管のひび割れの深さのUTによる測定結果が「PT+内面研削」による測定結果と大きく食い違うという事態が現に起きた今,それは女川原発だけのことではないとみるのが当然である。ここで立ち止まり,最初の課題にもどって,まずは各電力会社の再循環系配管のUTの結果の信頼性,点検方法の妥当性,信頼性を徹底的に検討し直す必要があるのではないか。
 貴委員会第4回の資料によると,UTで見つかった福島第二原発3号機の再循環系配管のひび割れの深さを測定するために,東京電力は配管の「切り出し」または「切削」による追加調査を決めている。中部電力も同様の測定方法で再循環系配管のひび割れの深さを測定すべきではないか。中部電力においては,再循環系配管のひび割れの長さと深さについて,UTの結果が,前回のUTの結果よりも値が小さくなるという例がある。ひび割れが短くなったり浅くなったりといったことが現実にあるはずはなく,検査精度に問題があると見るべきではないか。

浜岡原発の超音波探傷試験記録(中部電力HPより)
前回までの測定 今回測定
溶接部位 最大深さ 長さ 最大深さ 長さ
1号機@ 検出されず 55mm 検出されず 41mm
検出されず 32mm 検出されず 21mm
3号機B 3.1mm 55mm 2.2mm 64mm


(3)東北電力は事実を隠し続けてきた

 貴委員会は,会合に東北電力社長と原子力部長の出席を求め,継手@〜Cのひび割れの今回定期検査時のUTによる測定結果が「PT+内面研削」による測定結果と大きく食い違うことをなぜすぐに公表しなかったのか,説明させる必要があるのではないか。
 電気事業法等の「改正」案が臨時国会に提出されたのは11月上旬だが,東北電力はこの頃までに継手@〜Cのひび割れの「PT+内面研削」による測定もほとんど終わり,11月前半まででそのすべての測定を終えていた。UTと「PT+内面研削」の測定結果の大きな食い違いは,まさに検査の信頼性に直結する重大な問題である。法案改定と深い関わりをもつこの事実を隠し続けてきたのは,東電の一連のトラブル隠し,損傷隠しに匹敵する問題隠しではないのか。


(4)進展予測は誤っていた

 SUS316Lのひび割れの深さの進展予測については,まず各電力会社の進展予測の実際がどうであったかについて,しっかりと検証すべきではないのか。各社が進展予測に当たって,どんな材質でのどんな実験結果や研究に依拠していたのかについても示されるべきではないのか。
 女川原発1号機の再循環系配管ではじめてひび割れが見つかった1998年当時の東北電力のひび割れの深さの進展予測は,その後40年かけて4ミリ程度の進展つまり,その後10年につき1ミリ(1年当たり0.1ミリ)というものである。しかし,今回「PT+内面研削」で測定されたひび割れの深さの最大値は「12.2ミリ以下」であり,女川原発1号機は運転開始以来約20年間(実質的な運転期間はもっと短い)であるので,運転開始後間もなくひび割れが生じたとしても,進展の度合いは10年につき約6ミリということになる。これは,これまでの進展予測が誤っていることを示しているのではないのか。



3.シュラウドの検査に関して

(1)超音波探傷検査の能力について

@ 貴委員会第4回資料(4−4−1)によると,柏崎刈羽原発1号機のシュラウドのY字型の形状のひび割れは,「内部への進展に伴い,3次元的に複雑に分岐する成長挙動を呈しており,サンプル採取部の厚さ約14ミリを貫通していた」という。一方,新潟県の担当課の話によると,H4のひび割れの深さのUTによる測定結果の最大値は,11.6ミリであったという。このように,シュラウドのひび割れの深さのUTによる測定結果についても,信頼性に疑問を呈するような結果がある。貴委員会は,このY字型のひび割れについて,実測値とUTの値が比較できるような形態で資料を提出させるべきではないか。個別炉の評価の前に,この問題についての詳細な検討が必要ではないか。

A 貴委員会第4回資料4−1「炉心シュラウドの健全性評価に係る補足説明資料」11.の「ひび割れ深さに関わるUT調査結果と実測値の比較」によると,ボートサンプルでのひび深さが0.5〜6.6mmに対し,同じ箇所のUTによるひび深さ評価値が最小値7.5mm,最大値9.1mmとなっている。資料ではこれを,「この結果よりUT調査結果はひびの深さを若干上回る評価となっていた。」と評価している。しかしこの場合,UTによる値が,実際とは異なることがまず問題なのであり,異なった原因は何か,実際よりも下回る結果となる可能性がないのかどうかが,検討されなければ意味がないのではないか。UTの結果についてはより詳細なデータの提出を求めるべきではないのか。また両者の値が異なる程度については,1つのボートサンプルの例だけでは評価できないのではないか。


(2)目視検査の能力に関わる問題について

 貴委員会が評価の対象としている浜岡原発4号機で昨年9月に発見されたシュラウドH6aのひび割れについて,中部電力は1年余り前の平成13年度の定期検査時においても,点検を実施しており,結果については,平成13年9月の保安院による,福島第二原発3号機のシュラウドひび割れに伴う点検指示に対して,「異常なし」と報告していた。
 シュラウドのひび割れが1年余りで全周に及ぶというのは異常なことであり,静岡地方裁判所に浜岡原発の運転差止仮処分を申請していた債権者(原告)は、中部電力に対し釈明を求めている。これに対し,中部電力は「目視点検での状況がVHS方式で録画されたビデオテープに残っている。このビデオテープによる画像は,当時検査員が現場モニタで見たものとは解像度の点で異なっているものの,この画像においていくつかの筋状の模様を認めることができる。そこで債務者(引用者注:中部電力)は,このビデオテープの画像において認められた筋状模様のいくつかが,本件き裂の一部と開口の位置及び形状の点でほぼ一致することを確認した。よって,平成13年の目視点検時には現状の本件き裂よりも浅いき裂が存在していたものと評価でき,前回点検時にはすでに,き裂との断定にいたらなかった程度の小さなき裂が存在し,それが薄い筋状模様となっていたものと考えることが合理的である。」「検査員は,現場でのモニタによる映像を見て,下部リング溶接部下方に筋状の模様があることを認識した。しかしながら,当該筋状模様は微細であり,き裂により生ずる特徴的な鮮明な開口とまでは見えなかったことからき裂とは判断せず,「異常なし」と判断した。」と答弁している(中部電力側準備書面)。中部電力の評価に従えば,ひび割れはこのとき既に深さ10mmに達していたはずである。中部電力は,目視点検の状況を映した画像を編集したビデオテープを裁判所に提出したが,ここには確かに「筋状の模様」が映っている。
 一方で,当の中部電力が作成に加わっている貴委員会第4回の資料(参考4−2)にある「炉心シュラウドの健全性評価に関する用語集(東北電力株式会社,東京電力株式会社,中部電力株式会社作成)」の「インディケーション」の項には,インディケーションとは「非破壊検査において確認されたひびなどの欠陥あるいはその兆候。例えば目視検査では,ひびの兆候または,水汚の痕跡等,なんらかの模様であり…インディケーションがただちにひび割れ等の欠陥を意味するものではない。」との記述がある。浜岡原発4号機の検査員は「筋状の模様」を認識したのであるから,中部電力による規定に従っても,これは「インディケーション」を確認したことを意味するのではないか。「インディケーション」を確認しながら,最終的に国の点検指示(通達)に対して「異常なし」と報告したことについては,明らかな通達違反であり、東電不正事件と比較しても「不正があった」と見なされるべきではないか。
 さらに,貴委員会第1回の資料「炉心シュラウドの点検方法について」等によれば,表面欠陥の有無確認(水中カメラによる遠隔目視点検)で欠陥,疑わしい欠陥を確認したばあいには,当該部位の酸化皮膜除去(ブラッシング)した上で再度目視点検を行わなければならない。ところが,中部電力によると,平成13年度の点検においては,「筋状の模様」を確認しながら,ブラッシングをした上での再検査は行っていない。これは明らかに,検査手順の違反ではないか。
 この問題は,検査の能力に関わるものであり,貴委員会としても検討の対象とし,事実関係の確認にあたるべきではないか。



4.ひび割れの点検対象について

(1)浜岡原発4号機シュラウドのH7aをなぜしらべないのか

 浜岡原発4号機のシュラウドのH6aの点検は,平成13年度に行っていたため,平成14年度には行わなくてもよいはずであった。ところが,中部電力は「柏崎刈羽原発3号機のH6aで見つかった」という理由で平成14年度にも点検している。一方で柏崎刈羽原発3号機では同じ時期にH7aでもひび割れが見つかったが,中部電力はH7aについては点検対象にしていない。これは矛盾した対応ではないか。H6aについては,平成13年度の点検で確認していた「インディケーション」が気になっていたから点検を実施したのではないか。H7aについても今定期検査期間中に点検すべきではないか。


(2)再循環系配管の検査範囲と間隔について

 現在,再循環系配管は10年間で全溶接線の25%,シュラウドは10年間で全溶接線を検査することになっている。この違いはなぜなのか。再循環系配管の方がシュラウドより重要性は高いはずであるのに,検査間隔が再循環系配管の方が大きいのはなぜか。検査間隔の決定は,SUS316Lではひび割れは生じないことを前提に決められたと考えるが,各地でひび割れが頻発している事実に即して,点検間隔短縮が必要ではないのか。


(3)全溶接線の点検と追跡が必要

 今回の停止措置とその後のひび割れの続出は,シュラウドや再循環配管の全溶接線の点検が必要なことを示しているのではないか。ピーニングや磨き等の効果確認も含めて,各電力会社に全溶接線の検査を指示すべきではないのか。また,点検で発見されたインデケーションやひび割れは,毎定検ごとに追跡検査が必要ではないか。


(4)シュラウドの点検箇所について

 シュラウドをもつすべての原発について,少なくとも,これまでひび割れが見つかったのと同じ箇所の点検を課すべきではないか。また,これまでひび割れが見つかっていない箇所についても,点検すべきではないのか。特に,障害物があるために,これまで全く点検が行われていない箇所の状況をどうやって把握するのかについて,検討が必要ではないのか。



5.応力腐食割れ対策材料(SUS316L)でひび割れが多発している件について

(1)材料への過信

 再循環系配管における応力腐食割れ対策材料(SUS316L)の採用について,東京電力では,これを採用した初期の号機である福島第二原発1号機については,建設時に高周波による熱応力緩和措置を取ったのに対し,これ以降の号機についてはこれを行わなかったというが,それはなぜか。低炭素材料さえ使っていれば,応力腐食割れは発生しないとの材料に対する過信が,現在のSUS316Lにおけるひび割れの多発という事態をもたらしたのではないか。


(2)応力腐食割れについての理解の欠如

 SUS316Lのシュラウドにおける応力腐食割れでは,これまで,材料の表面付近では,粒内割れを生じ,内部では従来材料と同様に粒界割れが進展するという形態をとることが報告されている。応力腐食割れのこのような形態について,SUS316L及びSUS304Lを導入した際には検討がされていたのか。表面においても粒界割れが発生する従来の材料で見られるような形態しか考慮していなかったのではないのか。その意味では,応力腐食割れについての理解の欠如が,今のひび割れ多発の事態をもたらしたのではないか。


(3)知見の蓄積は十分か

 SUS316Lのシュラウドにおける応力腐食割れの進展評価や耐震評価については,東京電力が,2001年に福島第二原発3号機のシュラウドひび割れ(東京電力は1997年の段階で発見しこれを隠蔽していた)を報告した際に,はじめて行われたのではないか。この材料における応力腐食割れについての知見はまだ蓄積が不十分ではないのか。応力拡大係数から進展速度を求める関数式は経験によって得られるものであるが,原発の実機における経験の蓄積は十分にあるのか。


(4)保安院の指示の誤り

 東京電力は,2001年7月に公表した福島第二原発3号機のシュラウドひび割れについて,8月24日に保安院に対し,SUS316Lにおける応力腐食割れがリング部だけに起こり得る旨の報告を提出している。保安院は2001年9月6日にこの報告を妥当とし,各電力会社に点検計画を立てるよう指示(通達)を出しているが,その際に,点検指示箇所を,H1,H2,H3,H6等のリング部に限定している。ところが現在,その対象箇所以外のシュラウドサポートリング部のH7aや,リング部ではないH4においてもひび割れが見つかっている。福島第二原発3号機のひび割れについての東京電力の報告書とその後の保安院の措置の妥当性については,改めて見直す必要があるのではないか。


(5)シュラウドH4のひび割れの原因は全く未解明

 シュラウドのH4のひび割れについては,H6a及びH7aのひび割れについての東京電力や中部電力の報告やこれを受けての保安院の報告が,リング部での強加工を原因とする考え方が適用できないのではないか。この箇所のひび割れの発生メカニズムを解明しない限りは,H6aやH7aも含めて,シュラウドのひび割れについての評価はできないのではないか。H4におけるひび割れの進展は,H7a等よりも速く,放置すれば貫通に至るのではないか。H6aやH7aについての評価結果を急ぐ前に,H4についての検討を待つべきではないか。


(6)原子力学会「再検討が必要」

 日本原子力学会材料部会は,「ひび割れの詳細な実態については、現在進められている事業者および国の調査を待つ必要がありますが、高い耐食性を有するとされてきた改良材である低炭素ステンレス鋼もひび割れに対して例外ではないことが明らかとなりました。今回の損傷は、応力腐食割れ等に関する材料評価手法や割れ発生メカニズムの考え方に立ちかえって再検討する必要があることを示しています。」(2002年12月27日)とし,検討会を発足させている。このことは,SUS316L等の低炭素ステンレス鋼での応力腐食割れの発生メカニズムがまだ未解明であり,評価方法が未確立であることを示しているのではないか。このような研究により,発生メカニズム等が解明されるまでは,結論を急ぐべきではないのではないか。


(7)国も実証研究を継続中

 原子力安全・保安院は,健全性評価の信頼性を高めるための原子力用ステンレスの耐応力腐食割れの実証研究事業及びシュラウド等の非破壊検査技術の実証研究事業を継続中である。このような事業が継続中であることは,ひび割れの評価技術及び検査技術がまだ確立されていないことを示すのではないか。このような研究の成果がでるまでは,結論を急ぐべきではないのではないか。



6.ひび割れがあるシュラウドの技術基準適合性に関する法令上の取扱いについて

(1)技術基準の材料規定を外す根拠は何か

 貴委員会第4回資料「炉心シュラウドの健全性評価に係る補足説明資料」4.の(答)2.に,「告示501号第17章「炉心支持構造物」には,「炉心の支持構造物の材料」に係る規格(第94条)と「炉心支持構造物の構造の規格」(第95条〜第100条)が規定されている。このうち材料に係る規定は,当該構造物の製造にあたって当該規格に適合する材料を使用することを確認するものであり,設計・建設段階のみ適用される規定である。」とある。第94条は、「超音波探傷試験(中略)を行い、これに合格するものでなければならない。」と定め、実質的にひび割れ等の無い材料を用いることを要求しているが,この規格が設計・建設段階のみ適用され,供用期間中には適用されないとする法的根拠は何か。


(2)これまでもひび割れ容認の立場であったのか
 上記(答)2.は,ひび割れ等を放置しての運転が,これまでも違法ではなく可能であったとの立場にあるということか。国及び電気事業者はこれまで,機会あるごとに,日本の原子力の安全規制は「世界標準をはるかに上回る世界一厳しいものであり,常に新品同様に整備してあるから安全である」などと説明してきたが,その説明は誤りもしくは虚偽説明であったのか。


(3)地元への説明はあったのか

 地元住民,地元自治体を含め、国民の多くが,維持基準の具体的な中身が定められていない現行法令下では,ひび割れは許されず,新品同様の状態を維持することが要求されており,そのように規制されていると理解してきた。国は,昨年8月以前に,ひび割れを容認するという立場について,何らかの説明を行ったことがあるのか。


(4)地元がひび割れを容認した事実はあったのか

 2001年の東京電力福島第二原発3号機のシュラウドひび割れについて,安全上問題がないとする東京電力の報告を妥当とした件については,タイロッドで修理をすること含めての判断ではなかったのか。地元が,ひび割れあっても問題がないとの判断を,当時下していた事実はないのではないか。

(5)残存面積による強度評価は告示501号にあるのか

 貴委員会の資料にある東京電力及び中部電力のシュラウドのひび割れについての報告の「健全性評価」の中に,「告示第501号に基づく必要残存面積を満足しており,強度上の問題はないものと評価される。」との記述があるが,告示501号には。必要残存面積による強度の評価についての規定はあるのか。これらの報告が,告示501号の規定に基づいて評価したかのように記述しているのは,「炉心シュラウドの健全性評価に係る補足説明資料」4.(答)3.の「現行の電気事業法においては,ひび割れが発見された場合に進展予測を行い一定期間運転した後の設備の健全性を評価することは義務づけられておらず,この進展予測に係る評価方法が国の技術基準として定められていない。」との記述と矛盾するのではないか。


(6)ひび割れ容認の合法化は許されるのか

 これまで国は,実際上ひび割れを放置しての運転を認めてはこなかった。また,東京電力は不正事件後の昨年10月に地元住民に配布した冊子にて「現行法では,運転中の原子力プラントは常に設計段階の状態を維持しなければならず,安全上まったく問題がない"きず"でもあってはならないことになります。」(TEPCOレポート第99号)と説明している。これらは,ひび割れを放置しての運転は認められず,シュラウドについては,告示501号第94条が供用期間中にも適用されるとの立場によるものと思われるが,少なくとも,ひび割れについての評価方法についての国の技術基準が定められていない限りは,ひび割れを放置しての運転は法令上認められないという原則に従うべきではないか。告示501号の「構造規定」にはひび割れについての評価方法や評価基準がないのであれば,規定がないなら認められない,あるいはより厳しい「材料規定」に従うべきというのが,安全側に立つということではないのか。電力がこの立場に立っていたというのであれば,その方が正しいのではないか。地元住民への説明なしに,勝手な法解釈の変更によって,改正電気事業法施行前に,ひび割れ容認を合法化し,「特別申請」で認めてしまおうとするのは,貴委員会において,国が説明義務を果たすよう陳述した新潟県の立場とも相容れないのではないか。



7.情報開示についてその他

(1)解析の詳細についての情報開示について

 電力会社等が行った健全性評価の解析の詳細については,今回一般には公開しないとのことであるが,これを公開し第三者の審判を仰ぐべきではないか。このことは,メーカーのノウハウの保護よりも優先されるべき事柄ではないか。

(2)ひび割れの最大値で評価すべき

 シュラウドのひび割れの進展評価については,安全側に立つのであれば,ひび割れの平均値ではなく,最大値を使って行うべきではないのか。


(3)実測値と解析値の逆転

 モックアップを使った残留応力の測定結果について,実測値と解析値が大きく異なる(プラスとマイナスが逆転している)箇所がある(資料4−1添付資料図6−2)が,これはなぜか。両者が一致していると評価しているのはなぜか。

以上

宮城県 原子力発電を考える石巻市民の会
福島県 脱原発福島ネットワーク
新潟県 柏崎原発反対地元三団体
     原発反対刈羽村を守る会
     みどりと反プルサーマル新潟県連絡会
     プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワーク
静岡県 浜岡原発を考える静岡ネットワーク
     浜岡原発市民検討委員会
茨城県 脱原発とうかい塾
島根県 島根原発増設反対運動
愛知県 きのこの会
首都圏 原子力資料情報室
     福島原発市民事故調査委員会
     ストップ・ザ・もんじゅ東京
     東京電力と共に脱原発をめざす会
     福島老朽原発を考える会


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